『犬とあなたの物語 いぬのえいが』大森南朋、松嶋菜々子 単独インタビュー
犬にはいろいろな表情があって、すごく癒やされます
取材・文:斉藤由紀子 写真:田中紀子
犬と人との心温まる物語をつづった映画『いぬのえいが』の第2弾、『犬とあなたの物語 いぬのえいが』が完成した。劇中の1編である「犬の名前」は、病に侵されてしまう夫の一郎(大森南朋)と、彼を必死に支える妻の美里(松嶋菜々子)が、愛犬によって救われていく姿を描いた感動ドラマ。映画『西の魔女が死んだ』の長崎俊一監督がメガホンを取った本作で初共演を果たした大森と松嶋が、撮影中に体験した犬との面白エピソードなど、ほのぼのトークを繰り広げた。
夫婦を演じたお互いの印象
Q:夫婦役のお二人がとてもお似合いでした。共演されていかがでしたか?
大森南朋(以下、大森):松嶋さんはとてもナチュラルで、何ともいえない柔らかい空気をまとっていらっしゃるんですよ。撮影現場でも、松嶋さんのことを遠くの方からジーッと眺めたりしては、目が合うとそらしてみたりしていました。
松嶋菜々子(以下、松嶋):そんな……。
大森:いや、本当にすてきな方だなと思いました。
松嶋:大森さんはすごく落ち着いていらっしゃったので、もしかしたら、わたしよりもかなり年上なのかな? と思っていたんですけど、実際は1歳上だったんですよね。ほとんど同じくらいの年齢なのに、本当に落ち着きがあって奥の深い方で……。
大森:はい。僕は小学生の頃から「落ち着いている」って言われ続けてきましたから。
松嶋:そうなんですか?
大森:ええ。一重まぶたで物憂げな目をしているから、いつも何かを深く考えているように見えるらしいんです。
松嶋:でも、声も本当にすてきですし、初めてお会いしたときは作品で拝見しているイメージのままでした。ちょっとユーモラスなところもあって、すごく魅力的な方です。
大森:ありがとうございます。
愛犬ラッキーの絶妙な演技
Q:夫婦の愛犬ラッキーとの自然な演技が印象的でした。
大森:彼女(ラッキー)はとても頭のいい女優さんでした。まず、僕らの前でじっと落ち着いて座っていてくれるし、ちゃんと歩いてくれる。それも、場面ごとにゆっくり歩いたり、向こうから走ってきたりするんです。それって、実は簡単なことではないと思うんですけど、彼女はサラッとやってのけてくれるんですよ。
Q:とはいえ、撮影中に思わず笑ってしまったこともあったのではないですか?
大森:ありました。まず、毎朝現場の駐車場に行くと、ドッグトレーナーさんの車の助手席に犬が座っているんです。それがおかしかったですね。
松嶋:犬というよりも、役者さんの現場入りのような感じでしたよね。
大森:そうそう、「あ、僕らよりも現場入りが早かったんだ!」みたいな。そして、ドッグトレーナーさんが車の窓を開けてくれて、ワンちゃんとあいさつしてから一日が始まるわけです。もう、そこからして面白かったですね。
松嶋:わたしの場合は、美里を気遣ってくれたラッキーが、目の前に近寄ってきて座るというシーンがあったんですけど、あまりにも近づき過ぎて、顔のすぐそばで「ハウッ!」って息を吐くんです。それがもうおかしくて……。
大森:あー、わかるなあ。
松嶋:そのときのわたしは、犬すら目に入らないくらい深刻に考え込んでいるお芝居をしていたので、絶対に笑ってはいけなかったんです。でも、あれには耐えられませんでした。そのせいで何度も撮り直すことになってしまって、本当に申し訳なかったです。
シリアスな演技の中での救い
Q:病でどんどん変化していく一郎と、精神的に追い込まれていく美里、2人の姿に圧倒されてしまいました。
大森:あれが実際の変化だとしたら、本当に大変なことですよね。
松嶋:ただ、病と闘う描写というのは、どんなに想像しても想像しきれない部分がありますよね。そこが難しいところでした。本当にこうなってしまうのだろうか? という戸惑いが自分の中にあって、その気持ちが一郎の変化に戸惑う美里と重なりました。今回は、夫の病という問題に直面した美里がラッキーに助けられ、新しい家族観を見いだしていくことを大切に演じました。
Q:シリアスなシーンが続いた分、ラストの一郎の笑顔に胸が熱くなりました。
大森:あのシーンがあって救われるわけですからね。あのときの一郎は、完全に子どもの頃に戻っていましたから。少なくとも、僕はそう解釈していました。でも、この作品の撮影をしている間は、「自分が一郎だったらどうするだろう?」とか、いろいろなことを考えてしまって、とても悲しい気持ちでいっぱいになってしまいました。
Q:そんなとき、映画で夫婦を救ったラッキーのように、現場でもワンちゃんの存在に助けられたこともあったのではありませんか?
大森:もちろんです! あのキョトンとした顔に何度もヤラれました。やっぱり、犬にはいろんな表情があって、すごく癒やされます。
2011年の目標は・・・・・・やっぱり犬が飼いたい!?
Q:ちなみに、お二人も犬を家族として過ごした経験がありますか?
松嶋:わたしは6歳の大型犬を飼っているんですけど、以前に飼っていた犬の子どもなので2代目なんです。生まれたときはわずか10センチくらいの体長だったのに、今ではラッキーと同じくらいの大きさになりました。小さい頃から成長していく姿を見ているので、とてもいとおしいですね。特に、大きな体をあおむけにして寝ているときの無防備な姿がかわいいです。
大森:僕は猫なら飼っていたことがありますけど、犬はないです。
Q:今回の作品で、犬を飼うのもいいなと思いませんでしたか?
大森:実は、何度も犬を飼いたいと思ったことがあるんです。ただ、一人で住んでいるので世話をしきれない可能性も考えてしまって、なかなか決断できないんです。やはり、飼うからには責任がありますから。でも、いつかは飼いたいなと思いました。
Q:最後になりますが、お二人の2011年の目標や、チャレンジしてみたいことがあったら教えてください。
大森:そうですね……2011年も一生懸命働きたいなと。あとは、やっぱり犬が飼いたいですね。
松嶋:わたしは、もっといろんな作品に出演できたらいいなと思っています。長崎監督とも機会があったらまたお仕事させていただきたいですし、大森さんともぜひご一緒したいです。(隣の大森に向かって)よろしくお願いします!
大森:いやいや、こちらこそ、ぜひお願いします!
リラックスした表情で取材に応じた大森と松嶋。2人とも犬の話をすることが楽しくてたまらない様子で、終始笑い声が絶えないインタビューだった。そんな大森と松嶋が名犬と共に出演した本作の1編「犬の名前」は、ユーモラスなエピソードが多い中でひときわ異彩を放つ、涙なしでは観られないエモーショナルな物語だ。笑いと感動とのバランスが絶妙な『犬とあなたの物語 いぬのえいが』を観れば、誰もが幸せな気分になれること請け合いだ。
(C) 2010「犬とあなたの物語」製作委員会
映画『犬とあなたの物語 いぬのえいが』は1月22日より全国公開