『いぬばか』スザンヌ 単独インタビュー
ワンちゃんとの信頼関係を築くのが一番大変でした
取材・文:古川祐子 写真:尾藤能暢
バラエティーやCMなど、テレビで大活躍中のスザンヌがついにスクリーンにも進出した。月刊ヤングジャンプに連載中で、単行本が現在までに19巻、累計約85万部を発行している人気コミック原作の映画『いぬばか』で、犬好きのペットショップ店員役として初主演を果たしている。さまざまな種類の犬たちの愛らしい姿が存分に楽しめると同時に、犬と人間の関わり方についても考えさせられる、心温まる作品だ。実生活でも犬を飼った経験があり、心から撮影を楽しんだというスザンヌに初主演の感想や犬への思い、今後の野望(?)まで、さまざまなことを語ってもらった。
最初は自分でいいのか不安だった
Q:映画初主演ということですが、まず感想をお願いします。
最初にオファーされたときはわたしでいいのかな、と正直不安でした。それまで映画出演どころか、演技経験もほとんどなかったので。いざ撮影に入ってからは、優しい共演者の方たちやかわいいワンちゃんたちに囲まれて、夢中でやるうちにだんだん慣れて楽しくなっていきました。撮影が終わるころにはこの映画に関わることができて本当に良かったと感じていましたね。
Q:原作は読みましたか?
はい。原作も犬が本当にかわいいし、泣けちゃうシーンがたくさんありました。原作ファンの方々をがっかりさせないように頑張ろうと思いました。
Q:監督からはどのようにアドバイスされていたのですか。
監督さんからは、初めから「こうしなさい」と言われることはありませんでした。一回自分が思うように演じてみてから、「もうちょっとこうしたほうがいいんじゃない?」とアドバイスしてくれる感じで。けっこう自由にやらせてもらいましたね。
Q:普段のバラエティーのお仕事と比べてどちらが大変でしたか?
バラエティーだと、スタジオに入ってメイクして着替えたらすぐ本番。みんなでワイワイやって終わったらまた次、という流れなんです。でも映画は台本読み、リハーサル、そして本番、という段取りの繰り返しで。それぞれ取り組む姿勢がまったく違うお仕事で、どちらが大変かというのは簡単には言えないですね。
Q:映画で主演することについて、周りの反応はいかがでしたか。
お母さんや妹は、「すごいね」「共演のワンちゃんかわいいね」と言ってくれました。Pabo(木下優樹菜、里田まい)の二人は……「(演技とか)できるの?」って心配していましたね(笑)。
ヒロインの衣装はワカメちゃん的ファッション!?
Q:ヒロインのすぐりは、スザンヌさんのキャラクターそのまんまのような印象を受けました。実際のところはどうでしょう?
すぐりとは共通点がとても多いですよ。犬好きなのはもちろん、天真爛漫(らんまん)なところ、おっちょこちょいなところも同じ。かなり似ていますね。
Q:ピンクを基調にした衣装がキュートですが、お辞儀をしたときにパンチラになってしまうシーンもありましたね!
あれは漫画と同じで、原作のすぐりも、よくパンツが見えてしまってるんですよ。「サザエさん」のワカメちゃん的な要素のある子なんです(笑)。
犬を飼うのなら一生責任を持つ覚悟で
Q:ヒロインといつも一緒にいる愛犬・るぱんと息の合った演技を見せていました。
実はあの子は、過去に一度捨てられた経験のあるワンちゃんなんです。人に対して警戒心が強いので、最初は仲良くなれるようにすごく努力しました。おもちゃを使って一緒に遊んだり、撮影以外でも一緒にいるように心がけたり。「この人は自分に害を与えない」と思ってもらえるように必死に努めていましたね。
Q:そのかいあってか、映画では本当に仲が良さそうにいつも寄り添っていますね。
ありがとうございます。最初のころは、実はポケットにチーズを入れたり、裏技を使っていたんですよ(笑)。でもだんだんと名前を呼ぶだけで来てくれるようになって。信頼されて態度が変わっていく瞬間を感じたときはすごくうれしかったですね。ワンちゃんとの関係を築くのが、この映画で一番大変だったと言えるかもしれないです。
Q:もともと犬はお好きですか?
はい。大好きです! 小さいころに飼っていましたし。だから今もすごく欲しくて、いつかもうちょっと仕事が落ち着いたら、また飼いたいと思っています。共演の前田健さんは、映画に出ていたフレンチブルドッグを、今本当にご自分のペットにしているんですよ。
Q:ワンちゃんたちとの共演で印象に残っている出来事はありますか?
ペットショップでのシーンで、大型犬が入ってきたとき、子犬たちがびっくりして興奮しちゃって収拾がつかなくなったことがありました。一度興奮し出すとなかなか収まらなくて、大変でしたね。
Q:ラストのヤマとなるドッグダンス(飼い主と愛犬がペアになってステップを踏むダンス)のシーンは圧巻ですね。
実は練習期間がすごく短いこともあって、なかなかうまくいかなくて困っていたんです。振り付けを変えようかと思っていた矢先、本番直前にわたしのパートナー役のるぱんができるようになってほっとしました。周りで踊っている方々も、本当に普段ドッグダンスをやっている方々だったので心強く、いいシーンになったと思います。
Q:この映画には、「責任を持って犬を飼うことの大切さ」などさまざまなメッセージが込められています。スザンヌさんは仕上がった作品を観てどんな風に感じましたか?
映画でも描かれていますけど、犬というのは自分より早く死んでしまう生き物なんですよね。だから今犬を飼っている人は、いなくなってしまってから後悔しないよう、一緒にいる時間を大事にしてあげてほしいです。また、これから犬を飼おうとしている人は、ちゃんと自分が一生涯責任を持つ、と決めてから飼ってほしい。映画を観てそんな思いを強く感じたし、この作品を観た方々にもそんな風に感じてもらえたらうれしいですね。
次回やりたい役は不良!
Q:今後も、映画に出演してみたいですか?
そうですね、撮影が終わったばかりの頃はそうでもなかったんですけど、今こうして取材を受けたりしているうちに、また映画への興味がわいてきました。ぜひやりたいです。
Q:だとしたら今度はどんな作品、どんな役をやりたいですか?
うーん……。何だろうな。不良役がいいですね(笑)。
Q:今回の役とは真逆な感じですね。そういうタイプの映画もお好きなんですか?
はい、好きです。映画『ドロップ』や映画『クローズZERO』シリーズも観ていますよ。「青春」という感じがいいな、と思います。
Q:最後になりますが、映画のPRメッセージを改めてお願いします。
本当に、この『いぬばか』という作品は、楽しめて、感動できるところがいっぱいあります。観終わった後はほっとして温かい気分にさせてくれる。あとは、ワンちゃんを飼っている人だったら、家に帰っていっぱい遊んであげたくなるような映画ですね。ぜひ多くの方に観てもらいたいです!
笑顔を絶やさず、とても礼儀正しいスザンヌ。こちらの質問にユーモアを交えて簡潔に答える姿に、彼女が芸能界で引っ張りだこの理由がわかるような気がした。自身も飼っていた愛犬を事故で亡くした経験を持ち、犬への思いを熱心に語るスザンヌは、人からも動物からも愛される天然キャラのヒロインとまさに重なる。そんな動物を心から愛する彼女の人柄が、スクリーンからも十分に伝わってくるはずだ。
衣裳協力
ワンピース charlotte ronson
帽子につけたリボン override
スタイリスト:おぬまともこ
ヘア&メイク:CHIHARU
映画『いぬばか』は11月21日より渋谷シアターTSUTAYAほかにて全国順次公開