映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』黒木メイサ 単独インタビュー
ヤマトが多くの人に愛されていることを実感しました
取材・文:斉藤由紀子 写真:吉岡希鼓斗
1974年にテレビ放送され、壮大なストーリーとダイナミックな映像で社会現象を巻き起こした国民的アニメ「宇宙戦艦ヤマト」が、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督の手によって実写映画化された。人類最後の望みを託されたヤマトの戦士たちが、はるかかなたのイスカンダル星を目指して壮絶な旅を繰り広げる! 木村拓哉ふんする主人公の古代進と恋に落ちる女性パイロット森雪を演じた黒木メイサが、現場での苦労や木村との初共演についてなど、撮影のエピソードを語った。
ヤマトが大好きなキャストやスタッフが集結!
Q:冒頭のナレーションやBGMなど、ヤマトファン感動の演出が満載ですが、黒木さんは原作アニメをご覧になりましたか?
映画に出演することが決まってからアニメを観たんですけど、それまでは戦艦が宇宙を飛ぶイメージくらいしか持っていなかったんです。あんなにも人間ドラマが深く描かれているなんて思っていなかったので、ものすごく感動しました。その後に映画の台本を読み返したら、原作との相違点がとても興味深かったです。
Q:熱烈なファンが多い作品だけに、実写版への参加はプレッシャーもあったのでは?
それはありましたね。この作品への出演が決まってから、「森雪をやるんだって? 頑張って!」とか、今までにないくらい声を掛けられるようになったんです。「ヤマト」という作品が多くの人に愛されていることを実感しましたし、その分、プレッシャーも感じました。でも、実際に撮影が始まると、木村さんをはじめ、ヤマトが大好きなキャストやスタッフがたくさんいて、とても熱い現場だったんです。その中で皆さんと一緒に作品をつくっていくのは心地良かったです。
Q:VFXを駆使したCG映像が見どころですが、撮影も特殊だったのではないですか?
ブルーバックでの撮影ばかりだったので、わたしにとってはかなりの挑戦でした。いつもなら現場にあるものがお芝居のヒントになるのに、今回は助けられるものが何もなくて……。ただ、山崎監督がつくりかけのCGを見せてくださりながら、その都度細かく説明してくださったので、何とか頑張ることができました。監督もすごく熱さを秘めている方で、説明するときの身振り手振りがすごいんです(笑)。
Q:ご苦労された分、完成版をご覧になったときの感動も大きかったのでは?
もう、びっくりしました! VFXが本当に素晴らしいし、スケールも大きくて、衝撃というか圧倒される感じでした。でも、内容が家族愛や仲間との友情など、心がほっこりするようなエピソードが多いので、圧倒されながらも落ち着いて観られる作品になったと思います。
いろんな意味でつらかった
Q:今回演じた森雪は、オリジナルよりも男勝りなキャラクターですね。
そうですね。ちょっと強がっていて素直になれないところがあるんですけど、古代さんと一緒に行動する中で心を開いていって、どんどん変化していく女性なので、最初と最後のギャップが出ればいいなと思いながら演じていました。
Q:女性のエースパイロットという設定も新鮮でした。演じる上で何か準備したことはありましたか?
あったかなあ……? あ、ありました(笑)! 敬礼の仕方や銃の扱い方など、木村さんたちと一緒に自衛隊の方に指導していただいて、撮影前にみっちり練習しました。
Q:実戦の過酷さを何度も経験する役なので、撮影中につらい思いをされることもあったのでは?
わたしはクランクインがほかの方よりも遅かったので、初日にヤマトが最後の戦いに挑むクライマックスシーンを撮影したのが一番つらかったです。やっぱり、いきなりあの空気感に入っていくのが大変でしたね。監督からも、「初日に入る前に現場でリハーサルをやった方がいいね」と言っていただけたので、リハでだいぶ雰囲気をつかむことができました。あとは、木村さんがキャストやスタッフをグイグイ引っ張ってくださったので、そこに巻き込まれていくような感じでした。
木村拓哉は、どこで何をしてくるのかわからない!?
