『ミラクル7号』チャウ・シンチー&シュー・チャオ&キティ・チャン 単独インタビュー
子どものころゴキブリたたきをした実体験が生かされている
取材・文: 平野敦子
『少林サッカー』『カンフーハッスル』など、香港の鬼才として知らせるチャウ・シンチーの新作『ミラクル7号』がついに日本に上陸。本作で製作、監督、脚本、そして出演も兼ねる彼が心底ほれ込み、女の子ながら男の子役で主役に大抜てきされたシュー・チャオ、そして主人公を優しく見守る先生役の新星キティ・チャンらが集合。この作品の見どころや、映画のタイトルにもなった“ミラクル7号”との共演、撮影中の苦労話などについて仲良く語ってくれた。
モデルはチャウ・シンチーの元飼い犬
Q:3年ぶりの新作となりましたが、今のお気持ちを聞かせてください。
チャウ・シンチー(以下シンチー):撮影には1年かかったので、いろいろと大変だったけれど、後の2年間僕は昼寝していたからね(笑)。
Q:チャウ・シンチーさん自身大の犬好きということなのですが、この映画に登場するナナちゃんことミラクル7号のモデルは実際にいたのでしょうか?
シンチー:自分が大の犬好きなので、そこからインスピレーションを受けたのは確かだね。以前僕はとても目の大きな犬を飼っていたんだけれど、その犬がナナちゃんのモデルになったんだよ。
Q:姿の見えないナナちゃん相手の芝居は大変ではなかったのでしょうか?
シンチー:すべて空気を相手に演技をするようなものだから、もちろん大変だったのは確かだ。ただそれをやり遂げなければならないのは最初からわかっていたからね。CGを使うと自分の首を絞めることはわかり切っているのに、どうしてもそれをやりたいという欲求には勝てないから仕方がないんだよね(笑)。
Q:ナナちゃんと一緒の場面で、一番のお気に入りのシーンはどこですか?
シンチー:自分で考えて作り出したものだから、もちろんどのシーンにもすごく愛着があるよ。ナナちゃんは、僕が昔飼っていたペキニーズ(犬の種類)と同じような存在だと信じているぐらいだからね(笑)。
シュー・チャオ(以下チャオ):この子はとてもかわいいんですよね。撮影中はオモチャのモデルがあったので、その子と一緒に演技をすることができてうれしかったです。オモチャだと、ナナちゃんが実際に生きているみたいで、瞳もキラキラ輝いていて、本当に自分が一緒にお話している気分になって、一緒にお芝居ができてとても楽しかったです!
キティ・チャン(以下キティ):わたしは以前演劇学校に通っていて、そのときに最初の授業で習ったのが空気を相手に演技をすることだったの。その経験が今回役立って本当に良かったと思ったわ。
実体験から生まれた貧乏エピソード
Q:この映画は泣けるSFに仕上がっていますが、その構想はいつごろからあったのでしょうか?
シンチー:僕自身が温かい性格の人間だから、ずっと前からこういう映画を撮りたいと企画を温めていたんだよ(笑)。
キティ:確かにそうだわ(笑)!
Q:物語はハッピーエンドではあるのですが、一緒の物悲しさも漂っています。
シンチー:ただのお涙ちょうだいのドラマだけにはしたくなかったんだ。そういうメロドラマの王道のような映画なら僕が撮る必要はないからね。僕はそういう部分ではなく、映画の内容で観客を感動させられるものを作りたいと心から願っているんだ。
Q:主人公の父子はとても貧乏で、ボロボロの靴を糸で縫ってまた履いたり、腐ったリンゴをナイフで削って食べたりしますが、そのアイデアはどこから来たのでしょうか?
シンチー:映画を撮影する前にリサーチをして、実際にそのような家庭を訪問したんだ。香港でも、中国本土でも確かにそのような家庭は今もあるからね。いろいろな資料を検討した結果、作品に合うと思った部分は今回映画の中にも登場させたよ。
Q:今までの人生で一番自分が貧乏だと感じたのはいつですか?
シンチー:自分はこの映画の父子のようにとても貧乏な家庭に育ったので、小さいころはゴキブリをたたくというのが一緒の娯楽になっていたんだ(笑)。毎晩夜になると、友だちと集まってゴキブリたたきをしたという実体験があるよ。
チャオ:この役をやることができてとてもラッキーだったと思います。今のところ不自由なく普通の暮らしができるし、父も母もわたしをすごくかわいがってくれます。実はわたしは中流家庭で育ったので、そんなにひどい貧乏は今まで体験したことはないんです。
キティ:貧乏であるということは決してマイナス要素だけではないと思うわ。貧しい環境の中にいると「頑張らなきゃ」とか「強くならなきゃ」と思うから、そういう状況に身を置くというのもそれほど悪くないんじゃないかしら。
いろいろな愛の形が描かれている
Q:では、この映画を楽しみにしている日本のファンの方々にメッセージをお願いします。
シンチー:今回自分でもとても愛着があるのが、宇宙から来た謎の生命体ナナちゃんなんだ。これは僕がすごく感情を込めて作ったキャラクターだからね。きっと子どもたちも大好きになってくれるかわいらしいキャラクターだと思うし、とても温かい気分になる感動的な映画に仕上がっていると思うので、ぜひ劇場に観に来てほしいな!
チャオ:この映画の見どころは愛です。全編を通して愛に満ちあふれているんです。それは家族愛であったり、親が子どもを思う気持ちだったり、逆に子どもが親を思う気持ち、先生が生徒を思い、生徒が先生を敬う師弟愛など、いろいろな愛が混ぜ合わされて素晴らしい映画になっていると思います。どうぞその愛を自分の目で確かめてください!
キティ:この映画のタイトルは『ミラクル7号』ですから、どうぞ皆さん最低でも7回は劇場に足を運んでこの映画を観てくださいね(笑)!
不仲説が報じられているチャウ・シンチーとキティ・チャンだが、2人は取材現場では真ん中に子役のシュー・チャオをはさみ、彼女の天才的な受け答えをまるで父親と母親のように優しく見守っていた。さすがに人を見る目は確かなシンチーだけあって、早速自身が率いる映画製作会社スター・オーバーシーが、天才子役シュー・チャオと、アジアンビューティのキティ・チャンの両方と8年契約を結んでいる。彼らが一体となって作り上げた、今までに観たことのない感動のSF大作の実体を、ぜひともスクリーンで体験してもらいたい!
『ミラクル7号』は6月28日よりシネマスクエアとうきゅうほかにて全国公開