『ベスト・キッド』ジャッキー・チェン、ジェイデン・スミス 単独インタビュー
撮影は楽しいことばかりじゃなかったけど、ジャッキーがいたから頑張れた
取材・文:シネマトゥデイ 写真:尾藤能暢
1984年に製作され、いまだ多くの人に愛されている伝説の空手青春映画『ベスト・キッド』が、今度は中国を舞台にカンフー映画としてよみがえった。主人公を演じるのは、映画『幸せのちから』で父ウィル・スミスと共演し、その演技力を絶賛されたジェイデン・スミス。そして、主人公にカンフーを教えるのは、カンフー映画界の最高峰に君臨し続けるジャッキー・チェンだ。アクションもストーリーもさらにドラマチックになった本作の魅力を、映画同様固いきずなで結ばれたジェイデンとジャッキーに語ってもらった。
最初は「あ~、はいはい」って感じだったんだよね(笑)
Q:本作のプロデューサーであるウィルから、オファーを受けた感想を聞かせてください。
ジャッキー・チェン(以下、ジャッキー):最初ウィルから電話があったとき、自分としてはしっくりこない感じだったんだ。でも脚本を読んだら、戦うだけでなく相手をリスペクトするという武術においてとても大切なことがきちんと描かれていた。とても気に入って、「誰が師匠役をやるの?」と聞いたらウィルに「君だよ」と言われたんだ(笑)。僕も、ずいぶん年を取ったもんだなって思ったよ(笑)。
ジェイデン・スミス(以下:ジェイデン):僕のお父さんって、いつもすごいことを考えていて、いろんなアイデアが次から次へと出てくるんだ。だからいきなり、「ジェイデン、ベスト・キッドやろうか!」って言われても、「あ~、はいはい」って感じだったんだよね(笑)。そうしたら、マジだってことがわかってちょっとびっくりしちゃった(笑)。お父さんは、僕が3歳から空手を習っているのも知っていたから、僕を主役にしようって思ったんだ。
Q:オリジナルの『ベスト・キッド』も大好きですが、本作を観てさらに好きになりました!
ジャッキー:それはとてもうれしいよ。僕もこの映画が、きっといい映画になるとは思っていたんだけど、期待を上回る素晴らしさだった。オリジナルを大事にしつつ、いろんなところが新しくなっているよね。中国だし、カンフーだし、主人公は小学生だし! 『ベスト・キッド』を初めて観たとき、僕も空手を習いたいって思ったんだ(笑)。今回は、それがカンフーになったから、たくさんの人たちが、この映画を観てカンフーを習ってみたいと思ってくれたらうれしいね。
ジェイデン:僕は、映画の出演が決まってから初めて『ベスト・キッド』を観たんだ。すごく面白くてハマっちゃった。だから、自分がリメイク版に出るなんて、どんなふうになるんだろうって思っていたんだけど、ジャッキーが「ジャケットを着る、ジャケットを脱ぐ」ってアイデアを出してくれて、かっこいいじゃん! 面白くなりそうだなって思ったんだ。
大人でもつらい撮影スケジュール!
Q:ジェイデンが劇中で見せた動きは、カンフースターもびっくりな迫力でしたね!
ジャッキー:僕がいろいろなところでジェイデンを養子にしたいと言っている意味が、この映画を観ればわかると思うよ! 本当に彼はよく頑張っていた。ジェイデンが何度も何度もテイクを重ねている間、自分はそれをただ見守っているだけだったから、師匠って楽だなって思ったね(笑)。ジェイデンの姿は、若いころの自分を見ているようだったよ。
ジェイデン:ジャッキーが連れてきたカンフーの先生に、マーシャルアーツを3か月間教えてもらったんだ。実は映画の撮影が終わってからもトレーニングは続けていて、もう1年くらいになるんだけど、素晴らしい経験をさせてもらっていると思う。撮影中は楽しいことばかりじゃなかったけど、ジャッキーがいてくれたから頑張れたんだって思っているんだ。
Q:映画の中で、ジャッキーはジェイデンに「集中しろ!」と言い続けていましたが、現場ではどうだったのでしょう?
