『僕の彼女はサイボーグ』綾瀬はるか&小出恵介 単独インタビュー
相手に見返りを求めない究極の愛が描かれている
取材・文:内田涼 写真:秋山泰彦
未来からやって来たサイボーグと、その生みの親である現代の青年が織り成す切ないラブストーリー『僕の彼女はサイボーグ』。同作で繊細(せんさい)な演技はもちろん、体当たりのアクションにも挑戦しサイボーグに成り切った綾瀬はるか、そしてどこか頼りなくも温かなハートを持った青年を好演した小出恵介に話を聞くことができた。壮大なスケールで描かれる愛の行方。その裏には2人にしかわからない苦労が隠されていた。
まばたきさえできないサイボーグ役に悪戦苦闘
Q:最初は無表情だったサイボーグが、次第に感情に目覚める過程が印象的でした。サイボーグ役をつかむまでには時間がかかったのではないでしょうか。
綾瀬:確かに最初はサイボーグ役と聞いても、あまりイメージがわきませんでしたね。脚本を読んだり、現場で衣装を合わせしたりしているうちに、だんだん役柄をつかんでいく感じだったと思います。実際に撮影が始まると、監督から「まばたきはダメ」って指摘されながら出来上がったキャラクターだと思います。
Q:やはりサイボーグだけに、まばたきはできないんですね。
綾瀬:最後の方に、大地震が起こるシーンがあるんですが、どうしてもまばたきしてしまって何度かNGを出しちゃいました。
いや、あれはまばたきしないほうが無理! ガンガン雨粒が当たっているのに「目を開けろー!」って言われても、どうすればいいんですか? って感じだったよね(笑)。
綾瀬:なので、少しだけ雨の量を減らしてもらいました(笑)。
Q:あの大地震のシーンでは小出さんもだいぶ体を張っていましたね。
小出:大変でしたね。地震で吹き飛ばされて壁に激突するシーンでは、1回失神してしまいました。後ろに飛ばされるんで、見えない恐怖があるんですよ。
Q:そんな小出さんが演じるのはちょっと頼りない大学生、ジロー役。ひょっとして自分と近いキャラクターでしたか?
小出:いや、あまり近くはないですね。ただ、突拍子もない女の子に振り回されるっていう設定は面白かったですね。もちろん彼女(サイボーグ)みたいなエキセントリックな人は普通いないですけど、こんな人いたらいいなって理想はありますね。
綾瀬:サイボーグの方が強くって、ジローは振り回される。でもジローは何だかんだ言いながら、振り回されてあげている感じなんですよね。すごく優しいと思うし、包容力のある男の子だと思いますよ。
きずなを深めた監督特製のキムチ
Q:『猟奇的な彼女』などで知られるクァク・ジェヨン監督とのお仕事はいかがでしたか?
綾瀬:監督が「言葉が通じない分、たくさん会話をしましょう」っておっしゃって。なのでちょっとした待ち時間でも、監督といろいろなことを話しましたね。本当、何気ない話ですよ。それに韓国語を教わったり、日本語を教えたり。ご飯はいつも監督と一緒でした。
小出:韓国ではみんなで集まって一緒にご飯を食べるらしいんですよ。日本ではそういうことはあまりないですよね。毎回、監督が韓国から空輸された特製キムチを持ってきてくれて、食べていましたよ。
Q:特に印象に残っている演出やアドバイスはありますか?
小出:監督からはよく「目を大きく見開いて」と言われました。特に驚くシーンとかで。彼女が感情面で平坦なキャラクターなので、ぼくの方は少しオーバーで起伏の激しい演技が求められたんです。だからしょっちゅう泣いたり笑ったり。事前に見せてもらった絵コンテにも、すでにとんでもなく大げさな表情が書かれていたんで、戸惑うことなく、とにかく頑張ろうって(笑)。撮影中は無理な注文も多かったんですけど、今振り返ると、うまく言葉にできませんが「大きな人だったなカット」と思います。
綾瀬:今回、ジェヨン監督とお仕事して「監督は味方である」って気づかされました。それまでは、どこかで監督から要求されることに応えなきゃいけないとずっと思っていたんです。同じもの(作品)を作る仲間ではあるけれど、同時に戦わなければいけないっていう意識。それに「監督が納得していないだろうな」って不安も強くて。でもジェヨン監督からは「監督は一番の味方なんだよ、いつもカメラを通して見守っているよ」という感覚が伝わってきたんですね。とても心強くなりました。
Q:CGを多用した作品なので、演技中はなかなか状況を把握するのが難しかったのでは?
綾瀬:確かにグリーンバックでの撮影が多かったですが、勝手に「こういう感じだろう」ってイメージをふくらませて。完成した作品を観たら、結構イメージ通りでしたね。
小出:彼女がお酒を飲んで酔っ払うシーンは、監督から「いきなり彼女の首が回って……」みたいな説明を受けたんですが、全然よくわからなくて。で、実際に完成版を観るとCGで首が回っていて面白かったですね。
サイボーグと青年が繰り広げる究極の愛
Q:未来からやって来たサイボーグとちょっと頼りない青年。そんな2人のラブストーリーについて、今どんな思いがありますか?
綾瀬:最初は「ジローを守る」という任務のためだけに未来からやって来たサイボーグですが、ジローと出会い生活する中で、感情というか人間らしさを知っていくんですね。そこで相手に見返りを求めるのではなく、自分がジローのために何ができるかを考える感じが……究極の愛だって思います。
小出:突然やって来た彼女に対し、戸惑いながらも一緒に暮らし始める。ジローは至らない部分も大きくて、ごく自然な流れで彼女のことを好きになったと思いますね。でも、相手はサイボーグなわけで思うようにならない。キスしても何も感じないんですから、彼女は(笑)。それで嫉妬(しっと)させようとしたり葛藤(かっとう)したりの連続なんですが、やっぱり最後まで思いが変わることはなく、いちずな恋愛ですよね。
Q:最後に公開を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
小出:2人がそれぞれの運命を切り開いていくラブストーリーではあるんですが、その枠を越えて「とんでもないものを観たな」って僕自身、感じています。いろいろな要素が含まれた壮大な作品なので、ぜひ劇場で観てほしいなと思います。
綾瀬:サイボーグと人間のラブストーリーが展開する中で、大きな愛の力が奇跡を起こしたり、とても意外な結末を迎えたりと、見どころがたくさんある作品です。CGを観るだけでも楽しめますし。ぜひ大きな画面で観てください。
インタビュー当日は、偶然にも同じイエロー系統の衣装で現れた2人。すかさず「あぁ、マネしたでしょ」(綾瀬)、「いや、こっちは昨日から決めていたよ」(小出)と絶妙なやり取りで、息がぴったりなところを見せてくれた。CGを多用した壮大なスケール感や韓国人監督との仕事、何よりこれまでにない難役にチャレンジした2人にとって、この『僕の彼女はサイボーグ』という作品は忘れられない思い出になったようだ。
『僕の彼女はサイボーグ』は5月31日よりサロンパスルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にて全国公開