『ボルト』佐々木蔵之介・江角マキコ・天野ひろゆき インタビュー
最後は役と離れることが辛くなってしまった
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
映画『トイ・ストーリー』シリーズや映画『ウォーリー』などで知られるヒットメーカー、ジョン・ラセターが指揮を執り、ディズニーアニメ映画の最新作を創り上げた。テレビの世界を現実だと信じているスター犬の冒険を描いた映画『ボルト』は、ユーモアと感動に満ちたハートウォーミング・アドベンチャー。本作で主人公ボルトの日本語吹き替えを担当した佐々木蔵之介と、ボルトに現実の厳しさを教える野良猫ミトンズ役の江角マキコ、そして、ボルトにあこがれるハムスターのライノ役の天野ひろゆきが、作品について熱く語ってくれた。
佐々木蔵之介の笑顔はボルトにそっくり?
Q:日本語吹き替えのお話を聞いたときのお気持ちは?
佐々木:とにかく光栄でした! 僕がボルトのようなかわいい役をやっていいのかって思いましたけど、オリジナルをジョン・トラヴォルタさんがやっていらっしゃるんで、まぁいいのかと(笑)。
天野:ボルトがゴハンをもらうときの笑顔なんか、佐々木さんの表情にかなり近いと思いますよ!僕も何かあげちゃおうって思うくらい、佐々木さんの笑顔はカワイイです(笑)。
江角:そんな天野さんも、ライノの声にピッタリでびっくりしました!
天野:あのコロっとした体型も僕と似ていますしね~(笑)。
Q:ミトンズ役の江角さんは、オリジナル版のスージー・エスマンさんと声の雰囲気が似ていますね。
江角:本当ですか! わたしは、スージーさんがすごく自然で大人っぽい雰囲気を出していらっしゃるから、最初はプレッシャーがあったんです。だからオリジナルを意識しないで、わたしなりのミトンズをやろうと思っていたんですけど、実際は難しかったですね。初めはリップを合わせることに神経がいってしまいますし。でも、やっているうちにどんどん気持ちが入っていって、最後は役と離れることがつらくなってしまいました。
Q:佐々木さんと天野さんも、アフレコでは苦労されましたか?
佐々木:僕も最初はリップを合わせるのが大変でしたけど、合わせるのではなくて素直にボルトを体現したいと思うようになってからは、苦労を感じなくなりましたね。撮り終えた後に、もう一度最初からやりたいって思ったくらい、役に愛着を覚えました。
天野:僕がやったライノは、オリジナル版の声優さん(マーク・ウォルトン)がかなりテンション高めで、半分はアドリブなんじゃないかと思うくらい鼻歌がいっぱい入っているんですよ。「トゥットゥルル~♪」とか(笑)。そこがすごくやりづらかったですね。歌うのは難しいんだけど、楽しそうにやらなきゃいけないので、かなり苦労しました。
アフレコ中に涙ぐんでしまった場面も……
Q:日本語版を観る方に、ぜひチェックしてほしいと思う場面やセリフは?
佐々木:ボルトのシーンで一番いいと思ったのは、彼がスーパーヒーローとして敵と戦う場面ですね。とにかくカッコイイ!
天野:映画の冒頭で大活躍するんですよね! 実はテレビ撮影なんだけど。
佐々木:あの場面は、自分がヒーロー気分になれて、一気に心を奪われました。ちなみに、僕のセリフはまったくないんですけど(笑)。
江角:全体的に素晴らしいんですけど、わたしがやったミトンズでいうと、「実は昔、人間に飼われていたことがあるの」って告白するシーンですね。アフレコしているときも涙が出そうになっちゃって……。
天野:江角さん、今も泣いちゃっていますよ!
江角:本当に、意外なほど気持ちが入ってしまいました。現実にも、人間の勝手で悲しい思いをしている動物がいるんですよね。言葉がしゃべれないだけで、動物にも人間と同じ感情があるんだということを、すごく感じました。
Q:天野さんが担当したライノも、名ゼリフがたくさんありますよね。
天野:ライノは、ボルトやミトンズと絡むシーンが多いんですよ。ボルトが、本当の自分はヒーローなんかじゃないんだと気付いて自信をなくしたときに、ライノが力強く勇気付けるところとか……。僕は、自分にも言いきかせる感じでセリフを言ったんですけど、あれは本当にいいシーンでした。
佐々木:うん、すごく良かったよね!