ジャッキー:全く一緒だよ(笑)。だって、撮影が始まったとき、ジェイデンはまだ10歳だったんだ。朝早くからリハーサルをして撮影して、それから学校に行って、宿題やって撮影して、トレーニングして寝てリハーサルして……って、大人でもきついよね。だから撮影中、ふとしたときにジェイデンがボケ~となっているんだ(笑)。そんなときは、「集中して! じゃないとけがしちゃうよ!」って言い続けていた。
Q:そんなにつらい撮影で、泣いちゃったことはなかったですか?
ジェイデン:撮影中に泣いたことはなかったけど、トレーニングで泣いたことはあるよ。柔軟のストレッチがすごく痛くて、とくにまた割りがつらかった。だから、痛くてよく泣いていたよ。
キスシーンは女優さんに任せるのが一番(笑)
Q:初めてのキスシーンはどうでしたか? お母さんに「口を開けるな」というアドバイスをされたという話もありますが?
ジェイデン:パパも『7つの贈り物』でキスシーンを撮影する前に、ママに同じことを言われたって言ってた(笑)。キスシーンはやっぱりドキドキした。ママもその場にいたし、スタッフもたくさんいたから、やっぱり大勢の人がいる前でキスするのは嫌だもん。
Q:あれは、本当のファーストキスだったの?
ジェイデン:……違うよ。
Q:ジャッキー、あなたにとって印象的なキスシーンはどの映画でしょうか?
ジャッキー:僕の!? 僕はジェイデンほど上手にできなかったよ。ハリウッドの女優さんと初めてキスをしたのは、『メダリオン』という映画だったんだ。相手はクレア・フォーラニだったんだけど、すごく緊張したよ。目を閉じて、口も閉じて(笑)、じっとしていたら、ガバーーッ、ブチューーーってされて、めちゃくちゃ驚いた!! クレアは『ジョー・ブラックをよろしく』でブラッド・ピットとキスした女優さんだからね! キスシーンは女優さんに任せるのが、一番だね(笑)。
何なら僕が養子に入ってもいいけどね(笑)
Q:ジェイデンは本作の主題歌も歌っていますね? ジャスティン・ビーバーとのコラボがすごくかっこよかった!
ジェイデン:ありがとう! ジャスティンはとてもクールなお兄さんだったよ。歌詞は僕とジャスティンで考えたんだけど、ラップのところはパパにちょこっと手伝ってもらいながらも、ほとんど僕が考えたんだよ。PVにも出てくるけど、二人で大好きなお菓子を食べながらレコーディングしたりして、超楽しかった!
ジャッキー:ジェイデンは、本当に才能のある子なんだ。だから、ウィルとウィルの奥さんのジェイダには、現場でいつも「ジェイデンを養子にくれ!」って言っていたんだよ。何なら僕が養子に入ってもいいけどね(笑)。
Q:最後に、お二人がカンフーを通して学んだ一番大切なことを教えてください。
ジェイデン:相手をリスペクトする心!
ジャッキー:そうだね。相手をリスペクトする心。それは、世界中の子どもたちに学んでほしいことだと思っているよ。この映画は、きっといろいろなことを学べる映画だと思う。僕が映画に出るのはお金が欲しいからじゃないんだ。お金なんて、どうでもいい。どれだけ素晴らしい映画に出られるかが僕にとって大切だからね。この映画を観てカンフーからいろんなことを学んでくれたらうれしいよ。
まるで父と息子のように仲の良い二人は、インタビュー中もじゃれ合っては笑い転げていた。厳しくあるべきときは厳しくしたというジャッキーだが、彼の大きな愛情があったからこそ、観客は心を打たれるのだろう。オリジナルの『ベスト・キッド』に特別な思い入れがある人でも、きっと本作を観れば「リメイクも捨てたもんじゃない!」と心から思えるはず! 当時10歳のジェイデンが涙を流して挑んだ力作をぜひその目で確かめてほしい!
映画『ベスト・キッド』は8月14日より全国公開