『シーサイドモーテル』山田孝之&玉山鉄二 単独インタビュー
週1ペースで遊んでいる相手との共演にわくわくしました
取材・文:渡邉ひかる 写真:吉岡希鼓斗
山奥にあるのにシーサイドと名付けられたモーテルを舞台に、4つの部屋で男女11人の運命が絡み合う『シーサイドモーテル』。生田斗真、麻生久美子、古田新太など、豪華キャストが結集した本作で、202号室に泊まる逃亡中のギャンブラー、朝倉を演じた山田孝之と、彼を追う借金取りのヤクザ、相田を演じた玉山鉄二に話を聞いた。
二人は実は週1回のペースで遊ぶ飲み友達!
Q:映画での共演は映画『手紙』以来ですね。
玉山:孝之の作品はいろいろ観ていましたし、役者としてもすごいと思わされる部分がたくさんあるので、僕は共演をすごく楽しみにしていました。役者というものは、共演相手によって自分も変わってくるんです。孝之の影響によって、今回は自分がどう変わるんだろう? とワクワクしましたね。
山田:僕もそんな感じの感想なんですけど(笑)、映画『手紙』とはストーリーも役柄も違うから、全然違う共演になるんじゃないかなって。普段もしょっちゅう会っているだけに、新たに共演するとなると、また違う関係性が生まれると思うんですよね。玉山くんはどうアプローチしてくるのかな? それに対し、僕はどう返すのかな? と考えるだけで楽しかったです。
Q:しょっちゅう会っているんですか?
玉山:週1ペースで遊んでいます(笑)。「また共演できたらいいね」なんて話もしていました。
山田:でも、会うたびに「こんな企画があって……」と熱く話し合っていたわけではなく、緩い感じの語り合いで(笑)。「二人でロードムービーなんて、いいよね。タイミングが合えばやりたいね」と漠然と話していたことはあります。
Q:実際に撮影が始まってからは、どんな感想を持ちましたか?
玉山:孝之はもともとリアリティーのある芝居をする役者さんで、こういった作品の場合はどうなるんだろう? と思っていたんですが、「意外と顔芸しているじゃん!」って(笑)。
山田:アンタもだよ!(笑)
玉山:いや、おれもそうだけど、何だか意外性があって。そこは結構面白かったですね。
山田:今回はとにかく大げさにしたかったんです。台本の時点で、ものすごいテンションの展開だと思ったので。とんでもない額の金を盗んできて、ソッコーで捕まって拘束されちゃう男ですから、とにかくうざくしたかった。ほかの登場人物も皆うざいですしね(笑)。玉山くんの役に関しては、台本だとクールで淡々とした印象があったので、意外と軽いノリの人間に仕上げていて、「そうきたか。なるほど!」と思わされました。
玉山:普通の作品以上に抑揚をつけたいと思ったんです。フラットな演技をすると流されちゃうので、無駄な動きも極力増やして、ヤクザだけどあいきょうのあるヤクザに見えたらいいなと思いました。
こだわりまくったファッションに注目
Q:役のビジュアルもすごいですね。
山田:現場に行ったら、すでに監督と衣装さんの間でコンセプトが出来上がっていましたね。本当はパンツ一丁がよかったんだけど、さすがにずっと裸なのも何なのでタンクトップだけは着て。なぜか「ブーツは履いておきましょう」と言われたんですが、僕も僕で「あ、それは面白いですねえ」と(笑)。あと、タトゥーをたくさん入れている男なので、どんな絵柄にするかを提案させていただいたりはしました。とにかくダサい絵柄のタトゥーがいいかなって。アクセサリーの着け方にしても、むやみにいっぱい着けていて品がないんです。
玉山:ファッションって、ある程度の引き算をして成立させるものじゃないですか。でも、僕の役に関しても、今回はいろいろなものを足しまくろうと思って。時計の上にブレスレットとか、柄に柄とか(笑)。
山田:柄しかないもんね。
玉山:そうそう。あと、僕自身が巻き爪なのでサンダルの方がうれしいと思い、そこは提案しました(笑)。
山田:だから、衣装を身に着けた状態で顔を合わせたときは「おれら、むちゃくちゃだなあ」と思いましたね。足しまくった人と足しまくった人がいるわけですから。
玉山:でも、パンツ一丁はさすがにびっくりしましたよ。ちなみに、僕もパンツになるシーンがありますが、あれは自前のパンツです。撮影の日に履いていたものが水色と黄色のちょっとかわいいパンツだったので、「これはいいぞ!」と思って(笑)。
成海璃子と再共演で今度は……!?
