『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』宮川大輔 単独インタビュー
できる! やるしかない! 楽しもう! と自分に言い聞かせた
取材・文:鴇田崇 写真:秋山泰彦
巨匠・黒澤明の名作『隠し砦の三悪人』が、『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』として現代によみがえった。嵐の松本潤、長澤まさみ、阿部寛と豪華キャストが集う中、“三悪人”の一人、新八を宮川大輔が好演した。「人志松本のすべらない話」などで知られるお笑い畑の宮川は、劇中でもコメディーリリーフ的な役割を担いつつ、演技者としての新たな一面も披露。本作で重要な役を演じ切った宮川に、映画のことなどさまざまな話を聞いた。
ヤバイ……でも、できる!
Q:最初に本作への出演のオファーが来たときは、どんな心境でしたか?
いや正直、びっくりしましたね。今までこんなに大きな役をいただいたことがなかったので。台本をめくったら3番手ぐらいに“宮川大輔”って書いてあって、こりゃちょっとヤバイと(笑)。大丈夫かなって不安になりましたが、でも、できるっ! やるぞっ! って思って台本を読みました。読み進めていくうちに“新八、新八”って自分のセリフがたくさん出てきて、また不安になって(笑)。自分で、できるっ! できるっ! って思いながら最後まで繰り返して、最終的にはやるしかないっ! 楽しもうっ! って思って乗り切りました。
Q:共演者が松本潤さんを始め、長澤まさみさん、阿部寛さんと豪華キャストが勢ぞろいしていますが、それぞれ共演された感想はいかがですか?
潤は最初に思っていたイメージと全然違いましたね。やっぱり嵐っていうたらスーパーアイドルなわけで、年も若いですし。どんな人なんやろう? って思っていましたけど。正直、若いしチャラチャラしてんのちゃうかー? みたいなイメージやったんですけど、実際会って話してみたらしっかりしているなー、大人やなぁって感じでしたね。僕より大人ですよ。あと気を遣わんと僕にいろいろと言ってくれるんで、「宮川さん、それ面白くないよ!」とかね(笑)。向こうが気を使わない分、こちらもいろいろ言えて。潤があんな人間で良かったです(笑)。
長澤まさみちゃんは、ツンとしてはるんかな? どんな人なんかなぁ? って思っていましたけど、普段しゃべっているときもケラケラ笑ってはりますし、全然カッコつけてなくて話しやすかったですね。スッと入っていけました。
阿部さんは天然キャラと言いますか(笑)、以前1回だけ食事の席で一緒になったことがあるんです。こんな言い方は失礼に当たるのかもしれませんけど、面白い方でした(笑)。
Q:そんな皆さんの仲の良さがスクリーンにも反映されていたと思いますが、宮川さんのお気に入りのシーンはどこでしょうか?
僕が団子を食うシーンですね。あの団子を食べることで新八というキャラが出来上がったといいますか、新八というキャラがつかめたというか、思い出深いシーンになりましたね。
酒、女、メシという新八を自然に演じられた
Q:“三悪人”の一人、新八を演じた感想はいかがですか?
酒、女、メシみたいな(笑)。そんな感じの男なんで、あまり作り込むこともなく、自然に新八になれたと思うんですよ。衣装もメークも朝早く入って1時間ぐらいかけてやるんで、ヒゲをつけて汚してって出来上がる間に、だんだん新八になっていく感じでしたね。やっぱり普段皆としゃべったり一緒にご飯食べに行ったりした雰囲気が、そのまま新八やったんやないかなとも思いますけど(笑)。
Q:役割的にもコメディーリリーフ的な感じでしたが、撮影現場でも宮川さんがムードメーカーでしたか?
どっちかっていうと、皆が皆面白かったですけどね。阿部さんのキャラには勝てませんでしたし(笑)。もう大爆笑でしたからね(笑)。
Q:新八は“つぶて投げ”が得意技で、映画の前半で長澤さん演じる雪姫を倒すシーンもありましたね。つぶて投げをやってみた感想はいかがですか?
よしっ! みたいな感じですか(笑)。1発でいけたのがね。新八の唯一の武器だったので、やっとあのシーンで新八ってああいうことするんだって気付きました。新八って強いんだって。ただ、あれ大変だったんですよ。殺陣の先生をお呼びして練習したんですけど、もともと、つぶて投げってないみたいなんですよ。多分今回の映画でどんな武器使おうかってことになって考え出されたのがつぶて投げなんです。それで殺陣の先生は1回もうまくいかなかったのに、僕がやったら先生よりずっとうまくできて(笑)。
Q:劇中では関西弁も封印されていたようですが、いかがですか?
はい。多分関西弁でやった方がテンポや間が出たかもしれないんですけど、この映画に関西弁はちゃうなって思って、やるからには時代にあった標準語でやらないとダメだろうと。実はそれが一番大変だったことですね。リハーサルのとき、関西弁を言いたいって思ったときがあったんですよ。でもそれが合っているのかどうかもわからないし、言うたことで作品の雰囲気を壊すのも嫌だったので我慢しました。
オリジナルの『隠し砦の三悪人』は観なかった
Q:最近は『ガチ☆ボーイ』など話題作で宮川さんを観る機会も増えましたが、俳優業はいかがですか?
面白いですね。お笑いっていう仕事も好きなんですけど、もともと僕は俳優、お笑い芸人って分けて意識していないんです。そうやって考えると力が入ってしまいそうで、意識し過ぎてしまう。ただ、お笑い芸人さんの中には待ち時間が長い映画の現場は嫌だって言う人もいますけど、僕は退屈しなかったです。共演者の皆さんと仲良くなれて、楽しかったですね。
Q:今後は本業のお笑いだけでなく、演技の仕事も増えそうですね。
やってみたいです。お仕事いただけるものなら(笑)。お笑いと俳優の比重とか決めてないんですが、やっぱり“すべらない話”はオッサンになってもすべらないねって言われていたいですけど(笑)。
Q:もともと映画はよく観られますか?
そうですね。好きなんですけど、観ようと思って3本ぐらいレンタルして、1本だけ観て2本そのまま返してしまうとか(笑)。オリジナルの『隠し砦の三悪人』は、最初は観なかったんですよ。観ると、意識してしまうんちゃうかなみたいな。観たかったんですけど、ここは観んとこって思って、力が入ってドキドキしてしまいそうだったんで。全体の3分の2ぐらい撮り終えたときに、今やったら観ても大丈夫ちゃうんかなって思って、そこで初めて観ました。
Q:最後に宮川さんから一言、メッセージをお願いします!
完成した映画を観たときに、もう一回観たいなってすぐに思えたんですよね。時間も感じなかったですし、スピーディーに最後まで観られました。『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』で“三悪人”の一人、新八になれて良かったなぁって気持ちになれたんです。だから、いろんな人に観ていただきたいと思います。
インタビューをした日は同作の完成披露試写会で舞台あいさつをした直後だったため、正装で取材部屋に現われた宮川。本人のブログによると当日はかなり疲労していたようだが、『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』で関西弁を封印して撮影に臨んだように、役者魂でインタビューも乗り切ったようだ。本人が言うようにすべらない話などのお笑い芸人としての活躍ももちろんだが、今後の俳優としての宮川の飛躍にも期待したい。
『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』は5月10日より全国公開