『よなよなペンギン』田中麗奈 単独インタビュー
チャリーを通して、愛する者のために立ち向かう勇気を伝えたい
取材・文:阿部奈穂子 写真:秋山泰彦
テレビアニメ「銀河鉄道999」、映画『メトロポリス』のりんたろう監督が、映画『時をかける少女』などを手掛けたマッドハウス社と作り上げた、フルCGアニメ『よなよなペンギン』。第66回ヴェネチア国際映画祭で、特別招待作品として上映され話題となった本作は、夜な夜なペンギンコートを着て街を歩き回る少女・ココが、ゴブリン村の少年・チャリーと出会い、不思議な冒険を繰り広げるファンタジックストーリーだ。チャリーの声を担当した田中麗奈に、男の子の声を担当した苦労話や本作の魅力について聞いた。
チャリー役に抜てきされたのはネコ顔だから?
Q:チャリーというキャラクターを初めて観た感想は?
「チャーミングだけど、オドオドした顔」というのが第一印象です。チャリーは臆病で自分に自信のない男の子なのですが、気弱な性格が顔に表れていると思いました。
Q:チャリーはネコに似ていますよね。
そうですね。わたしもネコ顔といわれますし、妖怪でネコの役もやったことがあったので親密感を持ちました。ネコに似ているから、この役のオファーが来たのかも(笑)。
Q:女性らしい田中さんが、男の子の声を演じるとは意外でした。男の子ということで何か意識したことは?
男の子だからこうしようという考えは、あえて持たないようにしました。伸び伸びと自分が感じたままのチャリーを演じれば、自然と男の子っぽく聞こえてくるだろうと思ったんです。ただ、「キャ」とか「ワー」とか、ふとしたリアクションのときには、女の子の声に戻ってしまうので、その辺を注意して演じてみました。
Q:田中さん自身、男の子っぽい面はあるんですか?
時々、一人旅とかしちゃうんですよ。一人でチケットをとって、宿をとって。旅先で写真を撮っている姿は、女性らしくないですね(笑)。今までで一番遠いとこはアメリカのアリゾナ州に行ったことがあります。そこでネイティブアメリカンの方の家にホームステイをしました。
チャリーの頑張る姿を通して伝えたいこと
Q:りんたろう監督の印象はいかがでしたか?
すごく魅力的な方でした。温かくて優しくて……。また、本当に作品を愛していて、純粋な方なんだという印象を受けました。
Q:監督から何か要望はありましたか?
チャリーはヒロインのココに出会い、一緒に冒険していくことで徐々に変わっていきます。次第に勇気を持って、力強くなっていくのですが、その成長していく姿をしっかり演じてほしいと言われました。
Q:確かに、初めはオドオドしていたチャリーが、最後は家族や友達のために頑張る姿は感動的でした。
チャリーの姿を通して、観ている方に勇気を伝えられればうれしいです。
Q:最近、チャリーのように頑張った経験はありますか?
わたしってつい力が入り過ぎて、頑張っちゃうタイプなんです。だから、最近はそんな自分にブレーキをかけるというか、あまり頑張り過ぎず、リラックスすることを重視しています(笑)。
爆笑問題の成り切りぶりは必見!
Q:本作には七福神といった日本の伝統的なキャラクターが出てきますが、どんな風に思われましたか?
絵のタッチや色使い、劇中に出てくる街並みが外国的だと思いました。その中に、七福神など日本の文化が入るとファンタジーになるんですね。不思議な感じが作品の世界観を盛り上げているような気がします。
Q:田中さんは日本の伝統的な文化に興味はありますか?
詳しい知識はあまりないのですが、神社に行くのは好きです。境内に入ったときのあのひんやりする空気が心地良くて……。地方に行ったときなどは、よく神社巡りをしています。
Q:本作の声優は爆笑問題や小島よしおさん、高橋ジョージさんなどユニークな面々が勢ぞろいしましたが、特にどなたの声が印象に残っていますか?
太田さん(爆笑問題)が演じたザミーは、とても個性的で、聞いていて気持ち良かったですね。あと、闇の帝王のブッカ・ブーを演じた田中さん(爆笑問題)はどこから声を出されていたのかと思うほど迫力があって、ご本人も大変だったと思います。
Q:田中さんのお気に入りのキャラクターは?
どのキャラクターも個性的で好きですが、その中でも気になるキャラクターはザミーです。ザミーは実は天使なんですが、最初は自分のことを悪者だと思ってるんです。でも、徐々に自分が天使だということを思い出していって、ピュアな心に戻っていく姿は、すごく魅力的だと思いました。
田中麗奈が夜な夜なすること……
Q:ココは夜な夜なペンギンコートを着て、町を歩きまわっていましたが、田中さんは夜な夜な何をすることが多いですか?
夜な夜な、本を読んでいます。ジャンルにこだわらず、恋愛ものもミステリーもノンフィクションも読みます。最近は伊坂幸太郎さんの作品にはまってるんです。
Q:本作は日本を皮切りに、世界各国で上映される予定とか。これからこの作品をご覧になる方々にメッセージをお願いします。
本当に温かくて、愛のあるとてもかわいらしい映画です。クリスマスの公開なので、寒い冬に映画館でホットな感動を味わっていただければと思います。ぜひご家族で観ていただきたいです。
今年流行の黒に、スパンコールが散りばめられたクールなワンピース姿で登場した田中。一言一言、言葉を選ぶように話す彼女だが、チャリーについての質問には急にじょう舌になり、いかにこの役に愛情を注いでいるかがうかがえた。本作の主人公・ココの夢はペンギンのように空を飛ぶことだったが、田中の夢は小さいころから、女優になることだったという。女優としてだけでなく、声優としても個性を発揮する彼女の魅力を、本作では十分に堪能できる。美しい映像とファンタジックなストーリー、ユニークな声優陣など、見どころたっぷりのこの作品を、劇場の大スクリーンで楽しんでほしい。
(C) 2009 りんたろう・マッドハウス / 「よなよなペンギン」フィルムパートナーズ・DFP
映画『よなよなペンギン』は12月23日より全国公開