『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』コロンバス監督 ローガン・ラーマン 木村佳乃 インタビュー
弱さを抱えている人に勇気を与えたい
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
『ハリー・ポッター』シリーズの第1、2作で知られるクリス・コロンバス監督の最新作『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』が公開された。本作は、ごく平凡な高校生だったパーシー・ジャクソンが、神と人間との間に生まれた「デミゴッド」であることを知らされ、壮大な冒険の旅を繰り広げる神話ファンタジー。ジャパンプレミアで来日を果たしたクリス監督と、パーシーを演じたローガン・ラーマン、そして日本語吹き替え版でユマ・サーマンふんするメドゥーサの声を担当した木村佳乃が、作品について熱く語ってくれた。
友だちの大切さを改めて感じた
Q:奇想天外なファンタジーであると同時に、人間の無限の可能性を描いている作品ですね。
クリス:その通りだよ。主人公のパーシーは難読症に悩んでいる少年なんだけど、それを弱みとして引きずるのではなく、自分の力へと変えていく。そんなパーシーを通して、障害を持っている人や弱さを抱えている人に勇気を与えたかったんだ。
ローガン:僕も脚本を読んだときに監督のメッセージを感じたし、だからこそ、この作品とパーシーという役柄に惹(ひ)かれたんだ。自分自身を受け入れてポジティブになっていくパーシーの姿から、みんながパワーをもらってくれたらうれしいね。
木村:親子のきずなもしっかり描かれていて、本当に勇気をくれる作品ですよね。わたしは、パーシーとグローバーの友情にも心が動かされました。学生時代の友達って、わたしくらいの年齢になるとあまり会わなくなってしまうんですよね。でもこの作品を観て、高校時代の親友を思い出しましたし、友達の大切さを改めて感じました。
Q:日本の「ドラゴンクエスト」など、RPGをプレイしているような展開にワクワクさせられました。監督もゲームの世界を意識されたのでしょうか?
クリス:息子は「ドラゴンクエスト」が大好きなんだ! でも残念ながらわたしはゲームをやったことがなくてね(笑)。わたしがこの映画の原作に惹(ひ)かれた理由は、ギリシア神話が現代に存在するという奇抜なコンセプトだった。エンパイア・ステート・ビルのてっぺんにオリンポスの山があったり、ハリウッドの看板のそばに冥界(めいかい)への入り口があるなんてすごく面白いと思わないかい? メドゥーサがニュージャージーのガーデンショップにいるとか、最高にユニークだよね。
木村:本当に面白いコンセプトですよね。
メデューサと木村の共通点は?
Q:英語力には定評のある木村さんですが、メドゥーサの日本語吹き替えをするにあたって、ご自身の語学力はプラスになったと思いますか?
木村:日本語と英語は文法がまったく違うので、英語のセリフを直訳すると、ユマ・サーマンの表情と合わないことが多いんです。だから、英語が聞こえてしまう分、逆に気になってしまいましたね。でも、そこは翻訳家の方がうまく日本語のセリフを作ってくださったので。何とかこなすことができました。もともとわたしの声が低いので、なるべく迫力を出すように何度も何度も練習して頑張りました!
Q:クリス監督とローガンさんから見て、メドゥーサと木村さんのイメージが重なる部分はありますか?
クリス:佳乃は全然恐ろしくないよ(笑)! とても温かくて美しくて、メドゥーサとはまったく違う。もちろん、ユマ・サーマンもメドゥーサとは違う優しい女性だけど、演技力で素晴らしい怪物を作り上げてくれた。
ローガン:メドゥーサと目が合うと石に変えられてしまうから、絶対に見てはいけないんだけど、佳乃はすごく美しくて、ついつい見てしまうよ(笑)。見たくなるという意味ではメドゥーサと同じかな? 今も「見ちゃいけない!」と思いながら話しているんだ。目を合わせるのがテレちゃうくらい美しいよね。
木村:ローガンの青い瞳がすごくキレイ! 見とれちゃいます(笑)。
Q:では、もしもメドゥーサのように人の視線を自分に向けさせてしまう魔力を持っていたとしたら、どんなことに使いたいですか?
ローガン:もちろん、みんながスクリーンの中の僕たちを見たくなるようにするよ(笑)!
木村:わたしも同じことを考えていました!
クリス:では、3人とも一緒だね(笑)。
VFXで実写化したクリーチャーに大満足!
