「24 TWENTY FOUR ファイナル・シーズン」キーファー・サザーランド 単独インタビュー
ジャックというキャラクターを男として尊敬している
取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美
2001年にアメリカで放映が開始されて以来、本国だけでなく全世界で絶大な人気を集めてきたドラマシリーズ「24 TWENTY FOUR」がついにファイナル・シーズンを迎えた。本作のプロデューサーを務めながら、テロリストからアメリカを守るために奮闘する主人公、ジャック・バウアーを演じ続けてきたキーファー・サザーランドが、長年にわたりかかわってきた本作への思い、そしてついに始動した映画化の企画について語った。
すべての撮影が終了した日は、胸がいっぱいだった
Q:久しぶりの日本はいかがですか?
昨日着いたばかりなんだけど、ゆうべ六本木の街を一人で歩いたんだよ。アメリカから持ってこられなかったひげそりクリームが買いたくてね。日本語がまったくわからなくて困っていると、知らない日本の人が助けてくれて。こんなに安心して、夜中に外を歩けるなんて素晴らしい国だね。
Q:「24 TWENTY FOUR」は日本でもすごい人気を獲得しましたね
この作品を長年にわたって制作できたことは、自分のキャリアや、人生においてとても大きなものになったと思う。ここまで続けられたのは、海外での成功があったからだけど、その大きなきっかけになったのが日本でのヒットだった。この国での人気がなければ、アジアでの大ブームはなかったと思う。だから日本のファンには、心の底から感謝の気持ちを伝えたいんだ。
Q:シーズンが完結した今、その気持ちを聞かせてください
すべてのシーズンを誇りに思っているよ。もちろん人間だから、あそこはもう少しこうすれば良かったなっていう部分も、今振り返ればあったりもするけどね。
Q:撮影の最終日は、どんな気分だったか覚えてらっしゃいますか?
撮影の6か月間、最終日に向けて、ずっと心の準備をしていたんだよ。このドラマのクルーとは、最初のシーズンからずっと一緒に働いてきたんだけど、その間に16組が結婚して、30人の赤ちゃんが生まれた。そのすべてに立ち会ってきたから、彼らは僕にとって家族以上の存在だったんだ。だから、すべての撮影が終わって、クルーたちに向かって感謝の言葉を伝えているときは胸がいっぱいだったよ。このドラマが終了することが寂しいだけじゃなくて、クルーのみんなとの別れもすごくつらかったんだ。
拷問シーンの撮影は、精神的に疲れ切った
Q:ジャック・バウアーという男は、あなたにとってどんな存在でしたか?
ジャックのすごいところは、異文化の、違う言語を話す国の人々にも共感されるところなんだ。彼のように仕事と家庭の両方の板挟みになっていたり、自分のやりたいことを思うようにできなかったりする状況にいる人は、どんな国にもいると思う。彼のそういうグレーな部分で必死に頑張っているところが、視聴者の共感を呼んだのだと思うし、僕自身、男として、役者としてとても魅力を感じていたよ。
Q:シーズンを通して、このドラマから学んだことはありましたか?
普通映画や演劇では、作品ごとに演じるキャラクターは大きく変わるよね。でも、ドラマでは何シーズンにもわたって同じ人物を演じるから、とても変化が少ないんだよ。でも、このシリーズでは、劇中のジャックの周りで起きた出来事が彼の内面にたくさんの変化をもたらしたんだ。人生と同じだね。8シーズンのうちに、そういう変化が100を超えて、彼の人格を変えていった。そういった、アプローチを変えながら役柄に除々に重さを加えていく経験は、自分の役者生活の中でも初めてだったからとても興味深いものだったよ。
Q:このドラマを観ると、ジャックのように、どんなことでもできるような気分になってしまいます。あなたも現場で彼を演じた後、そんな気持ちになることはありましたか?
