『伝染歌』AKB48(大島優子、秋元才加、前田敦子) 単独インタビュー
ツチノコを探していました。えっ、存在しないの?
取材・文:内田涼 写真:秋山泰彦
「歌えば、死ぬ」という自殺ソングの都市伝説をモチーフにしたサイコ・メロディホラー映画『伝染歌』。仕掛け人は、AKB48の総合プロデューサーでもある秋元康。『着信アリ』でJホラーの新しいスタイルを提示した彼が、携帯電話に続いて選んだテーマは “歌”。本作に出演する秋元プロデュースのアイドルグループ、AKB48の大島優子、秋元才加、前田敦子の3人に、演技に対するチャレンジや、撮影中のエピソードについて話を聞いた。
演じたキャラクターについて
Q:皆さんが演じた役柄について教えてください。
大島:わたしが演じた夏野あんずという人物は、トライアスロン部の部長で、後輩からは“鬼あんず”って呼ばれています。でも責任感が強いだけで、怖がられているというより、むしろ頼られている存在ですね。
Q:秋元さんが演じる朱理はクールな女の子でしたね。
秋元:はい。冷静で男の子っぽい、サバサバした女の子です。でも、情にも厚くて、幼なじみが自殺したことで、伝染歌について調査します。その過程で、松田龍平さん演じる陸に惹(ひ)かれるんですが、自分の気持ちが伝えられないんですよ。客観的に、映画を観ながら「不器用だな、こいつ」って思いました(笑)。胸キュンって感じでした。
Q:前田さんは、謎の自殺を遂げてしまう香奈を演じましたが、いかがでしたか?
前田:香奈という女の子は、何を考えているか分からないまま死んでしまうので、とても難しい役柄でしたね。正直、自分に重なる部分がなかったので……。でも撮影中は、監督といろいろ話し合って、かなり準備しました。
Q:原田眞人監督はどんな方でしたか?
前田:とても大らかな方でした。
秋元:一緒に晩ごはんを食べたときも、いろんな話をして下さって、優しいお父さんのような存在でした。
怪奇現象続出の撮影現場!?
Q:ホラー映画の撮影現場では、ときどき、心霊現象が起こると聞きますが、『伝染歌』の場合、何か変わったことはありましたか?
前田:あー、ありました! 歌うシーンを撮影中、音声スタッフさんが「ちょっと雑音が入ったんで、もう1度お願いします」っていうことがたびたびありました。みんなで「もしかして、もしかすると……」って感じで怖がっていました。
大島:ヘリコプターみたいなノイズが入ったことも。普通なら、絶対にありえないんですけどね。
Q:皆さん霊感はありますか?
秋元:霊的なものが見えないことが幸せなのかも。
大島:わたしのお母さんは霊感が強くって、良い霊、悪い霊、両方見えちゃうんです。いつも墓地とか通りかかると「あー、来る来る」って感じで首筋を触っていますね。首のあたりがキーンと痛くなるみたいで。それに以前、わたしが入院したときも、その直前に「何かがありそうだ」って予言していました。
Q:この映画は、“都市伝説”がテーマになっていますが、何か“都市伝説”に関する思い出はありますか?
秋元:わたしは、ツチノコを探していました!(大島・前田 大爆笑)
Q:ツチノコですか?
秋元:はい。えっ、ツチノコって存在しないんですか!? そうなんですか……。
伊勢谷友介は、若い子に興味津々!?
Q:共演の松田龍平さんについて教えてください。
秋元:松田さんは、何もしゃべらないクールな人っていうイメージが強かったんですが、すごく気さくな方でびっくりしました。撮影中も演技のアドバイスをしてくださって、とてもいい雰囲気を作ってくれました。
Q:松田さんは、この映画の中で、アキバ系のダンスを披露していますよね。
大島:コンサート中に撮影したんですよ。松田さんが会場の後ろのほうで、わたしたちのまねをしながら、一生懸命踊っていました。でも全然違うんですよ(笑)。「松田さん、全然違うんですけど~」って指摘しちゃいました。
Q:伊勢谷さんはどんな方でしたか?
秋元:とても多趣味な方ですね。撮影現場にキックミットを持ってきて「気持ちいいから、けってみろ」って(笑)。
前田:若い子の行動に関心があるみたいで、「今の若い子って、何して遊ぶの?」とか「どんな話するの?」っていろいろ聞かれました。わたしたちにとっては、お兄さん的な存在でしたね。
Q:あんずの叔母を演じる木村佳乃さんは?
大島:木村さんは、見た瞬間「あぁ、きれい……」と思いました。それに、セリフ1つに対して、何パターンも用意してきて、監督さんと「どれがいいですか」と相談されている姿は、すごいなと思いました。女優さんって、こうやって役を作り上げていくんだなと、とても刺激を受けました。
ステージとは違う“演技”の世界
Q:この映画に出演したことで、演技に対する考え方に変化は生まれましたか?
大島:原田監督は、自然体の演技が好きな方なので、演技に関しても「飾らなくていい」とおっしゃっていました。でも逆に「自然体って何だろう?」って考えちゃって、演技ができなくなってしまうこともありました。そんなときは、監督が優しく指示してくれたので、ありのまま、何も考えないで自由に演じることができました。
秋元:ずっと演技に挑戦してみたかったんです。でも、いざ演じてみると、とても難しかったです。いつもライブでは「いかに自分を良く見せるか」を一番に考えていますが、演技の場合は「普通でいること」が求められるので、演技って奥深いんだなって思いました。
前田:わたしは、ホラーならではの役柄を演じさせてもらったと思うので、新しい発見があったと思います。
Q:最後に、『伝染歌』の見どころをお願いします。
大島:小さなお子さんから、おじいちゃん、おばあちゃんまで楽しめる作品だと思います。テンポが良くって「えっ、もう終わっちゃうの?」というくらい展開も早いです。それと、ホラー映画ですが、チームワークや友情がテーマになっている点も注目してほしいですね。
秋元:観る人によって、とらえ方が変わる作品だと思います。それと、十代の難しい気持ちの揺れ動きがリアルに描かれているので、ぜひ、友だちを誘って映画館に観に来てほしいです。
前田:わたしが演じた役は、ちょっとしたキーポイントになっているので、ぜひそこに注目しつつ、『伝染歌』の世界に入っていってほしいと思います。
終始、笑顔でインタビューに応じてくれた3人。普段は、AKB48として、日々秋葉原の劇場でライブ活動を行うなど、多忙なスケジュールをこなしているが、疲れた様子はまったく表に出さない。何ごとも全力で取り組む“プロ根性”が、彼女たちのパワーの源なのだと気付かされた。とはいえ、その素顔は「海やお祭りに行きたい!」とはしゃぐ普通の女の子だった。そんな元気な彼女たちの今後の活躍に期待したい。
『伝染歌』は8月25日より公開。