『交渉人 THE MOVIE』城田優 単独インタビュー
自分がこの世に生を受け、楽しく暮らせているのは命があってこそ!
取材・文: 平野敦子 写真:高野広美
米倉涼子が警視庁捜査一課特殊捜査班所属の女性交渉人役を演じた人気テレビドラマ「交渉人 ~THE NEGOTIATOR~」が、新たに映画『交渉人 THE MOVIE』としてスクリーンに登場。今回は反町隆史や林遣都、成宮寛貴に柳葉敏郎、橋爪功に津川雅彦という超豪華俳優陣がゲスト出演を果たす。米倉演じる宇佐木玲子と密接な関係を持つ死刑囚の真里谷恭介役としてドラマ版にもレギュラー出演している城田優が、役づくりの際のインスピレーションや母親への思い、エコな生活について語ってくれた。
真里谷という役は自分がゼロからつくり上げた
Q:出演シーンが短いにもかかわらず、強烈な印象を残す真里谷役に成り切るために努力したことはありますか?
台本を読んだときは「何なんだ、こいつは!?」という印象をまず受けました。2年前の最初の撮影で初めて独房というか、接見室に入って米倉さんと対峙(たいじ)して、そこでようやくこの真里谷という役柄が見えたという感じでした。実は不安要素を残しつつ現場に行ったんですよね。それで行って実際に芝居をやってみたら見事にハマったというか……。だから家で役づくりをしていたときよりも何倍も短時間で真里谷に成り切ることができましたね。
Q:この役を演じる上で参考にした本や映画は何かありますか?
一切ないです! 多分スタッフやこの作品をご覧になる方たちは『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスを想像すると思うんですが、それはないと断言します。僕は、誰かのマネをして演じることはあまり好きではないので、彼とは全く違うタイプの人間を演じようと思ってやっていました。
Q:城田流真里谷とはどのような人物なのでしょう?
結構台本には「こいつは多重人格じゃないのか!?」と思うようないろいろなしゃべり方があったり、急にテンションが変わるようなところがあったので、それを生かしてさまざまなキャラを自分なりにつくろうと思いました。子どもみたいだったり、大人びていたり、怒っていたり、泣いていたり、急に笑い出していきなり泣き始めたり、あるいはその逆のパターンだったり……。とにかくつかみどころのない、怖くてかわいくて恐ろしい人間を作ろうと思ったんです。
Q:ご自分も死刑囚ではなく交渉人役を演じてみたいと思われたことはありますか?
玲子が何かのきっかけで捕まってしまって、交渉班は必死に玲子を捕まえた犯人と交渉をしようとするんだけれど、その犯人が切れ者で全然謎が解けないんですよ。そういうときに真里谷を呼んで、彼が警察のオペレーションルームでその犯人と電話で話をして彼女を助けるという理想のシチュエーションをいつも妄想していますね(笑)。
真里谷のモノローグはイチオシ!
Q:真里谷のモノローグもステキでしたね。
今回はそのモノローグシーンで、本当に一瞬真里谷の世界に観客を連れて行けるのが一番うれしかったですね。まさか真里谷のモノローグなんて誰もあるとは思っていませんよね? それが映画のエンディングにつながるわけですから、重要なシーンを任せていただいたというか、そういうシーンをいただいたこと自体がとてもうれしいです。
Q:真里谷は玲子のほんの少しの変化でさえもすぐに気付いてしまいますが、ご自身は周りの人の感情の変化には敏感ですか?
自分は臆病者なので、割と気付く方だと思いますね。ちょっとしたことで「あれ、今日は機嫌が悪いのかな?」とか、「うれしそうにしているな」とかいうのはわかります。もともと人間観察が好きで、人のことはよく見ているんですが、自分の周りにいる人間のことはより一層見ていますよ。多分向こうが女性だったら「わたしのことが好きなのかな?」と勘違いされちゃうぐらい見ているはずです(笑)。
誰よりも尊敬しているのは母親!
Q:城田さんの国籍はスペインということですが、スペインの人たちはそれこそガン飛ばしてるのかと思うぐらい人のことをよく見ますよね?
残念ながら僕は幼少期しかスペインで過ごしていないので、スペイン人の感覚はこうなんですとは言い切れないんですが、目を見て話すというのはいいことだと思いますよ。日本人はシャイな方が多いので、街で人とぶつかっても目を見ないで「すみません」と言ったり、何も言わずに通り過ぎたりすることも多いじゃないですか。あとはハンカチ落としても誰も拾ってくれないとかね(笑)。スペインでは普通に「おい、ハンカチ落としたよ!」「あ、ごめんね!」みたいにちゃんと言ってくれるので、そういう部分はもしかしたらスペイン人に感覚が近いのかもしれませんね。
Q:お母様はスペイン人でいらっしゃるそうですが、どのような方なんですか?
うちの母は、スペインではド田舎の出身なんです。彼女は本当に語り尽くせぬほどの苦労をしながら生きてきた人で、きっと壮絶な人生を歩んできたんだなと話を聞くだけでも思います。言葉で説明されるのと、実際に味わうのとでは雲泥の差がありますから。言葉もわからない異国で5人の子どもを生んで、全員立派に育て上げて、ぼろぼろになっているおふくろを見ると本当にすごいと思いますね。尊敬という言葉は、彼女のためにあるんじゃないかと思えるぐらい母親のことは尊敬しています。
Q:その気持ちをお母様はご存じなのでしょうか?
毎年「生んでくれてありがとう」と、自分の誕生日には言っているんですけどね。今は子どもたちがプレゼントをもらう日が誕生日みたいになっていますが、本来なら自分を生んでくれたことを母親に感謝する日であるべきだと思うんですよ。僕は、いつのころからか逆にプレゼントをあげる側になっていましたね。自分がこの世に生を受け、楽しく暮らせているのはやはり命があってこそですから。もちろん父親の遺伝子も大事ですが、母親が自分の腹を痛めて生んでくれたからこそ今僕はここにいるわけですからね。
ポイ捨てするヤツは"肩パン"でお仕置き
Q:この作品の中で「人の命は地球よりも重い」というセリフがありますが、城田さんもそう思われますか?
みんなお金だなんだと言いますが、まずは人があってこそだと思いますね。僕だったら人間よりも大事なものは地球と答えますけどね! 地球がなければ人間は生きられないわけですから。
Q:では、ご自分で地球のために何か努力なさっていることはありますか?
自分の周りの人間がポイ捨てをしていたら、マジで殴ります。まぁ、それは冗談ですが(笑)。僕が「ポイ捨てしちゃダメだよ!」と言っている人たちに関しては、ルールを破ったら肩を一回ポンとたたきます。それを僕らは"肩パン"って言ってるんですけどね。あとは募金をしたり、基本的に夏も冬もエアコンも暖房もつけないです。一人だけやってもムダかもしれないけれど、一人がやって、100人がやって……となればいいかなと。あとは食べ物を残さないとか、料理を食べ切れるだけ頼むとか。資源のムダ遣いはなるべくしないように心掛けています。絶対にしないようにしているのはポイ捨てですね。みなさん、街を汚さないように!
撮影当日、真里谷恭介役の全身真っ白の衣装とメイク姿で取材に応じてくれた城田。俳優というと一見華やかなイメージだが、エアコンは使わず、食べ残しもせず「ポイ捨ては絶対に許せない!」という城田は一般人よりずっとエコな生活を送っているようだ。そんな彼が体当たりで演じた真里谷という複雑怪奇な男の背後に隠れた、城田の等身大の魅力をぜひともスクリーンで感じてもらいたい!
映画『交渉人 THE MOVIE』は2月11日より全国公開