映画『チェブラーシカ』大橋のぞみ、北乃きい 単独インタビュー
のぞみちゃんはチェブラーシカにぴったりだと感心しました
取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美
ロシアで最も愛された人形アニメーションを日本人監督のもと27年ぶりに映画化したシリーズ最新作『チェブラーシカ』。ロシアでどう受け入れられるのか興味深いところだったが、プレミア上映され大好評を博した。そんな本作で日本語吹き替え版の声優を務めたのが、大橋のぞみと北乃きい。チェブラーシカ役の大橋と、日本語版独自のキャラクター、マーシャを演じた北乃に、さまざまな話を聞いた。
初めてのロシア、あこがれのロシア、気になる本国でのリアクションは?
Q:のぞみちゃんは、ロシアの人に『チェブラーシカ』を観てもらうためにモスクワに行ったそうですが、初めてのロシアはどうでしたか?
大橋:小さい子どもがすごくかわいかったです。あときれいな色の建物とかお家とかがたくさんありました。外国には、前に台湾にお仕事で行ったことがありますが、同じ外国でも全然違うと思いました。それから、ロシアの男の人はみんな大きいと思いました。
北乃:わたしはロシアに行ったことがないので、本当に行ってみたいです。実はバレエを8年間ほどやっていたので、バレエを仕事にしてロシアで活躍したいと思っていたほどなんです。
Q:ロシアの人たちが日本人の監督が作った映画『チェブラーシカ』を観ているところをのぞみちゃんは近くで見ていたと思いますが、ロシアの人の反応はどうでしたか?
大橋:のぞみじゃないんですけど、日本の人が、ロシアの人に映画の感想を聞いたら「とても気に入ったよ。人形がよくできていてキレイだった」って。
北乃:日本人がオリジナルで考えたストーリーで映画化というのは、前例がなくてとても珍しいことだと何かの記事で読みました。すごくドキドキしましたが、反響が良かったそうなので安心しました。実際、元の世界の雰囲気は崩されていないし、日本人にも観やすいようになっていて、大人が観ても楽しめる内容ですよね。わたしが演じたマーシャはオリジナルのキャラクターなので、その感想は特に気になります。マーシャをロシアの声優さんが吹き替えているなんて、かなり感動的ですよね!
演技はしていない!?そのままの大橋のぞみと、彼女に助けられた北乃きい
Q:のぞみちゃんは、北乃きいさんとは一緒にアフレコをしたのですか?
大橋:アフレコをするときは1人だったので、北乃さんとは会えなかったんです。でも、試写会のときに少しだけお会いすることができて、「チェブラーシカの声、上手だったね」って、褒めてくれたのでうれしかったです。
北乃:以前、1度ご一緒したことがありますが、2年ぶりにお会いしたら、大きくなっていてびっくりしました。わたしがアフレコしたときは、のぞみちゃんの声が入っていて、そこを基準にして演じれば良かったので、けっこう助けられてしまいました(笑)。声が温かくて、うらやましい。元気だけれど、どこか寂しい感じが残っていて、ああ、チェブラーシカにぴったりだなあと感心してしまいました。
Q:声だけでお芝居することの難しさなど、改めて何か気付いたことはありますか?
北乃:声優は、ほぼ経験がないんです。ポケモンで大人の感じの女の子を演じて、『スパイダーマン』で吹き替えをしたくらいで。こういうかわいい女の子の役も初めてでしたし、幼い感じの女の子を演じるために、普段よりも声を高くすることを意識しました。それと、声で表情を出すことが難しかったですね。
大橋:わたしは特に意識しないで演じました。チェブラーシカの顔とか見ていると自然とチェブラーシカの気持ちになっちゃうんです。
北乃:ベースがロシア語なので、日本語のセリフとのタイミングが難しかったんです。同じ意味の言葉でも日本語の方が短いと、人形の口は開いているので、ゆっくりしゃべらないといけない。その点は苦労しました。日本語で作られたポケモンとは全然違うので、どちらかといえば、『スパイダーマン』のメリー・ジェーン役の経験を思い出しながらアフレコに役立てていきました。
正体不明の謎の生きもの、チェブラーシカの第一印象は、猿!?
