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『ラスト、コーション』タン・ウェイ単独インタビュー

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『ラスト、コーション』タン・ウェイ単独インタビュー

監督から「わき毛の処理をしないように」と言われました

取材・文・写真:南樹里

オスカー監督のアン・リーが映画『ブロークバック・マウンテン』と同様に禁断の愛を描きヴェネチア国際映画祭にてグランプリの金獅子賞に輝いた映画『ラスト、コーション』。オーディションで約1万人の中から選ばれ、トニー・レオンを誘惑するヒロインを体当たりで熱演したのは、1979年中国出身でミス・ユニバースにも選ばれるほどの美ぼうの持ち主であるタン・ウェイ。映画デビュー作にして、世界中から称賛を浴びている“旬”の女優に話を聞いた。

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現代女性には理解し難い恋愛

タン・ウェイ

Q:タン・ウェイさんはこの物語をどのように受け止めていますか?

壮大な恋愛物語であるとともに戦いの物語ですね。色と戒めをどうみるかの探求です。監督は「色は後ろに情がつくと“色情”になる。それが撮影のモチベーションになる」とおっしゃっていました。わたしは個人的にチャン・アイリンの原作が大好きなんです。原作の「色、戒」は脚本を読む前に読みました。愛国主義の叫ばれた時代に女性の心を探求しているから、と母にも薦めたぐらいなんです。

Q:同世代の女性はこのような恋愛はどう感じると思いますか?

国や環境によって違うと思うので一概には言えませんが、わたしの出身である“中国”で“同世代”ということでしたら、このような自己犠牲を強いられる恋愛は今では理解し難いと思います。わたしもそうですけれど、多くの女性はやはりハッピーエンドを望むものでしょうから(笑)。

Q:撮影前のトレーニングについて教えてください。

役作りには、3か月を費やしました。監督から大量に資料をいただいたり、ご指導を受けたりしました。それはマージャン、歌、社会背景、衣食住、風習、礼儀作法から語学までいろいろです。ほかにもたくさんの小説を読んだり、映画を観たりするようにと指示されました。その中で好きになった映画は『マイ・フェア・レディ』や『イヴの総て』、あとはグレタ・ガルボの作品ですね。

Q:すてきな歌声でしたね。それに劇中でお召しになったチャイナ・ドレスがとてもお似合いで美しかったです。

ありがとうございます。歌の練習はわずか3日間だったのですが、劇中の歌は自分で歌っています。チャイナ・ドレスは本当に美しかったんです! 初めて着たときは大興奮でした(笑)。当時のわたしはジーンズを主としたカジュアルな格好がほとんどでしたから、「お願い、美しく見える歩き方を教えて!」って感じでした。撮影中は毎日3、4時間かけて髪型やメークといった身支度を整えました。

Q:監督から「わき毛の処理をしないように」との指示があったそうですね?

撮影の合間にわたしがストレッチを行っていたときに、監督から言われました。最初は意味がよくわからなかったのですが、映画の舞台となるのは第二次世界大戦中で日本軍占領下の香港や上海。当時の女性はわきの毛を処理しない方が自然なことだったからだと知りました。今の時代では脱毛も含めて、お手入れは普通のことですけれど(笑)。うろ覚えですが、わたしの祖母も手入れはしていなかったですね。

ベッドシーンはすべて監督の指示

タン・ウェイ

Q:トニー・レオンさん、ワン・リーホンさんについて共演エピソードをお願いします。

リーホンは何事にも一生懸命で、熱くなるタイプみたいです(笑)。休み時間にバトミントンをしたんですけど、ものすごく必死になっていていました。そして初の大役でトニー・レオンのような、すばらしい俳優と共演できてとても幸運でした。現場でのトニーは役柄の寡黙なイーに成り切っていたので、明るくおしゃべりっていうことはありませんでした。でも、それがワン・チアチーの心情、畏敬(いけい)の念を抱いて接する感じにつながったのだと思います。新人のわたしを気遣って導いてくれたんだと思いますね。監督も含め、3人とも本当にジェントルマンでした。

Q:大胆なベッドシーンについてうかがってもいいですか?

はい、遠慮なさらずにどうぞ(笑)。撮影は12日間。トニー・レオンとわたし、そして監督とスタッフたちの合計6人という少人数で行われました。スタッフが少ない分、アン・リー監督があれこれと何役もこなすんです。ベッドの上での動きは俳優任せではなく、すべて監督の指示によるものなんですよ!

Q:監督は体がとても柔軟なんですね(笑)。

いえいえ(笑)柔らかいのは頭脳だと思います。監督が実際に手本を示してくれたわけではなくて、言葉であーして、こーしてって説明してくれるんです。それを役者が実践したんです。監督は想像力がとても豊かなんだと思います(笑)。

Q:中国戯劇学院の監督コースを卒業なさっているそうですが、将来的には監督を考えてるのでしょうか?

本作の出演によって、監督になるにはやはり自分にはいろいろな経験が不足していると感じました。日々の撮影が終わると俳優は休息できますが、監督はたとえ体調を崩しても休む暇などなかったですから。ですので、今の段階ではまだ考えていません。

Q:今後の出演作について、演じたい役柄などはありますか?

これといって特にはありませんが、さまざまな役柄を演じてみたいという希望はあります。でも、まだ自分でこうと言える段階ではないと思っています。今後の出演作については慎重に考えています。


タン・ウェイ

劇中でみせる女スパイの表情は心胆を寒からしめるほど鮮烈なのだが、素顔は優雅の一言に尽きる。それでいて笑顔になると、親しみやすいパンダのような愛らしさで魅了する。幸運にもインタビュー終了後に握手してくれたが、これぞ柔肌! とトロケるような思いを味わった。当初は、あのトニー・レオンを相手に役得と思ったものの、実はトニーの方が役得だったのでは……と思いは一変。アン・リーの豊かな想像力を見習って、肌触りを想像しながら鑑賞することをおすすめしたい。

映画『ラスト、コーション』は2月2日よりシャンテシネほかにて全国公開

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