『HERO』大塚寧々 単独インタビュー
わたしはボーッとしているから検事は無理です
取材・文:平野敦子 写真:亀岡周一
伝説の大ヒットドラマ「HERO」がさらにスケールアップして映画『HERO』となってスクリーンに登場。6年ぶりにおなじみの“城西支部”のメンバーたちが一同に会し、新たなる伝説に挑む。個性派ぞろいの面々の中でもひときわ毒のある鼻っ柱の強い中村美鈴検事を演じた大塚寧々。とにかく撮影が楽しくて仕方なかったという彼女が現場での撮影秘話などを笑顔で語ってくれた。
ダンスシーンに息も絶え絶え
Q:6年ぶりにドラマ「HERO」が映画化されたということで、まずはこのお話をいただいたときの感想を聞かせてください。
最初は「え、映画になるんだ!」とびっくりしました。あとはドラマ「HERO」の打ち上げで、小日向さんがうれしそうに満面の笑みで「映画もやろう、映画もやろう!」と言っていた映像がパーッと思い浮かびました(笑)。
Q:ご自分の中でドラマと違った役作りをしようと思われましたか?
ドラマと違うということはあまり意識しなかったですね。ただ、美鈴さんの持っているキツさであったり、素直に自分の心を表現できなかったりするところは映画でも大事にしたいと思いました。
Q:オープニングのダンスシーンは大変でしたか?
本当に大変でした! わたしと小日向さんは撮影に入る前からずっと練習をしていて、クランクインの日が最初のシーンだったんですが、もう2人ともゼーハーゼーハー言っていて(笑)。わたしたちは初日なのに「もうクランクアップ!?」と冗談を言っていました。
美鈴さんとは正反対の性格
Q:アドリブは多かったのでしょうか?
それぞれの個性がハッキリしているので、みんなアドリブは多かったんじゃないですかね。“城西支部”というものがすでに出来上がっていて、本当にすごく結束力があったので緊張感のある現場というよりは、誰がどんなアドリブをしてもみんなそれを自然に受け止めて返すということができていたと思います。そういう雰囲気はきっと観る人にも伝わるんじゃないかと思います。
Q:阿部寛さん演じる芝山検事との関係は、今後どうなっていくと思いますか?
あのまんまじゃないですかねぇ……。もちろん2人は恋愛関係でもあるんですが、やはりいろいろな事件との関連も含めて“同志”というきずなの強さがあると思います。これからもずっと“同志”であり続けるんじゃないかなと思います。2人は不倫関係にあるので、表面的に見れば決していい関係ではないんですが……。
Q:美鈴さんとご自分の似ているところはありますか?
似ているところですか!? 多分ないですねぇ~。わたしは美鈴さんが大好きなんです。なぜかと言うと彼女はキツいことを言うんですが、たまに相手を大事に思っている気持ちをぽーんと表現することがあるんです。その感じが大人だなぁ……と思います。あと、気になっていることを素直に言えないところも。ちゃめっ気があってかわいいなぁ思います。わたし自身はよく人からボーッとしていると言われるぐらいボーッとしているので、とてもじゃないですが検事なんて職業には就けないです(笑)。そういう意味で、美鈴さんとわたしは全然違うと思います。
Q:彼女は頭の回転がすごく速い女性ですよね。
美鈴さんはね(笑)! わたしはボーッとしていますから、ハイ。
Q:自分には検事という職業はとても無理だとおっしゃっていましたが、もしほかの職業に就くとしたら何がいいですか?
わたしはもともと職業意識のない人だったので、どちらかと言うと自分で写真を撮ったり、フラフラしたりしながら生きて行くタイプだと思います。何かを決められたりするのが苦手なので、今もこの仕事をしていなかったら、自分でもどこに行っちゃっているんだろうと思いますが(笑)。旅行も予定を決めないのが好きなので、その日その日でホテルを探して滞在するのが楽しいですね。
阿部寛さんは超アナログ人間
Q:撮影中の面白いエピソードがあったら教えてください。
言えないことがあり過ぎて……。本当にいつも面白かったんですよ。廃車工場の事務所を借りて撮影していたときに、みんなでメールアドレスと電話番号を交換したことがあったんです。みんな赤外線通信とかしているのに、いきなり阿部さんだけホワイトボードに、自分のメールアドレスと電話番号を大きな字で書き始めて(笑)。それがおちゃめで面白かったです。でもすぐに現場に移動しなければならなくて消してしまったので、誰も阿部さんのメールアドレスも電話番号も登録できませんでした(笑)。
Q:大塚さんにとっての“HERO”像を教えてください。
わたしにとっての“HERO”は、やはり家族や木村拓哉さん演じる久利生さん、“城西支部”のみんなです。広い意味で考えると、人生においては自分が主人公で、みんなが“HERO”なんじゃないかと思います。
Q:今回、美鈴さんという役を演じられて、ご自分の演技は何点だと思われますか?
えーっ、そんな難しい質問ですか!? 分からないですね……。ただほかの役者さんも含めて“城西支部”のみんなにすごく助けられつつ、いい雰囲気の中で演じられたということがありがたくて、それがわたしの喜びでした。
Q:映画は100点満点ということですね。
はい!
Q:最後にこの映画を楽しみに待っているファンの方々に一言お願いします。
やはり映画というだけあってスケールが大きいと思いますし、その分事件も大きいです。でもそれだけではなく、人として大切なことが伝わってくる映画だと思いますので、ぜひ1人でも多くの方に観ていただきたいと思います!
大塚寧々は謙遜(けんそん)して自分のことを“ボーッとしている”と言うが、その質問への受け答えはしっかりとしていて、時に鋭い。自分が演じた中村検事のことを“美鈴さん”と親しい友人のように呼ぶ姿がすてきで、ついこちらも途中から「美鈴さんは……」と問いかけてしまった。彼女の持つ温かい自然体の雰囲気は、そのままこの作品の登場人物たちと重なり、自分の人生を精一杯生きる世の中の多くの無名の“HERO”たちの姿とも重なる。そんな多くの人たちにこの作品を観て、ぜひとも自分の人生に思いをはせてもらいたい。
『HERO』は9月8日より日比谷スカラ座ほかにて公開。