『鈍獣』真木よう子 単独インタビュー
何だか面白かったり残酷だったりする
取材・文:平野敦子 写真:高野広美
もともとは舞台劇だった脚本を宮藤官九郎が映画用に脚本を練り直し、CM界の異才、細野ひで晃が初めてメガホンを取った『鈍獣』。ある小説家の失踪(しっそう)事件をきっかけに迷走する超個性的なメンバーたちの中で、一番まともに見える静をエンジン全開で演じ切った真木よう子。役の立場上大はしゃぎもできず、ちょっぴり寂しい思いをしながらも楽しかったという現場での裏話や、幼なじみとの思い出などについて明かしてくれた。
自分でもどんなシーンになるのかワクワク
Q:まずは、初めて脚本を読まれたときの感想を聞かせてください。
宮藤さんの作品は映画館やDVDで拝見していましたが、脚本を担当された作品に出演するのは初めてで、単純にすごく面白そうな作品だ……と思ったのと同時に、映像になってみなければわからないという、何とも言えない不思議な感じを受けたのが第一印象でした。
Q:個性的なキャラクターぞろいですが、ご自分が演じられたキャラ以外でお気に入りは誰ですか?
無理だとはわかっていますがノラをやってみたかったですね(笑)。何だか憎めない天然のキャラクターでかわいらしくて。でも、衣装とかも、とっかえひっかえしなくてはならないので、佐津川(愛美)さんも衣装さんも大変そうでした。
Q:オープニングで静が鼻血を出すシーンも強烈でしたが、あのシーンの撮影は楽しかったですか?
楽しかったですね! 鼻血のシーンはCGを使っていたり、メガネが割れたりする部分も合成が入っていたので、自分でもどんなシーンになるのかワクワクしていました。ああいった、本当にコミカルなシーンを撮るのも初めてだったので、一体どんな風になるんだろう? と思っていたんです。自分でも観ていてちょっと笑いそうになりました(笑)。
ムードメーカーのユースケ・サンタマリア
Q:全体を通して、とてもテンションの高い作品ですが、撮影現場もノリノリでしたか?
楽しい現場だったんですが、そんなにワーワーしゃべっていたりとか、ギャーギャー騒いでいたという感じではないです。ただ、皆さん仲良くやっていましたね。
Q:あのメンバーの中で誰が一番にぎやかでしたか?
よくしゃべっていたのはユースケさんですね(笑)。でも、この映画の岡本のようにずっとしゃべっていたりはしないんですが、いつも何か面白いことをして、現場を和ませるムードメーカー的な存在でした。
Q:もし自分が凸(でこ)やんこと凸川のようになかなか死なない人間だったらどうしますか?
どうするって……どうするんだろう(笑)!? 彼はいいキャラですよね。自分が友だちに殺されると気付いてしまったらそれはそれで傷つくかもしれないけれど、そこまで友情を信じることができて、友だちを大切にするというのはいいキャラですよ。
Q:では、真木さんにとって友情とはどのようなものですか?
中学校のときの友だちで何人かいますね。やはり小さいころ……といっても小学校、中学校ですが、ずっと一緒だった友だちがいて、今でも信頼関係が強い気がしますね。わたしは小、中は割と活発な子でした(笑)。
Q:幼なじみとの強烈な思い出があったら教えてください。
う~ん……雪玉を投げて遊んだりしていました。雪の日に何だかイライラしていたので、何となく理由もなくぶつけていました(笑)。
付き合うのならば絶対に凸やん!
Q:今回真木さんが演じられた静は傍観者のような立場ですが、自分も彼らの仲間に入ってワイワイ騒ぎたいとは思いませんでしたか?
それは演じていてしょっちゅう思っていました(笑)! 実はこういう静のような、どちらかというとお客さん目線的役柄というのは、本当は苦手で……。撮影しながら個性的なキャラクターはそれはそれでとても大変だとわかってはいたんですが、わたしも一緒になっておちゃらけてみたいな~とずっと思っていました(笑)。
Q:凸川は小説家の役ですが、もしご自分が小説家だったら、どのような物語を書きたいですか?
ノンフィクションかな……? あ、違います! フィクションです。普段あまり本は読まない方なんですが、もし書くんだったら冒険ものとかファンタジーものがいいですね。
Q:真木さんおススメのお気に入りのシーンがあったら教えてください。
そうですね、やはり冒頭のシーンが結構大変だったので……。雨に打たれるシーンとか、いろいろとわたしの大変なシーンって冒頭に出てくるんですよ。人にぶつかってメガネが割れたりとか、面白いシーンも出てくるので。わたしのシーンとしては最初の方をちょっと見逃さないでもらいたいですね。作品全体を通していえば、いろいろ面白いシーンもあるんですが、最後のクライマックスのシーンは特に撮影段階からお気に入りです(笑)。
Q:真木さんなら、この映画に出てくる凸川、江田、岡本のうち誰と付き合いたいですか?
凸やんかな(笑)? ちょっと江田と岡本というのは激しいというか……怖いので。
Q:最後に真木よう子流『鈍獣』の楽しみ方を聞かせてください。
独特な世界観で、観終わった後にも何だか引きずり込まれているような気持ちになります。きっと皆さん本当に今までにないような感覚で楽しめる映画だと思いますので、ぜひ観てください!
クールビューティーというイメージの真木だが、実はお笑いも大好きなので、コメディーにもどんどん挑戦したいと話してくれた。『鈍獣』はコミカルな演技の本格的な初挑戦になるが、作品同様これまで見たことのないコメディエンヌ・真木の姿が楽しめるのもファンにとってはうれしいところだ。電撃婚、おめでたを経て、女優として、そして女性として美しく輝き続けるであろう彼女の活躍を温かく見守っていきたい。
『鈍獣』は5月16日よりシネクイントほかにて全国公開