映画『さんかく』高岡蒼甫、小野恵令奈、田畑智子 単独インタビュー
お互いのことを考えるのが一番!
取材・文:シネマトゥデイ 写真:吉岡希鼓斗
映画『純喫茶磯辺』の吉田恵輔監督が、倦怠(けんたい)期を迎えたカップルと、彼らの同棲(どうせい)生活に転がり込んできた彼女の妹との三角関係をコミカルに描いた映画『さんかく』。硬派なイメージを脱ぎ捨てて、中学生の女の子にほんろうされるダメな彼氏をおちゃめに好演した高岡蒼甫、お姉ちゃんの彼氏を小悪魔のように誘惑する中学生をキュートに演じたAKB48の小野恵令奈、彼氏に嫌われる行動ばかり取ってしまう彼女を熱演した実力派女優の田畑智子の3人が、とっておきの恋バナを繰り広げてくれた。
まずは嫌な部分から見ていこうとしました(高岡)
Q:皆さんのキャラクターがとても新鮮だったのですが、どのように役づくりされたんですか?
高岡:役づくりの最初のステップは、佳代を本気で「うざいな」って思うところから始めたんです。もちろんいい部分もあると思うんですけど、まずは嫌な部分から見ていこうとしていましたね。
田畑:自分に近いというところもあって、すごく自然に演じることができました。佳代の気持ちがすごくよくわかるから、せりふも素直に入ってきましたね。ただ、役に入り込めたぶん、高岡さんが面倒くさそうな顔をするたびに、「あ、今すごく嫌な顔された……」とか、一つ一つリアルに感じてしまって、落ち込んでいましたね(笑)。
小野:わたしは前もって「こうやって演技しよう」って決めていかないことが多かったんです。でも、スタートがかかると自然にせりふが言えました。
高岡さんが現場にいらっしゃるだけで和やかでした!(小野)
Q:高岡さんは、映画『ROOKIES -卒業-』など男性ばかりの現場が多い印象がありますが、女性二人に囲まれた現場はいかがでしたか?
高岡:華やかでした! 田畑さんのような大人の女性と、少女から大人への……恵令奈ちゃん(笑)。全くタイプの違う二人の女性と一緒で、うれしかったです。
Q:田畑さん、小野さんにとっては、男性ただ一人のキャストだった高岡さんは、どんな存在でしたか?
田畑:ムードメーカーだと思います!
高岡:そうかな!?
小野:何でしょう……。やっぱり、ムードメーカーです(笑)。
Q:現場を盛り上げる存在だったんですか?
小野:はい!
高岡:いやいや! 全然盛り上げてないし! 恵令奈ちゃんはフンワリしているから、現場がすごく和むんです。田畑さんはすごくしっかりしているので、ちゃんと現場をまとめてくれて……。だから、僕は結構何にもしていなかったですよ。
小野:高岡さんが現場にいらっしゃるだけで和やかでした!
高岡:い……いるだけで!? 褒められてんのか、褒められてないのか……。
小野:ちゃんと褒めてます!
高岡:あ、ありがとう!
ウザいだろうなっていうところは、結構あるんです(田畑)
Q:佳代は、後半からどんどん面倒くさい女へとエスカレートしていきますが、ご自身で演じていて、「これはひどかった!」というところはどこでしたか?
田畑:ウザいだろうなっていうところは、結構あるんですけど(笑)。百瀬から別れを告げられた後が、かなりひどかったですね。会いに行っちゃったりとか、電話かけたりするのは男性からしたら嫌なんじゃないかな、と思います。
高岡:掃除したりね……。
田畑:あーしたした(笑)! 家突き止めて、勝手に合鍵作って、部屋入って……。あれはやっちゃだめでしょ! って思いましたね。
Q:男性の目線で見て、「これだけは絶対にされたくない!」という佳代の問題行動はどこでしたか?
高岡:まだ掃除をしてくれるところまではいいんですよ。
田畑:え!? いいの!?
高岡:うん、わからない程度なら(笑)。でも、服が畳んであったりとか、そういうことをされちゃうと、ちょっと……。なんか、自分のことを心配してくれているのか、何なのかわからなくなりますよね。逆に手紙でも置いてきゃいいじゃん! って。もう、面倒くさい(笑)。あれは、完全に百瀬のキャパシティーをオーバーしていたと思います。
Q:16歳の小野さんから見て、切羽詰まったお姉ちゃんの行動はどう写りましたか?