現場では同じアクションを何度も何度も繰り返すんだ。だから、撮影が終わったときにはもうクタクタで、とにかく家に帰りたいんだよ。それが、僕とジャックとの大きな違いかな。でも確かに、そういう気分になる瞬間は何度もあったよ。爆風の中を走り抜けたり、爆発寸前のところで爆弾を解除したりしていたら、つい自分が普段よりも強くなった気持ちになってしまうんだ。
Q:拷問シーンの過激さも話題になりましたが、演じるのは大変でしたか?
ああいったシーンは特にきつかったね。12時間以上も相手をイジメ抜くっていう行為をすると、精神的に疲れ切ってしまうんだ。だから、自分の精神状態をコントロールするすべを学ぶ必要があったよ。
映画でも、ジャックはひどい状態に追い込まれるよ!
Q:ジャックのロマンスもファンには見逃せないところでしたが、彼の恋愛事情についてはどう思っていましたか?
彼にとって最大の悲劇は、彼が愛した女性はみんな素晴らしい人たちだったのに、結局みんな失ってしまったことだと思うんだよね。だから、彼女たちの一人だけでも、ジャックと幸せになってほしかったと思うよ。
Q:日本のビジネスマンの中には、忙しくて恋人を作る暇がない! と言う人もいますが、ジャックはどんなに忙しくても恋をしていますよね。
僕には「あと少しで自分が死ぬことになってしまったら、とにかくキスする相手を見つけろ!」 っていう恋愛の哲学があってね。日本のビジネスマンはきっと、ジャック並みに忙しいと思うけど、たとえエレべーターに乗っているときでも恋のチャンスを探さないとダメだよ。いつその場所に女の子と閉じ込められるかわからないんだから!
Q:ファイナル・シーズンでは、ジャックが孫と接するシーンがありますね。あなた自身にも、お孫さんがいるそうですが、演じていていかがでしたか?
シーズン5くらいから、ドラマが結構暗いムードになってきていたから、孫はすごく明るい存在だったね。ジャックは、(娘の)キムにしてあげられなかったことを、孫にしてやりたいと思っているんだ。孫役の子はすごくかわいい女の子だったから、彼女とのシーンは演じていてとても楽しかったよ。自分の娘はもう大学を出ているから、子どもと一緒にクレヨンで絵を描いたりして遊ぶのは、久しぶりだったね。
Q:ファイナル・シーズンの見どころは?
今回のシーズンを制作する前に、脚本家と決めたことは、すべてのエピソードに最高の見せ場を作っていこうってことだった。だから、どの話も一瞬も画面から目が離せないハイテンションな作りになっていると思う。特に最終話は、登場人物すべてに危機が訪れるから、ぜひ最後まで楽しんでもらいたいと思っているよ!
Q:ファン全員が楽しみにしている、映画化について聞かせてください
シリーズが続いている間は、一度も映画化について考えたことはなかったんだ。でもシーズンが終わった今、僕たちは本格的に映画化へ向けて動いているよ。映画とテレビの大きな違いは、やっぱり展開をリアルタイム進行にはできないところだね。今までは、物語に時間の制限があったから、例えば劇中アメリカから日本に移動するなんてことは無理だったけど、映画では可能になるから、その辺りも面白くなるんじゃないかな。ただ、一つだけ変わらないのは、みんなの期待通り、映画でもジャックはひどい状態に追い込まれるってことだよ。
8シーズンという長い間、ジャック・バウアーを演じてきたキーファーの言葉は、スタッフへの、そして作品への愛にあふれていた。このドラマがここまで盛り上がったのは、彼の情熱、そしてクルーへの愛情があったからだろう。そして、シリーズが終わった今も、彼の中にある情熱はまだまだ消えていない。リアルタイム進行という制限が外された分、映画版の可能性はさらに広がったと語る彼の頭の中には、スクリーンでジャックが活躍する姿がすでに描かれているようだった。スクリーンで再びジャックに会える日を楽しみにしながら、まずはファイナル・シーズンの衝撃を味わってもらいたい!
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