Q:木村さんは気配り上手な方だと伺っています。ご一緒していかがでしたか?
木村さんの気配りが、現場の空気感をつくっていたのかもしれません。みんなの中心に立つ方というのは、こうでなければいけないのだなと勉強になりました。ワンシーンしか絡みのない役者さんもいれば、共演シーンの多い役者さんもいますが、木村さんはどんな人に対しても接し方にまったく差がないんです。本当にみんなを一つにしてくれるので、古代進の役にピッタリでした。撮影が終わった後も、みんなで一緒に食事をしようと木村さんから誘ってくださったりして、すごくありがたかったです。
Q:お二人のシーンでは、古代が雪の鼻をはじくなど、アドリブかな? と思うところもありましたが?
ありましたね(笑)。木村さんは、カメラテストと本番で違う演技をされたりするんです。どこで何をしてくるのかわからないので、「笑ってしまったらどうしよう、途中で演技が止まってしまうかも」という不安は、正直ありました。でも、それがいい意味での緊張感になっていたような気がします。ラブシーンも木村さんがリードしてくださったので、わたしは全体重を掛けさせてもらいました。
Q:ラブシーンといえば、雪が古代の乗った戦闘機の窓にキスマークを付けるシーンがすごくキュートでした。
あのシーンは、事前に撮影する日が決まっていたのに、監督と木村さんが話し合いをされて、撮影を最後の方に変えてしまったんです! もっと二人のシーンを撮ってからの方がいいのではないか、という判断だったんですけど、逆に緊張しちゃいますよね。そこに向かって気持ちをつくっていたのに、また緊張しながら撮影の日を待つことになってしまいました。
「やるしかない!」という強い気持ちが大切
Q:乗組員たちの「できなくてもやります!」という言葉が印象に残りました。どんな状況でも「やる」と言い切る覚悟や強さは、役者というお仕事にも必要なのではないでしょうか?
必要ですよ! 正直、「逃げられるものなら逃げたい」と思うときもありますけど、そんなこと言っていられないし、そこをどう乗り越えていこうかというのは常にあります。「やるしかない!」という強い気持ちと、それをやるためにどう準備するのかが大切なのだと思います。それに、このお仕事には正解がないじゃないですか。もしも10年後に同じキャストでこの作品をつくったとしたら、全然違う作品になると思うし。正解がないから大変だけど、そこがやっていて楽しい部分でもあるから辞められないんですよね。
Q:命を懸けて愛する人を守ろうとする本作の登場人物から、何か影響されたことはありますか?
ヤマトの乗組員たちのように、愛し合っているのに離れなければいけないとか、誰かのために自分の命を犠牲にするとか、そういった感覚ってなかなか普段は感じられないものですが、この作品を通していろいろなことを考えさせられました。わたしはどんなことにもすぐ慣れてしまうタイプなので、日々の生活が当たり前になってしまっているなと強く感じました。これから映画を観る方にも、「何が大切で、何のために生きるのか?」とか、「毎日をどう過ごすべきなのか?」といったことを、改めて考えるきっかけにしてもらえたらうれしいです。
クールビューティーと呼ぶにふさわしい落ち着きと高貴な雰囲気を漂わせながら、時折見せる笑顔がたまらなくキュートな黒木。本作の撮影は、「今までにないくらいの緊張感だった!」と語る彼女だが、その分、得るものや学んだことも多かったようだ。また一つ大きな山を乗り越え、女優としての幅をさらに広げた黒木の熱演と、原作アニメを愛するキャスト、スタッフの情熱がそこかしこに感じられる実写版「ヤマト」の迫力を、大スクリーンで味わってもらいたい。
(C) 2010 SPACE BATTLESHIP ヤマト 製作委員会
映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』は12月1日より全国公開