『最高の人生の見つけ方』ジャック・ニコルソン単独インタビュー
女性は生きるエネルギー! 人生最後の大ロマンスを探し中さ!!
取材・文:シネマトゥデイ 写真:秋山泰彦
もしも余命6か月と宣告されたら、どのように残りの人生を過ごすか……。偶然同じ病室になった2人の初老男性が、「死ぬまでにしたいこと」を楽しみながら余生を過ごす姿を描いた『最高の人生の見つけ方』。本作で、モーガン・フリーマンとともに、最高の演技を見せている名優ジャック・ニコルソンが14年ぶりに来日を果たした。71歳になっても、いまだパワフルな人生を送り、俳優としても成熟した演技を見せるジャックが映画について、演技について、そしてプライベートについて語ってくれた。
演じることが楽しくて仕方がない71歳
Q:この作品にかかわって最高だったことはなんでしたか?
プレミアで、観客が素晴らしい反応を見せてくれたことかな。それはわたしが俳優として一番喜びを感じる瞬間なんだ。完成した映画を楽しんでくれた観客の反応……それが良ければ良いほど、わたしは役者として極上の喜びを感じるんだよ。そしてアメリカで試写をしたときの観客の反応は、まさにベストだった。こうやって日本に来ているのも、たくさんの日本の観客に観てほしいからなんだよ。
Q:この映画のように、初老の役者が主役の映画はなかなかないですよね?
そうなんだ。観客はいつの時代でもとても若いから、観客を意識すると主役が若くなるのは仕方がないこと。でもこの映画のように、どんな世代にも通じる映画はできるんだよ。わたしは、いまだに「よくこの業界に生き残っているな」って自分自身驚いてしまうことがあるんだけどね。とにかく演じているときが楽しくて楽しくて、この歳になってもまだ楽しくて仕方がない。それはとてもすてきなことだよね。
Q:モーガン・フリーマンとの息もぴったりでしたね。
モーガンとわたしは、お互いがワイルドだった1970年代から、とても意識していた役者だった。一緒に演じることも、2人で脚本を考察しながら、演じられたのは楽しかったよ。
Q:モーガンの“そばかす”について、突っ込めるのは、世界中であなたしかいないんじゃないですか?
あのセリフが気に入ってくれたのかい? 実は、あれはわたしのアドリブなんだよ。これから観る人たちには、ぜひ注目してほしいね(笑)。何といっても、わたしが昔からずっと聞きたかったことを、アドリブで聞いたのだから。しかも、わたしのアドリブに返したモーガンのセリフも最高に美しかった。わたしもあのシーンは気に入っているよ(笑)。アドリブはもちろん、脚本を考察することはとても大切で、セリフにはわたしのアイデアがたくさん詰まっているんだよ。
すてきな女性に出会った夜はプッチーニを聞く
Q:モーガン演じるカーターが生涯奥さん一筋というセリフに、とても驚くシーンがありましたね。あれも元祖プレイボーイのあなたのアイデアですか?
わっはっは。そうそう。2人の恋愛観はかなりずれていたからね。男というのはいろんなタイプがいてね。実はあるシーンでも出てくるセリフなんだけど、カーターはクオリティーを追求していて、エドワードはボリュームなんだ(笑)。もちろんボリュームもクオリティーも両方追求できれば最高だけど(笑)。わたしが演じたエドワードと違って、カーターは妻一筋。そんな生き方もナイスだとは思うけど、わたしはエドワード流の生き方の方が楽しいよ(笑)。
Q:プレイボーイでいることの、楽しさってどんなところにあるんですか?
そうだね。プレイボーイでいることはとってもナイスだよ(笑)。女性は生きるエネルギーをくれるから。これはわたしが軍隊にいたときに感じたことなんだけど、男が孤独に生きたり、男ばかりの環境にいたりすることは、精神衛生上とても良くないんだ(笑)。だから女性とのセックスは、とても大切なことなんだよ。だからわたしは71歳でも、とっても健康に見えるんじゃないかな。
Q:今でも恋はしていますか?
もちろん! 今、人生最後の大ロマンスを探しているところだからね。この前も、とてもすてきな女性に出会ってね。今でも、すてきな出会いがあった夜はプッチーニを聞いてしまうんだ。日本人女性? もちろん! これまで付き合ったことがないから、ぜひ一度付き合ってみたいな。
私生活での入院が、そのまま演技に役立った
Q:ガンの化学療法を受けるシーンはとてもリアルでしたが、どんな準備をされていたんですか?
リアルだったろう? 実は、撮影に入る少し前に入院していたんだ。特に大きな病気ではなかったんだけどね。だから入院したときの体験を、そのまま演技に役立てることができたよ。例えば来る日も来る日も、採血ばかりされて「血はリサイクルできないのかい?」って看護師に言ったこともあったよ(笑)。
Q:入院生活は楽しめました?
全然(笑)。入院するまでは病院にいても、いつも元気に見せるようにしていたんだ。でも夜中に病院の中を歩いて、患者の暗い表情を見ていると、「あまり元気に見せる必要もないんだな……」ってことに気付いたよ。考え方がずいぶん変わったね。
Q:映画の中では、ひどい病院食がたくさん出てきますが、ジャックさんはいかがでした?
映画の中の自分と同じで、お抱えシェフに作らせていたよ(笑)。
85%は自分自身。残りの15%が演技。
Q:たくさんの人々が、あなたの演技に感銘を受けていますが、名演技の秘けつは何でしょう?
うーん。それをうまく答えているように、名演技しなきゃいけないね(笑)。そうだね。秘けつは、いつもいい監督と組むことかな(笑)。そうすればいい演技を引き出してくれるから(笑)。それからわたしは性格俳優だから、わたしが演じる役柄の85%は自分自身なんだ。そして残った15%が演技なんだ。それにはとにかく脚本を読み込んで、十分な準備をしてからリラックスをして、演じる瞬間はその役柄として生き抜くことだね。
Q:あなたはこれまでさまざまな映画で死んできましたが、この映画での死はとても穏やかでしたね。この映画は死についてもとても考えさせられる映画でしたが、あなたの理想の死はどんな死ですか?
あははは。できれば永遠に死にたくないな(笑)。というのは冗談だけど、一番大事なのは、恥じて死ぬようなことはしたくないね。平和に、できればいつまでも世界中から“愛すべきジャック”という存在のまま死を迎えたいね。
この世に女性が存在する限り、永遠に死なないのではないだろうかと思わせるほど元気なジャックには、71歳とは思えないほどの色気が漂っていた。エネルギッシュな演技の裏に見え隠れする、85%のジャックは、ユーモアのセンスにあふれ、取材中も女性を見つけるとウインクを送ってしまう、キュートで危険な現役プレイボーイだ。ポジティブに日々を生き抜いた本作の主人公エドワードのように、ジャックには役者としても男としても、これからもずっと輝き続けてもらいたい。
『最高の人生の見つけ方』は5月10日より丸の内ピカデリー2ほかにて全国公開