『グッド・バッド・ウィアード』イ・ビョンホン&チョン・ウソン 単独インタビュー
俳優という仕事は、掘れば掘るほどいろんな宝物が出てくる
取材・文:斉藤由紀子 写真:尾藤能暢
悪党たちが荒野を馬で疾走し、ド派手なガン・ファイトを繰り広げる、アジア初の本格ウエスタンとして話題の『グッド・バッド・ウィアード』は、冷酷なギャングのボス、孤高の賞金ハンター、間抜けなコソ泥の3人が、宝の地図を奪い合う痛快なアクション活劇。CG に頼らないリアルなアクションが見どころの本作で、ギャングのパク・チャンイを演じたイ・ビョンホンと、賞金ハンターのパク・ドウォンにふんしたチョン・ウソンが、撮影の裏話やお互いについて思うことなどを明かしてくれた。
東洋ならではのアクション・シーンに大満足!
Q:とにかくアクションに目を奪われますが、ご自身のアクション・シーンで、われながらスゴイ! と思ったのはどの場面ですか?
ビョンホン:中心人物の3人が、初めて顔を突き合わす闇市のシーンですね。コソ泥のテグが可愛がっている弟分を、自分がメチャメチャに痛めつけるんですけど、ギャングのボスであるチャンイの性格がよく出ているなと思ったんです。チャンイにとって、人を痛めつけたり殺したりすることは、ひとつの娯楽のようなものだったんじゃないでしょうか。アクションだけでなく、チャンイの残忍な性格そのものをよく表したシーンだと思います。
ウソン:僕も闇市のロープ・アクションが気に入っています。自分が演じたドウォンという役は、衣装もカウボーイスタイルで西洋のガンマンというイメージがありますが、あのシーンを観ると、東洋で作ったウエスタンだということを実感してもらえると思います。今までになかったアジアならではのウエスタン・アクションが展開されているので、ぜひ観てもらいたいですね。
Q:クライマックスの大追走劇は中国でロケされたそうですね。撮影ではかなり苦労されたのでは?
ビョンホン:馬に乗って追走するシーンを撮影していたとき、砂嵐に遭遇してしまったんですよ! よく晴れた日だったのに、遠くから黒い物体が近づいてきたと思ったら一瞬で何も見えなくなってしまって、本当にビックリしました。しかも、40度を超える灼熱の中での撮影だったので、かなり苦労しましたね。
ウソン:僕も馬に乗るシーンでは苦労しました! 中国の現場で初めてドウォンの愛馬という設定の馬に乗ったんですけど、もともとイギリスの競走馬だったらしくて、とにかく気性が激しいんです。コントロールするのにものすごく力を使ったので、撮影が終わった後は足がガクガクでした(笑)。
今回の共演で、改めてお互いをリスペクト
Q:本作で共演されて、お互いをどう思いましたか?
ウソン:ビョンホンさんとは、15年ほど前にも韓国ドラマの「アスファルトの男」という作品で共演しているんです。兄弟の役だったので、今回の撮影よりも一緒にいる時間が長かったんですが、そのころの僕はまだ新人で、ビョンホンさんの芝居をちゃんと見ている余裕がなかったんですよね。本作で改めて共演させていただいて、チャンイという悪役をディテールにもこだわって演じられているのを目の当たりにし、とても大きな刺激を受けました。
ビョンホン:映画を観ればわかると思いますが、ウソンは本当に危険なシーンが多かったんですよ。もちろん、みんながいろんなアクションに挑戦しているんですけど、特にウソンは過酷な状況の中でアクションをすることが多くて。でも、彼はスタントマンを一切頼らずに、すべてのアクションを自分でやり遂げました。演技に集中していたせいなのか、自分の体のことなんて全然考えていないようでしたね(笑)。そんなウソンから、俳優として学ぶべきところがたくさんありました。
Q:ウソンさんは撮影中におケガなどされませんでしたか?
ウソン:実は、手首を骨折してしまったんです。先ほどお話しした闇市のシーンは、本来ならばギプスをしていなければいけなかったんですけど、ギプスが衣装からはみ出してしまうので、そのままの状態で撮影しました。そんなこともあって、あの場面のロープ・アクションは印象に残っているんです。
ビョンホン:ウソンの役者魂は心から尊敬しますけど、もっと自分の体をいたわったほうがいいのではないかと思います(笑)。
ビョンホンとウソンにとっての宝物とは……?
Q:もしもこの映画の時代に生まれていたら、ギャング、賞金ハンター、コソ泥、どの人生を選びますか?
ウソン:そうですね……ギャングにも賞金ハンターにもなってみたいかな。でも、現実的に言ってしまうと、映画の中でコソ泥のテグが夢として語っていたような、「家畜を飼って自然の中でのんびりと暮らす」という、ごく普通の人生を選ぶと思います(笑)。
ビョンホン:僕も、3人の誰とも違う人生を送ると思うなぁ……。
ウソン:きっとビョンホンさんも、僕と同じように犬を飼ったり、牛を育てたりしているんじゃないですか(笑)。
ビョンホン:そうかもしれないね(笑)。
Q:本作は宝を巡るバトルを描いていますが、ご自身の一番の宝物は何だと思いますか?
ウソン:俳優という仕事そのものが宝だと思っています。この仕事って、掘れば掘るほどいろんな宝物が出てくると思うんですよね。今回の作品に出演したことも、大きな金の塊を掘り当てたような気持ちがしています。僕にとって宝のような『グッド・バッド・ウィアード』を日本のみなさんにも楽しんでもらえたらうれしいです。
ビョンホン:そういったことをあまり考えたことがなかったんですけど……これまでの人生の中で培った経験や思い出、そのすべてが自分にとっての宝物だと思います。そんなかけがえのない宝物を、これからも大切にしていきたいですね。
時折いたずらっ子のような表情を見せるビョンホンと、終始穏やかな笑みを浮かべるウソンとの2ショットは、ゴージャス! という表現がピッタリ。さすが、アジアを代表するトップスターである。彼らが体当たりのアクションに挑んだ『グッド・バッド・ウィアード』は、全編が真剣勝負の迫力にあふれ、VFX超大作にも引けを取らない怒とうのスペクタクルに圧倒される。クレイジーな悪役を熱演したビョンホンの、ゾクッとするようなキラー・スマイルも見逃せない!
映画『グッド・バッド・ウィアード』は新宿バルト9、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかにて全国公開中