映画『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』藤原竜也、北大路欣也 単独インタビュー
こういうハラハラドキドキを、今の人間社会は求めているのかな
取材・文:シネマトゥデイ 写真:吉岡希鼓斗
高い時給につられてやってきた10名の男女が、命を懸けた殺人ゲームに巻き込まれていく姿をスリリングに描いた原作を、映画『リング』の中田秀夫監督が映画化した映画『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』。文字通り、骨肉の争いを繰り広げる男女を、藤原竜也、綾瀬はるか、北大路欣也などそうそうたる役者陣が演じ、いったい誰が生き残るのか、まったく予測のつかない映画が完成した。本作の主人公を演じた藤原竜也と、共演の北大路欣也が映画の魅力をたっぷりと語ってくれた。
竜也くんとの初めての共演にドキドキしました
Q:今回お二人は初共演ですが、お互いの共演がわかったときの感想を聞かせてください。
北大路:竜也くんとの初めての共演にドキドキしました。これまで彼の作品を見て、本当にいい仕事をしている人だなあというのはいつも思っていました。
藤原:僕、現場で初めてお話したときに、『狼と豚と人間』っていう北大路さんの作品が大好きだって話をしたんです。その映画から、北大路さんって地べたをはって、泥からはい上がってきたような狂気を漂わせている人……という印象がありました。
北大路:その映画のとき、僕はハタチだったんだよ。それが、会ってみたら67歳でしょ? こんなまぬけなおじさんで悲しかったでしょ?
藤原:いえいえ! でも現場に入った初日、誰が最初に欣也さんに声を掛けるんだろうって、ドキドキしちゃって、なかなか声を掛けられなかったんです。でも、その好きな映画の話をしてから、たくさんお話をしてくださって……。
Q:北大路さんは、まさに日本映画全盛期のスターですものね! 貴重なお話をたくさん聞けたのでは?
藤原:はい! 本当に豪華な話ばかりで! 今も、邦画は盛り上がってきているといわれていますけど、当時の話を聞くと、やっぱりまだまだ……って思いますね。あのころの映画を、本当に復活させたいです!
中田監督って、永遠の映画少年のような方でしたね
Q:この作品は、ドキドキするミステリーですが、完成した作品をどうご覧になりましたか?
北大路:非常に面白かったです。こういうハラハラドキドキを、今の人間社会は求めているのかなって思いましたね。
藤原:この映画って、ミステリー作品でもあるんですけど、エンターテインメント作品でもあるんですよね。出ている役者陣もバラバラですごく面白いなって思いました。
Q:本当に豪華なキャスト過ぎて、誰が死ぬのかも、予測不可能でした!
北大路:そうなんだよね。本当に周りがみんなすごい俳優さんばっかりだから、その分、主役の竜也くんが、中心で、揺るがない心で演技をしていかなきゃいけない。彼の心が崩れると、みんなガタガタと総倒れになっちゃうんだよね。そういう作品なだけに、竜也くんもエネルギーが必要だったでしょ?
藤原:はい(笑)。確かに大変でした。
Q:10人の実力派の役者さんがそろった、現場でのチームワークはいかがでしたか?
北大路:やっぱりピラミッドがきちっとできていた。そういうものを、現場で何げなく作ってしまうのが、藤原さんのすごいところです。作品に対する気持ちをみんなが感じたときに、現場は動いていくんです。だから、本当に大変だったと思うよ。
Q:中田監督は、ホラー映画の第一線で活躍している監督ですが、現場でどんな演出をされるんでしょう? ほかの監督と違うところはありますか?