Q:メドゥーサをはじめ、ギリシア神話でおなじみのクリーチャーたちが見事に実写化されていますが、皆さんのお気に入りは?
木村:もちろんメドゥーサです! 髪の毛が全部ヘビになっていて、一匹一匹が違う動きをしているんですよ。あの動きは本当にスゴイと思います。それに、彼女は単なる悪者ではなく、悲劇の人生を送っているんですよね。そこも含めて気に入っています。
ローガン:僕はヒュドラ(複数の頭をもつ竜)かな? パーシーがヒュドラと対決するシーンの撮影には、1か月以上もかかったんだ。撮影しているときは実際にヒュドラがいるわけではないので、どんなふうになるのか想像しながら演技したけど、完成した映画を観て本当に興奮したよ!
クリス:わたしもヒュドラだね。あのシーンは、最初から水と炎のコントラストをイメージしていたんだけど、そのイメージ通りに描けたと思うので、とても満足しているんだ。
Q:この作品を観た子どもたちは、「自分もいつかヒーローになれるかも」と思うのではないでしょうか? 皆さんも子どものころに、そんな夢を抱いたことはありますか?
クリス:ヒーローというよりも、映画監督になることが子どものころからの夢だった。オハイオ州の小さな町で育ったので、あこがれていた仕事ができるなんて夢のようだし、毎日仕事場に行くのが楽しくて仕方がない。夢がかなって本当にラッキーさ。
ローガン:僕は昔から『ハリー・ポッター』シリーズが大好きだったんだ。第1作目を観たのは本当に小さいころだったんだけど、家に帰ってから魔法の杖のようなものを探して、呪文(じゅもん)を唱えてみたこともあった(笑)。ファンタジー映画は、「自分も魔法を使えるんじゃないか?」と思わせてくれる。この作品を観た人にも、そんな夢を持ってもらえたらうれしいな。
木村:わたしも子どものころからファンタジー小説が大好きだったんです。特に、ミヒャエル・エンデの「モモ」が好きでしたね。あまりにも空想好きだったので、みんなから「デイドリーマー」と呼ばれていたんです(笑)。とにかく、ファンタジーの世界にはあこがれがあったので、この映画に参加できて本当に感激でした!
気になる続編について衝撃発言!
Q:先ほどジャパンプレミアを終えたばかりですが、日本での手応えは?
ローガン:あまりの人の多さに圧倒されたよ! 正直なところ、日本でどのくらいの人が集まってくれるのか想像できなかったんだ。でも、あんなに多くの人がこの映画を応援してくれて、本当にうれしかった。
クリス:わたしも、あんなに集まってくれるなんて予想していなかったので、すごくエキサイティングだったね。みんながサインを求めてくれたし、とても温かくて感動したよ。
木村:今回のプレミアも大盛況でしたし、これから映画を観る方がどういう反応をしてくださるのか楽しみです。本当に素晴らしい作品なので、間違いなくみんなに愛されると思います!
Q:原作はシリーズ化されていますが、映画も続編に期待してよいのでしょうか?
木村:わたしも続編がすごく気になるんです! さっき、舞台あいさつでメドゥーサが3姉妹だと聞いてしまったので、それが頭から離れないんですよ(笑)。次回も登場してほしいです!
クリス:もしも続編を作ることになったら、メデューサの姉妹を脚本に盛り込むよ。まずは、この作品が成功してからの話だけどね(笑)。
木村:絶対成功しますよね! 続編が実現したら、今度は俳優としてオーディションを受けます!
クリス:OK! ハリウッドで待っているよ(笑)。
ローガン:僕もまたパーシーを演じたい! このシリーズは3本まで出演する契約になっているしね(笑)。続編のためにも、日本の皆さんにこの映画を何度でも観てほしいね!
ジャパンプレミア直後の高揚感に包まれたままインタビュー現場に現れた3人。語学が堪能な木村は、取材を終えた後も、「日本では何をするの?」など、流ちょうな英語でローガンとのおしゃべりを楽しんでいた。また「今度はオーディションを受ける!」とクリス監督に告げたときの木村の表情は真剣そのもので、本当に彼女の映画出演が実現してほしいと願わずにはいられない。そんなお楽しみも踏まえつつ、本作のシリーズ化に期待だ。
(C) 2010 Twentieth Century Fox
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は全国公開中