Q:山田さんは成海璃子さんとも再共演ですね。しかも、カップル役で……。
山田:前回は涙、涙の兄妹だったのに、今回は全然違いますよねえ。『イキガミ』っていう映画で兄妹だったの。おれの役が死んで、妹に角膜をあげるという感動的な……ね。
玉山:はは、全然違うねえ。
山田:だから再共演が楽しみでしたよ。清純な妹だったのに、今回はヒッピー娘みたいな格好しているし。
玉山:はははは!(笑)
山田:どんな感じで来るんだろう? って。実は、(成海演じる)留衣との場面ですごく好きなセリフがあるんです。借金を抱えた朝倉が、留衣のことを「売っちまおう!」と言うんですけど……。
玉山:ああ、あのセリフは面白いよねえ。
山田:すごく気持ちのいいセリフでしたね。普通はそんなことを言うわけがないし、映画『イキガミ』のことを思えば相当面白いですよね。しかも、「売っちまおう!」と言うまでに朝倉は一度迷うんですよ。売っちまおうかな? いや、もったいないかな? いいや、売っちまえ! と。あのシーンは僕的にお気に入りです(笑)。
恥ずかしいセリフを真剣に言うことで生まれるシュールな面白さ
Q:玉山さんと成海さんのやりとりも面白いです。
玉山:僕は初共演だったんですが、ピュアな女優さんだという印象を受けましたね。実は、僕も留衣とのシーンで印象深いセリフがあるんです。相田が彼女に「ドラえもん祭だったら連れてってやるよ」と言うところがあるんですが、そのセリフを言うのがすごく恥ずかしくて……。
山田:あはは(笑)。
玉山:もう少し格好いいセリフはないのかな? と思い、監督とも話したんですが、「ここはぜひ、ドラえもん祭で!」と言われて。
山田:僕のセリフにも「ドラえもん祭」が出てくるんですけど、そこは僕も監督と戦いました(笑)。ほかに変えられるものはないかな? と思って。
玉山:だよね!
山田:しかも、正確には「夏休みドラえもん祭」なんですよ。単語としてはちょっと長いじゃないですか。だから、リハーサルのときに「夏休み」を抜いて言ってみたら、「夏休みをちゃんと付けてください」と指摘されて。「どうしてですか?」と聞いたら、「ドラえもん祭は春休みと夏休みにあるんですよ!」って。まあ、でも言うとなったら、なるべく恥を捨てて自然に言おうと心を決めましたけど(笑)。
玉山:恥を捨てたというか、あきらめですよね(笑)。
山田:あれを真剣に言うからこそ、シュールな面白さが生まれる部分ではありますからね。
玉山:何を格好つけて言ってるんだ? この人たちは、ってね。
Q:最後に、完成した映画をご覧になった感想を教えてください。
玉山:ほかの部屋の人たちと現場で会うことがなかったので、すごく新鮮な気持ちで観られましたね。自分が出ているほかの作品よりは、1本の映画として客観的に楽しめたかもしれません。それぞれの部屋の事情がほかの部屋に何かしらの影響を及ぼしていたり、それぞれの話がリンクしたりしている部分が楽しかったです。
山田:いろいろな人間がいて、いろいろなことが起きているハチャメチャ感はあるんですけど、ストーリー自体は「人生って、こんなものなのかな」と思えるところに着地している。その辺りにリアリティーを感じられて、いいと思いました。
さすがは週に1回は遊ぶ間柄であるだけに、インタビュー中も二人そろって自然体。撮影の思い出について和気あいあいと語り合う一方、俳優としての熱さをそれぞれのぞかせる彼らに魅了された。普段の会話に関しては「教えてもいいけど、書けない内容だと思いますよ(笑)」とのこと。そう言われると、ますます盗み聞きしてみたくなる……。
映画『シーサイドモーテル』6月5日より全国公開