『デトロイト・メタル・シティ』加藤ローサ 単独インタビュー
松山さんは役を離れるとマイペースで面白い普通の男性です
取材・文:鴇田崇 写真:田中紀子
渋谷系ギター・ポップをこよなく愛する青年が、本人の意思とは無関係に過激なデス・メタルバンドのカリスマボーカリストとして活躍する羽目になる姿を描いた、若杉公徳原作の大人気コミックを実写化した『デトロイト・メタル・シティ』。主演の松山ケンイチが驚異の演技力で気弱なゴボウ男と粗暴なデス・メタル野郎を演じ分けているのも話題になっている本作。その松山演じる主人公が思いを寄せるヒロインを演じた加藤ローサに話を聞いた。
デス・メタルという新しい世界を体感
Q:完成した映画をご覧になって、どのような感想をお持ちになりましたか?
そうですね。わたしが撮影していないシーンで意外性を感じたというか(笑)。わたしは大分県へのロケには参加していないんですけど、そこでの主人公の根岸君と家族の関係が描かれているシーンが新鮮に映りました。こんなほのぼのしているシーンもあったんだって(笑)。それと、ライブのシーンがすごい迫力で、撮影中も熱気とパワーがすごかったんですけど、そのかいあってカッコ良く仕上がっていると思いました。
Q:デス・メタルはお好きでしたか?
いやぁ(笑)。それまであまりかかわりがなくて、もしかしたらどこかで聴いたことぐらいはあったのかも知れないですけど、意識して聴いたことは全然なかったんです。今回の映画で初めてデス・メタルを聴いてみたら音がすごくカッコ良くて、クラウザーさんやジャック・イル・ダーク(ジーン・シモンズ)の歌もカッコよくて好きですね。デス・メタルのファンの方々も熱狂的で、新しい世界に触れられた感じです。
Q:普段はどんなジャンルの音楽を聴いているのですか?
特に決まったジャンルというのはなくて、iPodをいただいたときに友だちに音楽を入れてもらって、何となく聴いている程度です。本当にBGMのような感じで聴いていることが多いですね。
念願の松山ケンイチとの共演が実現
Q:根岸君とクラウザーさんを演じる、松山ケンイチさんとの共演の感想はいかがですか?
松山さんとは共演したかったんです。松山さんのドラマや映画も観ていました。でも、今回の根岸君もクラウザーさんもすごく個性的じゃないですか(笑)。なので、撮影の合間もその演じられている役のままだったので、クラウザーさんのときは話しかけられず、根岸君のときは二人とも照れてしまって、あまり歩み寄れない状態だったんです。公開前のキャンペーンで一緒になっている今、初めて一緒に仕事している感じですね。
Q:その二人の関係は、映画のシチュエーションそのままですよね。
松山さんが役に成り切っているので、わたしもつられて同じようになってしまいましたね(笑)。最近バラエティー番組で松山さんと共演させていただくようになって、意外にストイックじゃないんだって思いました。役を離れれば普通の男性で、マイペースなんだけど、面白いことを言って笑わせてくれるのが意外でした(笑)。
Q:加藤さん演じる相川さんは雑誌編集者の役ですが、取材をする側の女の子を演じていかがでしたか?
そうですね(笑)。おしゃれ雑誌っていう設定なので、着る服もすごくおしゃれで、毎日表に取材に出るわけではないのに、すごくおしゃれに気を遣っている子ですよね。朝ってみんな忙しいはずなのに、バッチリぬかりなくコーディネートして、おしゃれ雑誌の編集者さんって大変だと思いました(笑)。
Q:本物の女性誌からの取材もあったと思いますが、皆さんの反応はいかがでしたか?
編集者役に関しての感想はあまりないんですけど、映画全体が笑えて面白かったって言ってくださる方が大半でしたね。意図的に笑わせようとするコミカルなシーンがいくつもあるのですが、評判は良かったです。
いつも大切にしているフレーズ
Q:相川さんのように、プライベートでもおしゃれなカフェめぐりなどされますか?
同じような場所ばかりに行ってしまいます(笑)。常に新しいお店を目指して開拓するっていうよりは、知っているお店や以前一度行ってみて良かった場所に行ってしまいます。気に入ったら同じ場所に通い詰めるタイプですね(笑)。
Q:相川さんは「NO MUSIC NO LIFE」という言葉を大切にしている女の子ですが、ご自身でも大切にしている言葉やフレーズなどはありますか?
単純なことですけど、「感謝の気持ちを忘れずに!」って、いつも思っています。デビューした当初はしばらく実家にいましたけど、高校卒業と同時に東京に出てきたんです。地元の鹿児島では親せきがすごく応援してくれているんですけど、それがだんだんと普通に当たり前になってきて慣れちゃうし、それが重たく感じたりし始めたことがあったんです。実家に戻ったときにせっかくゆっくりしようと思ったのに、知らない親せきの家を連れ回されたことがあって(笑)、もう帰省するときは黙っていようとか……。そういうふうに思っていたら、母が「応援してくれるんだから、感謝の気持ちを忘れちゃだめだよ」って言ってくれたんです。
Q:そのメッセージはプライベートだけでなく、仕事の現場でも当てはまりますね。
はい。本当に小さいことですけど、わたしはスタッフの皆さんの助けがなかったら、カメラの前に立つことすらできないほど憶病だと思うので(笑)、スタッフの皆さんに毎日感謝しています。わたしがこの世界で仕事ができているのは、周りの人のおかげだと思って、自分の力ではないと過信しないようにしています。
映画とドラマのバランス重視
Q:最近ではドラマ「CHANGE」、今後は『天国はまだ遠く』と新作映画も続いていますね。映画の現場とドラマの現場では違いがありますか?
映画もドラマもどちらも楽しくて、どの現場もそれほど違いがあるとは思わないんですけど、どちらもやり続けたいと思っています。どちらにも良さがあるので、バランス良く出られれば理想だって思います。
Q:演じること自体は楽しいですか?
はい! 映画もドラマも演じているということでは同じですし、カメラアングルや照明を気にする女優でもないので(笑)、どの現場も変わらないですね。役を通じて違う人生を歩めることも、短い期間ではありますが、その期間は演じている役の背景を考えたりすることもあります。特に一つの作品で10年間の人生を駆け足で演じなければならないときは、何回も人生を生きている感じがしますし、終わったときにもう二度と彼女と会うことがないと思うと寂しくもなります。「また次がある!」って頑張るしかないんですけど……。
Q:最後に『デトロイト・メタル・シティ』を楽しみにしているファンに一言お願いします。
『デトロイト・メタル・シティ』は個性的な映画っぽいんですけど、普通の青春映画の要素もたくさんあって、泣けたり笑えたりする作品です。音楽も本当にカッコいいので、ぜひ観ていただきたいと思います!
相川さん役を演じた加藤は、劇中で松山演じるクラウザーさんに「メス豚」呼ばわりされたり、スカートをめくられたり散々な目に遭うが、持ち前のキュートな魅力とナチュラルな存在感で、デス・メタル野郎の男くさい熱狂が支配する『デトロイト・メタル・シティ』の世界に花を添えてくれた。クラウザーさんの存在をひた隠す根岸とデス・メタルを嫌悪する相川さんの恋の行方はどうなるのか? そのいきさつは劇場で確かめてほしい。
『デトロイト・メタル・シティ』は8月23日より全国公開