天野:立ち去ったボルトを追いかけたいのに強がってしまうミトンズの前で、ライノが当たり前のようにボルトを追いかけていくところとか。ま、自分のシーンばっかりなんですけど(笑)。でも、ライノは本当にまっすぐで、一番ぶれていないキャラクターなんじゃないかな? そのまっすぐさが自分にはないだけに、観ていて気持ちが良くって。
3人の間に生まれたキズナとは?
Q:ボルトは、テレビの世界と現実とのギャップに悩みますが、皆さんも何かのギャップにショックを受けたことはありますか?
天野:今回、佐々木さんと江角さんとは別々にアフレコをしたんですけど、お二人と仲間を演じているうちに、すっかり本当の仲間のような気になっていたんです。でも、実際に3人で会ってみたら、役者さんとお笑いとの間にラインがしっかり引かれていて、現実に戻っちゃいました(笑)。
Q:もちろん冗談ですよね(笑)?
天野:冗談です(笑)。僕、ラインがあってもガンガン入っていくタイプなんで! 今日わかったんですけど、江角さんってツッコミが超うまいんですよ! 間も完ぺきだし。僕へのツッコミは、相方のウドよりも確実にうまいと思います!
江角:えー、ホント(笑)?
Q:佐々木さんと江角さんも、本作を通じて仲間意識が芽生えたのでは?
江角:そうですね。アフレコ中はお二人の声を何時間も聞かせていただいたので、現実でも仲間になれたような、深いキズナが生まれたような気がします。
天野:じゃあ、メアドを教えてもらってもいいですか?
江角:もちろんですよ!
天野:マジすか! 取材中に言ってみるもんですねぇ(笑)。でも、取材が終わった途端にラインを引くのだけはやめてくださいね(笑)!
佐々木・江角:(爆笑)
佐々木:でも、映画は確実に残っていくものですからね。今回ご一緒した江角さんと天野さんとは、本当に同志というような感じがします。
天野:僕はすでに、気持ちの中で“ショムニ”で働いているような気分です。僕は常にお二人と一緒です(笑)!
まずは身内に観ろ! と言いたい作品
Q:これから映画を観る方に、皆さんから伝えたいことはありますか?
佐々木:この映画は、ボルトが悩んでいるときにライノが励ましてくれたり、ミトンズが助けてくれたり、仲間の大切さを教えてくれます。そして、飼い主の愛情をひたむきに信じるボルトの姿に、信じる心の尊さを感じてもらえるはずです。ぜひ、大切な人と一緒に観てほしいですね。
江角:わたしには4歳の子どもがいるんですけど、信じることや、あきらめないことなど、子どもたちに伝えたいメッセージがたくさん詰まっている作品です。実は、子どもに伝えたいことって、大人が忘れかけていることだったりするんですよね。わたしも心が洗われてすごく感動したので、大人の方にも観てほしいです。
天野:この間バラエティー番組で、高いところからつるされて缶に突っ込んでいくというギャグをやったんですけど、親から「いつまであんなことやってんだ!?」って言われちゃったんです(笑)。そんな親が、グッとくるような仕事をしたいと思っていた矢先に、今回のお話をいただきまして……。
江角:良かったね~!
天野:アニキが結婚して、甥(おい)っ子と姪(めい)っ子もいるので、まずは身内に観ろ! と言いたいです。絶対に僕の評判が上がると思うんですよ(笑)。本当に優しい気持ちになれるし、大切なことを説教くさくなく教えてくれて、しかもグラフィックだけ観てもスゴイ!
佐々木:そうそう、映像も素晴らしいよね!
江角:クオリティーが高い!
天野:スピード感があって、音楽もすごく優しくて、いいことずくめの映画ですので、皆さん観て損はないですよ!
終始ご機嫌な様子の佐々木、取材中に涙ぐんでしまうほど感情豊かな江角、そして、2人の間で絶妙なボケをかます天野。この日、初めて顔を会わせたという3人だが、そうは思えないほどの盛り上がりを見せていた。作品への愛着が、彼らを強く結び付けたのだろう。そんな『ボルト』は、最高質のアニメーションといい、心温まるストーリーといい、天野が誇らしく語るのも納得の出来栄え。特に、ボルトの愛らしいしぐさやフサフサの質感は、素晴らしいの一言に尽きる。犬好きはもちろん、そうでない人も確実に楽しめる、上質のエンターテインメントが誕生した。
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『ボルト』は8月1日より全国公開