『サイドウェイズ』小日向文世、生瀬勝久、鈴木京香、菊地凛子 単独インタビュー
ワインを飲むシーンは、仕事を忘れて思いっきりエンジョイしました!
取材・文:内田涼 写真:尾藤能暢
第77回アカデミー賞脚色賞に輝いたアレクサンダー・ペイン監督の映画『サイドウェイ』を、海外スタッフのもと、小日向文世と生瀬勝久の主演で日本版として生まれ変わらせた映画『サイドウェイズ』。全編カリフォルニアを舞台に、大人のための小粋なラブコメディーをもり立てる4人の実力派俳優、小日向と生瀬、そして鈴木京香と菊地凛子が「ワインを飲みまくった」(小日向談)という撮影現場のウラ話を語ってくれた。作品そのままに、楽しく絶妙な4人の掛け合いをご覧あれ。
英語が話せないから、ニコニコするしかなかった?
Q:約1か月間行われた海外ロケの感想を教えてください。
小日向:もともと外国に行くのが好きじゃないんで、実は「どうしよう、1か月も日本を離れるなんて」とギリギリまで迷ったんですよ。でも現場でここにいる皆さんと顔を合わせると、思わずホッとして。たぶん、撮影現場は一番リラックスできたんじゃないかな。逆に撮影を終えて、ホテルに戻ると、誰かに英語で話し掛けられたらどうしようっていうストレスが大きくって、1週間くらい便秘になっちゃった(笑)。でも、役者人生の中でも忘れられない作品の一つになりましたね。
生瀬:海外での撮影は初めてで、周りのスタッフさんもほとんどがアメリカ人で、目新しいことばかりでしたね。しかも、日本ならいつもマネージャーがそばにいたりするんですけど、今回は一人残されて(笑)。ただ、こちらにいる皆さんのおかげで、夢のような楽しい1か月を過ごせました。今もほかの現場で、つい「去年のアメリカは、大変だったなぁ(笑)」って口癖になっているほどで。一生の思い出になりましたね。
鈴木:すべてが初めて尽くしでしたが、やっぱり楽しかったという印象が強いですね。それに海外だからこそ、ご一緒した皆さんのことがよくわかったというか。こひ(小日向)さんの優しさ、生瀬さんの行動力は現地のスタッフにもすごく伝わっていたし、凛子ちゃんはすごく(海外に)慣れていて、自然と自由にしている姿がカッコ良かったり。
小日向:カッコ良かったよね~。
鈴木:4人がそろっているとホッとしますし、皆さんからいろんなことを学ばせていただきました。とても幸せでしたね。
Q:菊地さんは皆さんより海外経験が豊富ですが、現場はいかがでしたか?
菊地:わたし自身は皆さんのおかげで、自由に振る舞うことができました。もともと末っ子でマイペースな性格なので、現場でも完全に甘えさせてもらいました(笑)。小日向さんはいつもニコニコしているし……。
小日向:英語しゃべれないし、ニコニコするしかなかったんだよ(笑)。
菊地:生瀬さんは現場ですごく積極的にスタッフとコミュニケーションを取っていましたし、京香さんはお姉ちゃんみたいに、みんなの面倒を見てくれました。
楽しい思い出ばかりのワイナリー・ピクニック
Q:4人そろって、ワイナリーでピクニックするシーンがとても印象的でした。
菊地:わたしもあのシーンばかり印象に残ってるんですよ。すごく楽しかったですよね?
生瀬:そうそう、楽しかった!
菊地:小日向さん、本物のワインを飲んじゃって。
小日向:凛子ちゃんもでしょ~。あのシーンは情景だけ撮るんで、即興で好きなように演じてくれって言われたから、セリフもなかったしね(笑)。
鈴木:監督(チェリン・グラック)がいい架け橋になってくれて、みんなリラックスしていましたね。わたし自身もワイン大好きなので、あのシーンは仕事を忘れて、思いっきりエンジョイしました。
小日向:ただピクニックに行く車中で、シンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」を歌ったじゃない。結局カットされちゃったけど(笑)、英語の歌詞歌うの苦労したなぁ。
Q:本当に楽しい現場だったんですね。ちなみにみなさんは、ワインはお好きですか?
小日向:僕たち3人(小日向、菊地、鈴木)は、ワインをよく飲んでいましたけど、生瀬さんはあまりお酒飲めないんですよね。
生瀬:僕はずっとグレープジュース(笑)。
菊地:楽しかったですよね。本当に。
演技派俳優2人が表現する“リアリティー”
Q:小日向さんはご自分が演じた、売れないシナリオライターの道雄という人物をどのように思いましたか?
小日向:いや、最初は好きになれなかったですよ、この道雄って男が。ダサいし「おれとは全然違う」って(笑)。でも、自分と重なる部分を探しながら、キャラクターに近づけていく作業はやっぱり演じていて楽しかったですね。
Q:亀山千広プロデューサーは「情けない見た目」が起用の決め手と語っていますが。
小日向:そうなの!? でも「情けない」って言われても驚かないです。僕、情けない役多いですからね、本当に。
Q:生瀬さん演じるアメリカ在住の大介は、終始オヤジギャグ連発でしたね。まさかご自分のアイデアで?
生瀬:いえ、台本通りです。20年間日本を離れているという設定なので、ギャグのセンスも古いままなんですよ。「デモもストもない」とか(笑)。最初は「これ、どうなんですかねぇ」って抵抗感もあったんですけど。もう一度言いますけど、僕が考えたものじゃないですよ(笑)!
Q:40代半ばで、いまだ人生に迷う2人の男。ズバリ、女性陣からはどんな風に見えますか?
鈴木:(小日向演じる)道雄さんは、ダサいっておっしゃっていますけど、日本男児のかたくなさを残しつつ、海外で周囲になじもうと頑張る姿はすてきだし、優しさがにじみ出ている。だから、わたしが演じた麻有子も、少しずつ、道雄さんのことが好きになっていくんだと思いました。
小日向:そこが一番心配でしたね。「この展開、リアリティーないよ」って言われちゃうと本当残念だし(笑)。
鈴木:(生瀬演じる)大介も、海外であんなに堂々と振る舞えるのがすごいなって。その仕草を、さすが生瀬さんは自然に表現なさっていましたね。
菊地:2人とも不器用な男だけど、同時にすっごくチャーミングだと思います。わたしの年齢でこんなこと言うのはおこがましいですけど。社会の中で戦っている男性が、時折見せる素直さってすてきだなと思いますね。
わずかな取材時間の中で、本当に息の合ったコンビネーションを披露してくれた4人の姿から、撮影そのものが非常に楽しく充実したものだったと実感できるインタビューだった。「オリジナルよりすてきな映画になった自信があります」と小日向。鈴木の「わたし自身、この作品には勇気づけられましたね。再スタートを切るのはいつだって遅くない。何かに迷っている人が観れば、きっと第一歩を踏み出せるはず」という言葉も印象的だった。オール海外ロケ、海外スタッフという条件の中で、日本を代表する4人の俳優たちが繰り広げる大人のラブストーリーを、ぜひ劇場に足を運んで観てほしい。
(C) 2009 Twentieth Century Fox and Fuji Television
映画『サイドウェイズ』は10月31日より全国公開