『ハンコック』ウィル・スミス 単独インタビュー
観客には、ポジティブなメッセージを投げかけていきたい
取材・文:シネマトゥデイ 写真:秋山泰彦
スーパーパワーを持ちながら、パワフル過ぎて街を破壊! 市民からは嫌われものとなってしまったハンコックが、真のスーパーヒーローへと成長していく姿をアクションたっぷりに描き、アメリカで大ヒットとなった映画『ハンコック』。本作で主人公のハンコックをユーモラスに演じるのは、ヒットメーカーのウィル・スミス。どんな人でも心から楽しめる作品作りを心掛けているという彼に、本作の魅力やウィル自身が考えるエンターテインメントについて、そして家族について語ってもらった。
セリフ一つで、どんな人でも観たくなる映画!
Q:あなたのもとには、本当にたくさんの台本や映画の原案が送られてきていることと思います。数多くの脚本の中から本作『ハンコック』を選んだ理由を聞かせてください。
君の言う通り、本当に毎日ものすごい量の映画の脚本が送られてくるんだ。その中から、「これ!」という一本を選ぶのは大変なんだけど、いつも探しているのはビッグなアイデアだね。セリフを一つ言えば、どんな人でも観たくなる……そんな映画だよ。例えば『ハンコック』なら、“アル中のスーパーヒーロー!”(笑)。この一言を聞いただけで、人はこの映画を観てみたくなる。わかるだろ? 『アイ・アム・レジェンド』は、“地球最後の男”。すぐにでも人の興味を引き付ける。だから作品を選ぶときは、必ずコンセプトを大切にしてるんだ。
Q:その観客の期待にプレッシャーを感じることはありませんか?
もちろん! すべてがプレッシャーになるよ。これだけの作品に出演するときは、人々の期待だけじゃなく、あらゆることがプレッシャーとなりうるから、それを感じないように、なるべくそこに目を向けないようにするんだ。作品の予算が大きければ大きいほど、やっぱりプレッシャーは大きくなるものだし、それに僕は失ったり、損をするということが嫌いな人間なんだ。だから、予算が大きければ、その分ちゃんとヒットさせないといけないという責任はいつも感じているよ。
スタッフやキャストが楽しみながら作った映画は、みんなが楽しめる!
Q:それだけの責任を背負いながらも、あなたはいつもニコニコ笑顔で確実に作品をヒットさせています。その秘密は一体どこにあるのでしょう?
いつも仕事を楽しむことが一番大切なんだ。現場で、映画作りにかかわっているスタッフやキャストが楽しみながら仕事ができた映画は、必ず観客にも楽しんでもらえる映画になる。喜びは喜びを生み出すものだからね。
Q:あなたが出演する映画は、いつもそういう喜びに満ちあふれた作品ですね。ドラッグやバイオレンスをテーマにした作品よりも、エンターテインメント作品に出演するのは、あなた流のこだわりがあるのですか?
僕は、人間の良い部分にクローズアップしたいんだ。人間の悪い部分にクローズアップするとネガティブで、とても痛みを感じ、悲しみを感じる要素をテーマにした映画になる。でも、僕は人生を豊かにする映画を作りたいんだ。観客には、いつでもポジティブなメッセージを投げかけていきたい。特に子どもたちには、ネガティブなメッセージではなくて、希望に満ちあふれた未来を感じてほしいんだ。
Q:この映画の主人公ハンコックも、ポジティブな面やネガティブな面を持ち合わせていますね。
彼ももともとはとてもネガティブな要素を持った人間だった。でも、彼は人生の旅をもっと楽しく豊かにしようと奮闘する。そういう部分ってみんな持っているでしょう? ハンコックみたいに「かったり~な~。仕事したくね~な~」って部分もあると思うし、スーパーパワーではなくても、自分の現在、そして人生をプラスの方向に力づくでも持っていける特別なパワーを持っていると思うんだ。だからハンコックは全員に共通しているんだ。
僕の奥さんは、ヒーローなんだ!
Q:あなたが観客に一番楽しんでもらいたいところを教えてください。
ピーター・バーグ監督は、これまで誰も観たこともないようなアクションシーンを作り上げたと思うよ。みんなをたまげさせるようなファイトシーンも登場するから、楽しみにしているように! みんなに一番楽しんでもらいたいところはこの部分なんだけど、それは観てからのお楽しみだから、これ以上しゃべれないんだ!
Q:スーパーヒーロー並に忙しいあなただと思いますが、ハンコックのようにアル中にならずにいられるのはどうしてですか?
あはは! 人生、本当に大変だからね。つらいときなんて山ほどある。でも僕の周りには、そんなつらいことをも吹き飛ばしてくれるような強い人間がたくさんいるんだ。僕の妻のようにね(笑)。どんなつらいことが起きて僕が落ち込んでいても、笑顔で解決してくれる彼女は、まるでヒーローのようだよ!
ハリウッドで最も成功している俳優、ウィル・スミスは、ハリウッドで最も愛されている、幸せな男なのかもしれない。口を開けば家族の話になり、『幸せのちから』で共演した息子のジェイデン・クリストファー・サイア・スミスの成長を目を細めながら話し、愛する妻ジェイダ・ピンケット=スミスに心をこめた賛辞を贈る。女性たちにとって、こんな理想のだんな様はいないだろう。愛する家族に囲まれたウィルに、暗い映画は似合わない。どんな人でも楽しめる本作『ハンコック』のように、幸せに満ちたエンターテインメント作品を、これからも作り続けてもらいたい。
『ハンコック』は8月30日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開