北大路:監督は、録音技師さんのように、ヘッドホンをしているんですよ。だから、普通は録音部さんからくるNGが、直で監督からくる。「うーん。微妙に、ちょっと!」って言われるんだけど、その微妙さがね。難しい。
藤原:中田監督って、本当に永遠の映画少年のような方でしたね(笑)。俳優って、「今はこういう気持ちだから、よし! 行くぞ!」みたいなのがあるんですけど、今本番を撮ってもらえたら行ける! っていう瞬間に、「よーい! 今あなたはこういう気持ちで、こういう状況で、こうこうこうやって、そういう感じで……きた! きた! よーい、スタート!」って、よーいからスタートまで1分くらいあるんですよ(笑)。現場の雰囲気や臨場感を少しでも盛り上げようとしてくださる姿勢が好きでした。なので、「監督、それはちょっと要らないです」とは言わなかったです(笑)。
いざってとき、女性は本当に強くて、男ってけっこう弱い
Q:作品の中の女性たちに強さを感じました。女性たちの強さをどう思われましたか?
北大路:すごいですよね。でも、僕は現実世界でも、女性は強いといつも思っていますから(笑)。いざってとき、女性は本当に強くて、男ってけっこう弱い! この映画の中でも、「生きる」っていうせりふを言っているのは、女性のキャラクターがやっぱり多かったですね。
Q:作品には、たくさん武器が出てきましたけど、お二人はどの武器を持ちたいですか?
藤原:僕はやっぱり『仁義なき戦い』シリーズの印象が強いので、欣也さんには、拳銃を持っていてもらいたいですね!
北大路:そう? おれ、案外、カチ割り氷(アイスピック)がいいかも! なんか、おれらしいじゃない!?
Q:暗鬼館のセットは、スタジオの中にまるまる建てられたそうですね。
北大路:うまく作られていてね! 暗鬼館の中に入ってみたら、本当にどこにいるのかわからなくなってしまうような不気味な感じがして、すごかったです。
どっちがお父さんだかわからなかった
Q:作品の中での、お二人の関係がとてもすてきでした!
北大路:なんかね、どっちがお父さんだかわからなかった。お酒をやめるようにアドバイスされたり、彼に教育されて、いい人間になっていくんだよ。問題児を更正する校長先生みたいだったね。だから僕は、いつも彼にくっついていた! 現場でも! でもそうすると、どんどん離れて行っちゃうんだよ。
藤原:いやいや(笑)。そんなことはないです。僕にとって、北大路さんとの共演は貴重だったので、本当に楽しかったです。いつかまた、地べたをはいつくばっているような映画でも、ご一緒したいです。
Q:この作品を通して、観客の皆さんに伝えたいことは、何ですか?
北大路:「武器は、抑止力になる」っていうセリフがあるんです。竜也くん演じている主人公の「武器を捨てよう!」という言葉に、誰かが、「抑止力になるから、持っていた方がいい!」って言うんだよ。それが、国際会議みたいに思えちゃってね。核兵器を持っている国と、持っていない国っていう。人を信じることができるようになれば、何も要らなくなるんだよね。「信じよう!」って叫び続ける主人公は、何だか広い世界に向かって、その言葉を叫んでいるように感じたよ。
藤原:欣也さんの話を聞いても思ったんですけど、人とのつながりだとか、社会への警鐘だとか、いろんなことが出てくるんです。でも、僕としてはまず、エンターテインメントとして、単純に楽しんでもらいたいなと思います!
命を懸けた戦いの中で、だんだん固いきずなで結ばれていく二人の男。親子ほど離れた年の差だが、演じた藤原と北大路も、現場という空間で、役者同士のきずなを深めたようだ。映画の中では、「生きる」という目標に向かっていった二人だったが、藤原と北大路もまた、「いい演技をする」という目標を胸に、ただひたむきに己の道を追求していることが、楽しそうに現場の思い出話をする、二人の表情から伝わってきた。藤原と北大路だけではない。それぞれが真摯(しんし)に演技の道を追求している役者10人の心理戦が繰り広げられる本作では、その演技戦にも注目してほしい。
(C) 2010「インシテミル」製作委員会
映画『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』は10月16日より全国公開