『わたし出すわ』小雪、黒谷友香 単独インタビュー
家族に恩返しができるようになったのは、うれしいこと
取材・文:平野敦子 写真:尾藤能暢
映画『間宮兄弟』『椿三十郎』などのベテラン、森田芳光監督が映画『(ハル)』以来、13年ぶりにオリジナル脚本で挑んだ映画『わたし出すわ』。今作ではある日、故郷に戻って来た女性が高校時代の友人たちの夢や希望のために大金をそっと差し出すという大人向けファンタジーが展開する。莫大(ばくだい)な資金を手にしながらも、どこか寂しげなヒロインの摩耶をクールに演じた小雪と、その好意を受け取ってしまう同級生のサキを演じた黒谷友香が、自分流上手なお金の使い方や、函館での撮影秘話などについて語ってくれた。
つかみどころのない主人公に苦労!
Q:これは監督が、女性が支払いの際に「わたし出すわ」と言っているのをモチーフにしたそうですね。
小雪:そうなんだ、知らなかった!
黒谷:それがこの映画にぴったりのタイトルになったんですね。
Q:本作でお二人は、それぞれ演じられた役にはすんなりと入っていけましたか?
黒谷:わたしはサキと全然違う性格なので、それが逆に新鮮でしたね。サキはわかりやすいものやお金に価値を見い出したりするところもあるんですが、素直でかわいらしい女性なんです。今まであまりやったことのない役だったので、演じていてとても楽しかったですね。
小雪:わたしも摩耶とは全然違うな。わたしが演じた摩耶は、物欲とかまったくないタイプですし、とても中性的な雰囲気も持っていて、でも、見た目はすごく女性的なんですよね。ある種「こういうキャラクターです」というようなものを表に出さないように演じたので、今回はすごく悩みましたね。
Q:たしかに摩耶はつかみどころのない不思議な女性でしたね。
小雪:なんだかこう浮遊しているような感じで、物語のナビゲーターのような存在にならなければならなかったので、結構大変でしたね。性格の強さとか、アクのようなものはハッキリ出さずに演じました。
もし大金を手にしたら……
Q:では、この映画の主人公の摩耶のように一度に大金を手にしたら何をしたいですか?
小雪:大金の額がどれぐらいかによって違いますよね。どれぐらいが大金だと思うかにもよって話は変わってくると思います。
Q:では、お二人にとって大金とは、ずばりいくらなのでしょう?
小雪:わたしは億単位! なんとなく1億という単位ってすごく大きそうでしょう? 小学生のころは1万円がとても大きいお金だったんだけれど、社会人になった今なら、1万円という額なら自分で稼げるようになったわけだし。じゃあ、1千万円ならどうかというと、これぐらいかな……ってなんとなく想像がつきそうじゃない?
黒谷:それはずいぶん難しい質問ですね。よく映画とかで見かけるジュラルミンのケースに入っているお金って一体いくらぐらいなんですかね? 重そうだし、あれが1億円ぐらいならすごいですね。ジャンボ宝くじみたい!
小雪:ジャンボ宝くじも3億円とかなんだし、やはり億がつくと大金なんだと思いますよ。
Q:では、そのお金を何に使いたいですか?
黒谷:きっと1回じゃ使い切れないですね。わたしはガーデニングが趣味なので、木を買ったりとか。あと、乗馬ももう10年ぐらいやっているので、じつは馬も欲しいんですよね。オリンピックに出場したような馬だとやはり1億円ぐらいするんですよ。
小雪:オリンピックに出場した馬を買いたいの(笑)? でも、ずっと勝ってきた馬ならいいよね。わたしは3億円だったらまず親に家を買って、あと残りは寄付するかな。なんだかそういう風に手に入れたお金は、きれいさっぱり使い切ってしまうのがいいかなと思って。
黒谷:なんだか劇中の摩耶とサキの関係そのままというか……。
小雪:いいのよ、サキにはサキの考えがあるんだから。じゃあ、わたしは馬を買うかなって感じでいいのよ(笑)!
今一番欲しいものは玄関マット!?
Q:さくらは摩耶に「何でも買ってあげる」と言われて、量販店で小型冷蔵庫を買ってもらいますが、「何でも買ってあげるよ」と言われたら何を買ってもらいますか?
小雪:そういう風に言われたら何もいらないかも(笑)。
黒谷:何でもいいんですよね!? じゃあ、わたしは玄関マットが欲しいです! この間買おうと思ってやめたから(笑)。高いものじゃなくてもいいから、ちょっと変わった玄関マットがいいな。
小雪:玄関になんでマットがいるの?
黒谷:乗馬の後とか泥が付くから。
小雪:あぁ、乗馬用のね! それはわたしも欲しいかも。
Q:函館での撮影はいかがでしたか?
小雪:自然がいっぱいあるし、すごく楽しくてここが故郷だったらいいなと思いました。わたしたち一緒に函館ツアーにも行ったよね?
黒谷:うん、行った、行った。本当にすごくきれいな街だったので、1日車に乗って教会とか外国人墓地とかに行って、フレンチレストランでランチしたりしましたね。乗馬ができる場所もあったんですが、わたしは函館と東京を行ったり来たりしていたので、結局一緒に乗馬には行けなかったんですよね。
小雪:友香ちゃんは乗馬がとても上手なんですが、わたしは最近始めたばかりで、乗馬の話をしたりして楽しかったです。本当に一緒に乗馬に行ければ良かったね!
小雪&友香版鶴の恩返し
Q:ある種「現代版鶴の恩返し」のような話にも思えたんですが、誰か恩返しをしたいと思う人はいますか?
黒谷:やはり両親とか家族ですね。
小雪:今わたしの両親は初めてハワイに行ってるんですが、全部わたしがツアーを組んで予約して、ホテルもゴルフ場もレストランも予約して、フルアテンドでコーディネートして行ってるんです。まったく便りがないということはきっと楽しいんだろうなって思います(笑)。自分がそういうことができるようになれてうれしいですね。
Q:では、最後にお二人にとってお金とは?
小雪:なさすぎても困るし、なくてはならないもの!
黒谷:そりゃそうだ! 本当はお金って怖いものかもしれませんね。いいように使うこともできるし、悪い方にも変えられるし。お金こそ摩耶そのものという感じがする。巨額過ぎたらイメージわかないし、使い方ひとつでどうにでもなるような気がします。
今回高校時代の友人同士という役柄を演じた小雪と黒谷友香。二人の相性はぴったりで、ちょっぴり姉御肌の小雪が大人の発言をすれば、隣で黒谷が絶妙の合いの手を入れ、黒谷のキュートな発言に小雪がナイスツッコミを入れ……と、終始和やかな空気が漂っていた。タイプの違う美女二人が、自分とはまったくかけ離れた役柄を演じ、とことんまでお金や人生について探求した究極の本作を観ながら、たまにはじっくりと自分の人生について思いを巡らせてみよう!
映画『わたし出すわ』は10月31日より恵比寿ガーデンシネマ、新宿バルト9、銀座テアトルシネマほかにて全国公開