『ターミネーター4』クリスチャン・ベイル 単独インタビュー
自分で運命を作って、切り開いていかなきゃいけない
取材・文:シネマトゥデイ 写真:秋山泰彦
「アイル・ビー・バック」を合言葉に、アーノルド・シュワルツェネッガーを一躍アクションスターにした映画『ターミネーター』シリーズ最新作が公開される。映画『チャーリーズ・エンジェル』シリーズのマックGを監督に迎え、物語は機械が人類を支配する2018年を舞台に始まる。本作で、ヒロイン、サラ・コナーの遺志を継いだ息子ジョン・コナーを演じるのは、映画『ダークナイト』でバットマンを演じたクリスチャン・ベイル。自らもターミネーターファンだという彼に、作品への思いを語ってもらった。
『ターミネーター』の大ファンだった子ども時代
Q:オリジナルの映画『ターミネーター』が公開されたころは、まだ子どもでしたよね? 最初に映画を観たときのことは覚えていますか?
覚えているよ。僕は当時、10歳だったんだけど、映画館で観たわけじゃなかったんだ。友だちの家で、みんなでビデオを借りて観たんだ。すごく興奮したのを今でも覚えているよ。それに、とても楽しめたし、今までにないタイプの映画だったから、一瞬で好きになったね。あのとき主演していたのは、もちろんアーノルド・シュワルツェネガーだったし、彼といえば超マッチョの先駆者的存在で、後にいろんな人が彼のまねをしたくらいだったからね。彼の“人間ロボット”役は、本当に最高だったと思うよ!
Q:そのころ、自分がジョン・コナーを演じることを想像しましたか?
いやいや全然! まさか自分がこの作品に、俳優としてかかわれるとは想像したこともないよ。今回も、映画『ターミネーター』シリーズに新たな第1章が始まることを聞いて驚いたけど、まさか自分がジョン・コナーを演じることになるなんて、思いもしなかったよ!
変えられない運命はないというテーマ
Q:役作りの上で、過去のシリーズを参考にした部分はありましたか?
これまでのシリーズで描かれてきた世界観を、忠実に今回の作品に反映したかったんだ。それは、監督のマックGとも最初に話したよ。ジョンに関しては、映画『ターミネーター2』を観ればわかるけど、子どもの彼がATMをハッキングするシーンがあっただろ? ああいう彼の知的でありながらも、ちょっと不良な部分を自分の役作りに取り入れてみたよ。それに加えて彼は、ちょっと正気じゃない母親のもとで成長して軍人になった。でも彼自身、自分が反政府組織のリーダーになる運命を知らずにいるんだ。だから、まだリーダーには成り切れていない彼の葛藤(かっとう)を描きたかったんだよ。
Q:本作でのあなたが演じたジョンは、ヒーローでありながら常に将来について悩み、混乱していました。まさにリーダーになる前の、未熟さとの葛藤(かっとう)がにじみ出ていたと思うのですが、どうやってあの深いキャラクターを作り上げたんですか?
ベースになるものは自然とあったんだと思う。審判の日から、人々はいろいろな意味で傷ついて変わっていった。彼の運命もそうだけど、この作品で描かれている重要なテーマが「変えられない運命はない」ってことなんだ。自分で運命を作って、切り開いていかなきゃいけない。運命なんてものは、一瞬で変えることができる。それをこの映画で伝えたかったんだ。
Q:とても印象的なキャラクターとして、マーカス・ライトというキャラクターが出てきますね。彼との関係は、まさにジョンの心の中を表しているようでした。
そうだね。彼は人間と機械のハーフなんだ。彼に対して葛藤(かっとう)するジョンと同じように、マーカスもまた、人間と機械のハーフであることの心の葛藤(かっとう)を持っている。ジョンにしてみればマーカスはライバルであり、とても重要な存在なんだ。
オールヌードの最高にクールなロボットが登場?
Q:今回の作品にはかっこいいロボットがたくさん登場しました。世界中の男の子たちが、興奮するでしょうね!
男の子や男性だけじゃなく、女の子や女性にも興奮して楽しんでもらえると思うよ。オールヌードで、あの最高にクールなロボットも出てきちゃうしね(笑)。
Q:クールなロボットたちと一緒に仕事をするのはどうでした?
すごく楽しかったよ! 前作からの、旧型ロボットもそうだけど、今回の作品に合わせて作られたニュータイプのモデルもどれも素晴らしくて、細部までよくできているんだ。とにかく僕たち人間のストーリーだけじゃなく、ロボットとのアクションシーンをちゃんと大きいスクリーンで楽しんでもらうためにも、絶対に映画館で観てほしいね!
Q:今回の現場で、最も楽しめたシーンは?
そうだな……、やっぱり挙げるならシュワルツェネッガーとのシーンかな。彼はターミネーターシリーズから切っても切れない人物だから、この作品にこういう形で出てくれたことは素晴らしいと思うよ。しかも何がいいって、彼はただ電話で自分の写真を使うのを許可するだけで済んだから、彼の州知事としての大事な仕事を削らずに出演できたことだね(笑)。
100パーセント役柄に入り込むタイプ
Q:あなたはジョンを見事に演じ切ってくれました。演技派といわれているあなたですが、その才能は生まれつきなのでしょうか?
そう言ってもらうのはとてもうれしいんだけど、どうなんだろう? 僕は、子どものころ、よく引っ越しをしたから学校がよく変わっていたんだ。そのたびに、その学校に合うように、自分の性格も変えていたんだよね。おとなしい子どもだったときもあるし、みんなと一緒にふざけるような子にもなれた。自分が今、どんな役柄にも成り切れるのは、そのときに身に付けた技かもしれないな(笑)。
Q:ご自身は何パーセント役柄に反映されているんでしょうか?
1パーセントも入っていないことを祈るよ。俳優として僕は1パーセントも役に自身を存在させたくないんだ。完全に自分を消して、100パーセント役柄に入り込むタイプなんだよね。
Q:今回は未来のヒーロー、ジョン、この前はアメリカンコミックヒーローを演じ、正義の味方を演じることが続いていますが、映画『シャフト』や映画『アメリカン・サイコ』のときのような悪役のあなたもいいですよね。
僕も大好きだよ(笑)。いいヤツも悪いヤツも、全然違う役に挑戦することが好きなんだ。でもね、悪役は演じていて特に楽しいよ! ほかの役に比べて注目を浴びるのも簡単だしね(笑)。これは本当! 僕が悪役をやるたびに、周りのみんなは喜ぶんだよ(笑)! この前も、10歳くらいの男の子に、「『アメリカン・サイコ』でのあんた、サイコーだった!」って言われてさ。困っちゃったよ(笑)。
自ら「ポップコーン片手に気軽に観てよ!」と言いながら、クリスチャンが映画『ターミネーター4』に懸けた熱意はハンパなものではない。それはインタビューからもひしひしと伝わってきた。クリスチャンという俳優は、自分に与えられた役柄に、200パーセントの熱意で取り組んでいるのだろう。だからこそ、作品への思いも熱い。現代に生きる、ハリウッド一番の役者バカと呼ばれているクリスチャンの神髄が見えたような気がした。
『ターミネーター4』は6月13日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開