小野:もし佳代が自分のお姉ちゃんだったら、逆に心配かなって思いましたね。あのお姉ちゃんがいたから、桃ちゃんは小悪魔っぽい女の子になっちゃったんだと思います。とりあえず振られても、彼の家には行かないようにしたいです(笑)。
好きな人のすべてを美化しちゃって、大好きになっちゃう(小野)
Q:百瀬は、観客から見るとかなりダメ男だと思うのですが、佳代はどうしてあそこまで百瀬を大好きだったんだと思いますか?
田畑:たぶん佳代は、百瀬に対して「わたしがいなきゃ、この人はダメ!」って思い込んじゃっていたんですよね。
高岡:ダメなやつを、ついお世話してあげたくなっちゃう……みたいな感じだよね(笑)。
田畑:母性本能ですよね!
Q:小悪魔のように百瀬を挑発していた桃ちゃんの、「好き」は、佳代とは全く別物でしたね
小野:きっとお姉ちゃんの家にいて、百瀬を「好き!」とか言っていたときは、桃ちゃんも本気で好きだったんだと思うんです。でも女性って、好きな人のすべてを美化しちゃって、大好きになっちゃうじゃないですか。でも一度われに返っちゃうと、一気に冷めちゃう。「あれ? なんでこの人のこと好きだったんだろう?」って気持ちになっちゃう。
高岡:中学生って、「好き」がわかっていないんじゃないですか。桃ちゃんの「好き」は、まだ駆け出しの「好き」。そのときは、MAXに「好き」なんだけど、やっぱりまだまだ甘いんですよね。
Q:高岡さんは、すっごく、女心を理解していらっしゃいますね!
高岡:いや、わかってないです! 研究中です。「そうなんだろうな」って思って、女性が僕の意見にうなずいてくれると、「ああ、そういうことか」って、納得する……みたいなね。
Q:桃ちゃんにどんどん惹(ひ)かれていく百瀬でしたが、どんなところにグッときたんだと思いますか?
高岡:あの桃ちゃんへの心の揺れは、百瀬の精神的な不安定さから生まれたものだと思うんです。佳代との関係に満足できていなかったから、桃ちゃんに惹(ひ)かれたんじゃないかな。けんかしたり、納得いかないこともあるけど、やっぱりいいなって彼女だったら、大丈夫だったはず! 桃ちゃんが、キャミソールのひもをずり落としていても、「いやいや、これ上げなさいよ」ってできたと思う。だって自分に余裕があったら、彼女の妹はないですよ!
自分本位に何かをしたり、話そうとすると、失敗する(高岡)
Q:最後に、好きな人と「好き同士」でいるために、一番大切なことは何だと思いますか?
田畑:なるべく二人で「会話」するのがいいと思いますね。
小野:桃ちゃんの行動に、百瀬がキュンとなっているシーンがあるので、それはお手本にしてみてほしいなって思いますね。でもお姉ちゃんからは、逆に「好き」が長続きしない方法をたくさん学びましたので、参考にしたいと思います(笑)。
高岡:自分本位に何かをしたり、話そうとすると、失敗することが多い。「こんなことをされて、すげームカつく」ってときに、「ウザイ」ってなるんじゃなくて、「こういう人もいるんだな」って思うことが、大切なんじゃないかな。カップルなら、相手に嫌なことをされても、「きっと自分も嫌なことをしているんだろうな」って考えれば、お互いさまだってなるじゃないですか。人と人とが「好き」同士でいるのって、難しいけど、お互いのことを考えるのが一番大事だと思います。
本作で、複雑だけどちょっぴり笑える、恋の「さんかく」関係を演じた3人だったが、取材の現場では、すっかり恋の話で盛り上がっていた。大人として、恋について語る田畑と高岡の話に真剣に耳を傾けながら、恋のお勉強をしている小野の姿がとてもほほ笑ましかった。高岡自身、「ほんっとに、ウザく感じた!」と断言するほど、田畑が演じる佳代の姿はかなりイタい。しかし、彼女の役柄は多くのアラサー女性が共感するはず! 小野が言うとおり、「やっちゃいけないこと」が学べる本作で、人のフリ見て、わがフリ直してみてはどうだろう?
映画『さんかく』は6月26日よりヒューマントラストシネマ渋谷、テアトルダイヤほかにて全国順次公開