『PLASTIC CITY プラスティック・シティ』オダギリジョー&アンソニー・ウォン 単独インタビュー
親子のように仲良くなることで、二人の関係性にリアリティーを出せた
取材・文:シネマトゥデイ
ブラジルの裏社会に生きる、男たちのきずなを描いた映画『PLASTIC CITY プラスティック・シティ』で、オダギリジョーは主人公の日系ブラジル人キリンを演じ、ポルトガル語や中国語などのセリフに挑戦した。キリンと血のつながりはなくとも、親子のような固いきずなで結ばれた男ユダを演じたのは、『インファナル・アフェア』『エグザイル/絆』のアンソニー・ウォン。オールブラジルロケで撮影された本作で、作中の役と同じように、言葉の壁を越えたきずなが生まれたというアンソニー・ウォンとオダギリから話を聞いた。
オダギリにサインを求めるアンソニー・ウォン
Q:お互いの印象を聞かせてください
オダギリジョー:アンソニーさんといえば、『インファナル・アフェア』の印象が強いです。僕のマネージャーは彼の大ファンで、お会いしたときすごく興奮して喜んでいたんです。ハリウッド俳優を見るのと同じくらい喜んでいる姿を見て、アンソニーさんはすごい人なんだと実感しました。
アンソニー・ウォン:この作品が決まったときに、友人にオダギリを知っているか聞いたことがあってね。そのとき、「彼は素晴らしい俳優だよ。彼が最近出演した『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』という作品は素晴らしかった」って言われたんだ。それですぐにその作品を観ようと思ったんだけど、「この映画は、(母を病気で亡くした)君の人生とかぶる部分があって、つら過ぎるだろうから観ない方がいいよ」と止められてしまったんだ。だから実はまだ観てないんだよね。
オダギリジョー:光栄ですね。そういえば、アンソニーさんに初めてお会いした日、僕があいさつした後に、彼は『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』のDVDを持って、サインくれって言ってくれたんですよね(笑)。
アンソニー・ウォン:オダギリのマネージャーが僕のファンだと言うけど、僕はオダギリのファンなんだ!
仲良くなったきっかけは将棋
Q:血のつながりはなくても、親子のように固いきずなで結ばれていたキリンとユダでしたが、実際お二人の関係はどうでしたか?
オダギリジョー:僕は人見知りで、共演者の方々に、あまり自分から歩み寄ることもなくて、仲良くならずに終わっていく現場も多いんです。でもアンソニーさんは、役者同士のコミュニケーションを大切にされる方で、とても助けられました。
アンソニー・ウォン:僕もオダギリと同じく人見知りで、人とコミュニケーションをとるのが上手ではないんだ。でも、作品で親子や夫婦のように関係の深い役をやるとき、共演者とは事前にある程度のコミュニケーションを取るようにしているんだ。そうすると、撮影のときに自分の役に入り込みやすくなるからね。あくまで僕の持論なんだけど。
オダギリジョー:人見知りには見えないですけどね(笑)。
Q:仲良くなったきっかけは?
オダギリジョー:きっかけは、アンソニーさんが将棋を習いたいと言っていたことです。僕のマネージャーに将棋を買ってきてもらって、やり方を教えてあげました。
コミュニケーションを通じて築けたきずな
Q:お二人のきずなの強さは、作品にも自然と出ていましたね。
オダギリジョー:アンソニーさんは、普段の生活から関係をちゃんと築いてくれる人です。コミュニケーションを通して、演技につながるヒントを一つ一つ与えてくださったので、自然に役の上での関係が出来上がっていきました。アンソニーさんから進んでコミュニケーションを取ろうとしてくれたからこそ、僕たちはいい関係が築けたと思います。
アンソニー・ウォン:親子のような固いきずなを表現できたのは、やっぱりぼくらがいい俳優だからだと思う(笑)。芝居は、目線や、仕草が行ったり来たりするもの。こちらが投げて、あちらが受けて、また投げ返されて……。そういうキャッチボールができるのは、ぼくらがいい役者だからなのさ!
オダギリジョー:もしアンソニーさんが、ぼくと同じような(人見知りの)タイプだとしたら、ほとんどしゃべらないまま3か月終わっていたと思います。
アンソニー・ウォン:ほかの人は、役者は自分の中にあるものを隠して演じるというけど、ぼくはそう思わない。憎しみに燃える役なら、やっぱり目の中に自然と怒りや憎しみが芽生えなければならないと思う。でもそれはリアルを追求しているからこそ、出てくるものなんだ。だから、オダギリとは親子のように仲良くなることで、二人の関係性にリアリティーを出せたと思う。
復讐(ふくしゅう)について
Q:本作には、大事な人を傷つけられた男たちの復讐(ふくしゅう)シーンが出てきますが、お二人は復讐(ふくしゅう)をするタイプですか?
オダギリジョー:復讐(ふくしゅう)は……するタイプですね。結構腹黒いので(笑)。でも立場上あまり目立つことはできないので、やり方は考えなきゃいけないですけど(笑)。
アンソニー・ウォン:(オダギリに)君はもう、腹黒さが見え見えだよ(笑)! 僕は、進んで復讐(ふくしゅう)するタイプではないね。どちらかというとチャンスを待って、相手が痛い目にあった瞬間に「ざまあみろ!」というタイプだよ。
アンソニー・ウォンが吸っていたタバコのパッケージにあった「SMOKING KILLS!」というメッセージを見て「すごいよね」と笑い合う二人は、取材が始まる前から、親子か兄弟のような仲の良い雰囲気を見せてくれた。二人の会話はすべて英語。撮影中も英語は、イギリス人の父を持つアンソニー・ウォンと、留学経験のあるオダギリの共通言語となっていたそうだ。海外での活躍も多くなってきたオダギリとアンソニー・ウォンの今後の活躍に期待したい。
『PLASTIC CITY プラスティック・シティ』は、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿バルト9ほかにて公開中