Q:チェブラーシカは正体不明の生きものといわれていますが、初めての出会いや、初めて見たときの感想を教えてください。チェブラーシカはどういう性格だと思いましたか? それからチェブラーシカといつも一緒にいるワニのゲーナのことはどう思いましたか?
大橋:チェブラーシカは、最初は猿だと……でもよく考えると耳が大きいので、耳以外は猿だと思いました。性格はなまけものかな。ゲーナは物知りだと思いました。お父さんみたいに頼れるって。でものぞみのお父さんとはちょっと違います。お父さんは50パーセントくらい言っていることがジョークなんです。
北乃:『チェブラーシカ』がロシアの国民的なアニメーションということは知っていました。わたしとチェブラーシカの最初の出会いは高校生ぐらいで、友達から教えてもらいました。今のスタイリストさんが大ファンで、彼女の携帯電話はチェブラーシカ一色なんです。そういった身近な人たちからの影響は大きかったですね。だから最初にお話をいただいたときはとてもうれしかったですし、楽しみでした。
Q:チェブラーシカもマーシャもすごく頑張り屋さんの性格が共通すると思いますが、ご自身の性格はいかがですか?
大橋:わたしはのんびりしていると思います。眠いときはすぐ寝ちゃうし。
北乃:わたしはおばあちゃん子なので、おじいちゃん思いのマーシャが好きになりました。おじいちゃんが大好きで、その再会を望み続けている心情には、とても共感しました。気持ちとしてリンクしていたので、入りやすかったです。それとマーシャはチェブラーシカやゲーナという仲間たちと出会って、強いきずなで結ばれていきますが、マーシャがあそこまで頑張れるのは、チェブラーシカやゲーナがそばにいて応援してくれたからですよね。そういうテーマは、小さな子どもが観ながら勉強できる要素かなと思いました。こんな時代ですし、いいなあと思いましたね。
個性豊かなキャラクターと、CGでは出せない温かい映像が魅力的!
Q:映画『チェブラーシカ』の魅力を教えてください。ほかにお気に入りのキャラクターがいればその魅力も教えてください。
大橋:チェブラーシカが何よりかわいいし、癒やされると思います。チェブラーシカのほかに好きなのは、レフ・チャンドルやシャパクリャクやゲーナも大好き。シャパクリャクは、いじわるだけど、何でも「自分もできるよ!」っていろいろなことに挑戦して、いつも失敗しちゃうところが面白いと思います。
北乃:画(え)が温かいですよね。CGではなく、実際にお人形さんのキャラクターを撮影しているので、そこに温かみがありますし。わたしはキャラクターの目が好きです。そこには何か訴えるものがあって(笑)、吹き替えをしながら目が印象的だなとずっと思っていました。そういうことってあまりアニメーションを観ていて思わないので、初めての感覚でしたね。
Q:これから映画を観る人に『チェブラーシカ』の映画のお薦めポイントを教えてください。
大橋:いろいろな個性のキャラクターが出てきます。どのキャラクターも面白いので楽しく観てください。
北乃:わたしは、日本のアニメーションのように友達とのきずなをピンポイントにガッツリ描くのではなくて、語り過ぎずにサラッと描いている点が好きです。言葉じゃなくて、行動で友情を示すチェブラーシカたちに感動するのではないかと思います。
『崖の上のポニョ』の主題歌では小さな妖精が歌っているかのように不思議な魅力で、日本中の子どもから大人までをとりこにしてしまった大橋のぞみと、実力派の女優として映画やテレビドラマで活躍しながら声優としても高い評価を得ている北乃きいが共演した本作。日本人が作るというプレッシャーを跳ねのけ、チェブラーシカやマーシャをまるで実在するかのように魅力的に演じ切った彼女たちの奮闘があったからこそ、国境を越えて大きな感動をもたらしたのだろう。そんな新生『チェブラーシカ』を、冬休み映画の1本に選んでみてはいかがだろうか。
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映画『チェブラーシカ』は12月18日より全国公開