『彼岸島』水川あさみ 単独インタビュー
フェロモンは内側からにじみ出る女性としてのたおやかさだと思う
取材・文: 平野敦子 写真:吉岡希鼓斗
韓国のキム・テギュン監督がメガホンを取り、松本光司原作の人気コミックを映画化した映画『彼岸島』がついに完成。映画『火山高』『オオカミの誘惑』などの高度なバトルアクションを得意とする監督による、まったく新しいサバイバル・アクションエンターテインメントが誕生した。石黒英雄や渡辺大、山本耕史という実力派イケメン俳優たちを相手に、暗い過去を持ちながらも凛(りん)として生きるヒロインを熱演した水川あさみが、二面性を持つヒロイン像や、初挑戦したワイヤーアクションなどについて語った。
クールビューティーが挑んだ新境地
Q:謎めいたヒロインの冷を演じた感想は?
とても楽しみながら演じました。冷はつらい過去を背負っている女性で、表面的にはとてもクールで謎めいていて、一見何を考えているのかわからないような女性です。でも心の中には、自分を犠牲にしてでもどうにかして島を救いたいという熱い思いを持っているんです。だから彼女のその二面性のようなものをスクリーンで出せればと思いながら、演じました。
Q:水川さんはと言えば、冷と同じクールビューティーというイメージがありますが、実際はどうなんでしょう?
普段のわたしは、クールビューティーという感じではないと思いますよ(笑)。ごくごく普通の感じですね。あ、でも関西人だからといって、特に笑いを取ろうとかいう気はないですけど。
Q:石黒さん演じる年下の明をドキリとさせるようなセクシーショットもありましたが、あのシーンは演じていていかがでしたか?
セクシーさや色気というものは作って出るものではなく、その人の内面からわき出てくるようなものだと思うんですね。内側からにじみ出る女性としてのたおやかさや、女性的なフェロモンというものを表現したいと思って、頑張って演じました。
Q:どうすればその女性らしいフェロモンが出てくるんでしょうか?
それはわたしにもわからないですね! どうすればいいんでしょうね(笑)!?
Q:アクションシーンもすごかったですが、ご苦労はありましたか?
今回ワイヤーアクションに初めて挑戦したのですが、あれは一人でできるものではなくて、ワイヤーを引っ張ってくれる人との息が合わないと全然キマらなくてダメなんです。そのタイミングを合わせるのがとても難しかったです。
Q:運動神経には自信がある方ですか?
特に運動部で部活をやっていたというようなことはないのですが、運動は割と得意な方だと思います。学生のころ、走るのは速い方でしたし、体育の時間は大好きでしたね。
イケメン多数! ムードメーカーは石黒英雄
Q:石黒英雄さん、渡辺大さん、山本耕史さんという美形俳優たちとの共演はいかがでしたか?
山本さん以外のお二人は、わたしより年下なんですよね。でも、みなさん自分の考えをしっかりと持った頼もしい方たちだったので、今回一緒にお仕事をさせていただいて本当に光栄でした。
Q:その中で一番のムードメーカーだったのは誰ですか?
そうですね……、石黒さんは今回主演ということもあって、きっと人一倍責任を感じていたんじゃないかと思います。撮影中に面白いことを言って、特に現場を盛り上げようとされていました。今回彼が演じた役柄そのままの好青年という感じでした。
Q:韓国のキム・テギュン監督と一緒に仕事をされましたが、撮影中に覚えた韓国語はありますか?
カンドンニム(監督さん)とか、アンニョンハセヨ(こんにちは)とか、あとはマシッソヨ(おいしい)とか、本当に基本的な言葉ばかりですね。韓国語は日本語以上に目上の方への言葉遣いが丁寧なので、わたしはよく友達に使うような韓国語を監督に使って、スタッフの方から「それは間違っているよ!」と注意されていました(笑)。
Q:監督はどのような方でしたか?
現場のキャストもスタッフもほぼ100パーセント日本人だったのですが、監督は本当にカンがよくて頭の回転の速い方なので、言葉の壁を感じることなく撮影を進めることができました。撮影中にも次から次へとさまざまなアイデアがわいてきて、そのイメージをすぐにカメラでとらえようとするので、こちらのテンションも思わず高くなりましたね。いい勉強をさせていただきました。
Q:韓国では撮影中の飲み会が当たり前だということですが?
八丈島ではスタッフもキャストもみんなが比較的早く終わる日が1日あったので、その日は、みんなで宴会場のような広い場所で一緒にご飯を食べて楽しかったです。
Q:監督は食事で苦労されたそうですが?
基本的に食べ物もお弁当など冷たい物が多かったので、監督としてはそれプラス何か一品温かいスープなどが付いてくるのが韓国では普通なので、それがなかったのがちょっとだけご不満だったのかも……と思いますね。でも監督は、ご自分でエゴマ(シソ科の食用植物)の缶詰とかを韓国から持ってきて、みんなに配ってくれました。わたしもおいしくいただきました。
心揺さぶられるラストシーンは必見!
Q:おススメのシーンはありますか?
全体的に観てすごくかっこいいシーンだと思ったのは、山本さん演じる雅と、渡辺さん演じる篤の最後の決闘シーンです。もちろん立ち回りもそうですし、美術やセット、カメラワークなどのすべてがあいまってとてもすてきだと思いました。あそこは男性の目線で観ると興奮するというか、カーッと体中が熱くなると思います。わたしは女なのでその辺はよくわからないんですが、ただ女性のわたしから観ても胸がざわざわするというか、心を揺さぶられるというか、こちら側に強く訴えるものがありましたね。
Q:最後に、この映画では家族のきずなや、友情というものが描かれていますが、水川さんご自身が大切にされているものは何ですか?
人とのきずなはどれも大切だと思いますし、もちろん友情も、恋人への愛情も、親子の感情とかも、何にも替えられないものだと思うので、どれも同じぐらい大切にしたいと思っています。
長く美しい黒髪をなびかせながら、さっそうと現れた水川は、まさにクールビューティーという言葉がぴったりの女性だ。だが、本人は至って気さくでキュートな明るい空気を身にまとった女性だった。一問一問言葉を選びながら質問に答え、一生懸命覚えた韓国語を思い出そうとしたり、楽しそうに笑ったり、そのくるくると変化する表情をずっと見ていたいと思わせる魅力に満ちている。そんな彼女が自身のイメージぴったりに演じたクールなヒロインぶりを、体を張ったアクションとともに堪能してほしい。
映画『彼岸島』は1月9日より新宿バルト9ほかにて全国公開