『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』ナタリー・ポートマン 単独インタビュー
自分の周りにある奇跡(マジック)を見つけて!
取材・文:細木信宏 写真:Bryan Bedder / Getty Images
子役のときから『レオン』『ビューティフル・ガールズ』など、大人びた役にチャレンジしてきたナタリー・ポートマン。子ども向け映画には出演したことがなかったという彼女が、映画『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』で遊び心満載のファンタジー映画に初挑戦した。オモチャのあふれる玩具店のマネジャーとして奮闘した撮影現場の様子や、夢のあるマジカル・ワールドについて語ってくれた。
子ども向け映画に初挑戦!
Q:あなたがこの作品に興味を示したのは、子ども時代を振り返させてくれたからなのでしょうか?
ある意味少女時代に戻った感じがしたわ。面白いことに、わたしは11歳のときから演技を始めたのにもかかわらず、一度も子ども映画に出演したことがなかったの。やっと出演できると思ったら、わたしはすでに大人だったから、子どもの俳優の特権である長いランチ時間を過ごしたり、家庭教師をつけてもらったりすることがなかったので残念だったわ(笑)。わたしは子ども時代にできなかったことをしたかっただけなんだけど(笑)。
Q:この映画は、20年から30年前の子ども映画が持っていたような魔法の世界に誘ってくれますが、あなた自身が子どものころに観て影響を受けた子ども映画はありますか?
子ども映画ではないけれど、8歳のときにとりこになったのが『ダーティ・ダンシング』で、400回くらいは観たんじゃないかしら(笑)。あと、『サウンド・オブ・ミュージック』『メリー・ポピンズ』『チキ・チキ・バン・バン』『マイ・フェア・レディ』といったミュージカル映画をよく観ていたわ。
Q:子どものときはどんなオモチャが好きでしたか?
好きだったのは、お風呂場で遊べるオモチャと1980年代にはやったオモチャね。キャベッジ・パッチ、マイ・リトル・ポーニー、レインボーブライトなどで、特にハマったのがスーパー・ボールとか、派手なものじゃなくて使いやすい単純なものが好きだったわ。
Q:これまで読んだ児童小説の中で、映画化してほしい作品はありますか?
映画化してほしい児童小説は数作品あるけれど、黙っているつもりよ。だって、せっかくのわたしのアイデアが盗まれてしまうから!(笑)
ダスティン・ホフマンとの共演から学んだこと
Q:このキャラクターのどんなところに惹(ひ)かれましたか?
大人へ転換する際に起きる不安や勇気の欠乏といったことが描かれていたことに惹(ひ)かれたの。例えば、これまで誰かに指示されて働いていた人が、急にクリエーターになったら「これを作ったのはわたし、それはわたしの一部なのよ」と言って、世間に見てもらう勇気が必要だというメッセージが込めらているの。
Q:ダスティン・ホフマンとの共演はいかがでしたか?
ダスティンは本当に個性的でユニークな人、これまで共演してきた俳優たちとまったく違っていたわ。彼は師であり、同僚、親、友人、子どもなどすべて組み合わせた要素を持った素晴らしい人だったわ。
Q:この映画で魔法という奇跡はどうやって生まれ、あなたはその衝撃をどうやって演技に変えていったのでしょうか?
子どもが常に周りに居たことや、信じられないほど素晴らしいセットのお陰ね。どこを見回しても新しいことや驚くようなことが発見できたわ。あと、ダスティンがいたからだと思うわ。彼はいつも自発的行為と好奇心からオリジナリティーを追求するの。あるテイクに入る前に「このテイクがわたしたちの人生でやる最後のテイクになるかもしれないよ」と言っていたわ。もちろんいつもそんな考え方で人生を過ごすことはできないけど、実際そう思って生きてみると、人生にきらめきを加えることができると思ったわ。
Q:監督のザック・ヘルムは、モリー(ポートマン)とマゴリアム(ダスティン)の関係は、スペンサー・トレイシー(気性の激しい俳優で、たびたびスタッフと衝突した)の人生に似ていると言っていたのですが、どう思いますか?
人との関係はそれぞれユニークなもので、わたしと友人の関係と、またその友人がつき合っている仲間との関係が違うのと同じで、まったくオリジナルなものだと思うわ。だから、そのような見方で映画に入り込んだりはしなかったわ。
Q:トロントで撮影をしていたときのことで記憶に残っていることはありますか?
トロントは異文化が交錯する都市の中で、実際に上手く活動していると思うし、それぞれの自己と身分を保持しているの。素晴らしい時間が過ごせたわ。
映画を通して伝えたい人生に大切なこと
Q:最終的にあなたが監督になりたいとしたら、過去に仕事をした名監督の中から学んだことを、どのように活用しようと思っていますか?
今の時点では、まだ考えられないわね。監督になることにも近付いていないわ。もちろん、目標ではあるけど……。わたしが監督たちから学んだことはとてもたくさんあるの。リュック・ベッソンは、ずば抜けたアングルで撮るカメラワークのセンスを持っていて、時々自分自身で撮影することもあるのよ。マイク・ニコルズは、脚本をどうやって俳優に伝えるか何度も試みようとするわ。恐らく、このほかにもいまだわたしが気付いてないことが山ほどあると思うわ。
Q:観客にはどのようなメッセージを感じ取ってほしいですか?
この作品には、自分の人生を指揮する方法が比喩(ひゆ)的に表現されているので、それを感じ取ってほしいわ。そして、いつも自分の周りに奇跡(マジック)を見つけ出すことが大切だと思うわ!
インタビュー中、常に言葉を選んで的確に答えながら、随所にユーモアを踏まえた彼女の会話に知性を感じた。常に新しいことを試みてきた彼女が、少し肩の力を抜いて、遊び心を持って演じ切った本作は、奇跡(マジック)の詰まったすてきな映画に仕上がっている。ぜひ劇場でその奇跡(マジック)を体感してほしい。
映画『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』は2月16日より全国公開