『映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~』BUMP OF CHICKEN 単独インタビュー
ドラえもんの4次元ポケットのように、いろんな気持ちが心からあふれた
取材・文:斉藤由紀子 写真:古溪一道
1986年に映画化され、今でも多くのファンを持つ「のび太と鉄人兵団」が、2011年、『映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~』として新たに生まれ変わった。地球侵略をもくろむロボットと、のび太たちとの戦いや友情を描いた本作の主題歌を書き下ろしたのは、音楽シーンでカリスマ的な人気を誇るバンドBUMP OF CHICKEN。大のドラえもんファンであるメンバーたちが、作品への思いや主題歌「友達の唄」の誕生秘話など、熱いトークを繰り広げた。
メンバー全員のドラえもんに対する熱い思い
Q:感動的な素晴らしい作品でした。ドラえもんファンの皆さんにとっても、最高のリメイク映画だったのではないですか?
直井:そうですね。僕らはオリジナルの映画が大好きなので、最初にリメイクすると聞いたときは絶対に崩されたくない部分やこだわりがあって、ちょっと斜めから見ているところもあったんです。スタッフの方にも、「僕らはまだ新キャラのピッポを認めていないんですよ!」と言っていたくらいなんです(笑)。でも、実際に観たらボロ泣きでした。大切なシーンはさらに良くなっていたし、新しい要素が入ったことでオリジナルに新たな視点が加わって、「そういえば、そっちの視点も欲しかったかも!」と思える仕上がりで、本当に最高でした!
升:オリジナルにあった、いい意味で淡々とした雰囲気が、今回は最初から畳み掛けるような感じになっていて、大人の僕もドキドキしました。
増川:原作よりも、さらに感動できるポイントが増えましたよね。大きな一つの感動じゃなくて、小さな感動の積み重ねが素晴らしい。こんな作品を観られる子どもたちがうらやましいくらいです。たぶん、今の時代にピッタリな作品になっていると思います。
藤原:みんなが言う通りです。最後になればなるほど言うことがなくなってきますね(笑)。
Q:皆さんにとって「鉄人兵団」は、ドラえもんシリーズの中でも特別な作品だったのですか?
藤原:いや、一番は選べないですよ。「鉄人兵団」だけじゃなくて、ドラえもんという作品のすべてが好きなんです。ビートルズの曲と同じで、どのアルバムのどの曲がいいのかと聞かれても、その時々で変わるような感じというか……。でも、そんな傑作ぞろいのドラえもん長編作品の中でも、「鉄人兵団」は3本の指に入る作品なんじゃないですかね。
3人:入っちゃいますねー!
4人が使ってみたいひみつ道具とは?
Q:ドラえもんといえば“ひみつ道具”ですが、本作にも魅力的なアイテムが多数登場します。今回出てきた道具を一つだけ使えるとしたら、何を選びますか?
升:僕は、この作品で初めて知った「おはなしボックス」がいいですね。今回はロボットの頭脳部分だったピッポが中に入って、ヒヨコのようにかわいくなりましたけど、僕が入ったらどうなるのか興味があります。
藤原:あれって、中に入るとなんでも親しみやすい形になるんだよね!
升:そう、だから、僕も角がとれて丸くなるんじゃないかと思うんです。でも、特徴の一部は残るみたいなので、僕の場合はホクロが残るのかな(笑)。
藤原:升くんが「おはなしボックス」に入りたいのなら、僕はスムーズに入れるように「スモールライト」で小さくしてあげようかな(笑)。そっと小さくして、親しみやすい形になった後に、元の大きさに戻りたいか本人に鏡を見せて確認します。
直井:僕の場合は、「メカ救急箱」ですね。僕らはいい音を出すためにビンテージのアンプを使っているのですが、修理代や維持費がすごくかかってしまうんです。でも、「メカ救急箱」があれば、薬を塗るだけで機械の状態が回復するので、新品に戻ると思うんですよ。どうですか、増川さん!
増川:いいと思います。じゃあ、僕はロボットを自由に操れる「サイコントローラー」を選びます。例えば、升くんが「おはなしボックス」で親しみやすくなったとしても、ちょっとメカっぽくなるかもしれないじゃないですか。そうしたら、サイコントローラーで操ればいいかなと思って。あと、飛行機や車など、どんなメカも自由に操れちゃうかもしれないじゃないですか!
直井:すっごく頭がいい! それ、一番使い勝手がいいじゃん!
一同:(爆笑)
「友達の唄」の制作秘話
Q:主題歌「友達の唄」についてお聞きしたいのですが、大好きなドラえもんの主題歌ということで、作詞作曲をするのは逆に難しかったのではないですか?
藤原:それが、楽勝ではなかったけど、そんなに難しくはなかったんです。僕にとって、ドラえもんといえばのび太なので、曲を作ろうと思ったときに、まずのび太のことを考えました。僕が遊んでいた公園にのび太はいなかったけど、子どものころから一緒にのび太と過ごしていたような気がしていて、その思いで胸が満たされたら、あとは、それが言葉やメロディーになって出て行ったような気がします。のび太は、ドジでマヌケでちょっとスケベなんだけど、どんなに危険なことに巻き込まれても、そこから逃げないでちゃんと向き合う勇気や優しさを持っていて、あこがれるところがすごくあるんです。
Q:ある意味、すごく人間らしいですよね。
藤原:そうそう。そんなのび太が救ってきたものの中に自分もいる。だからこそ今の自分があるとも思えるし……なんてところまで思いが至ったときに、メンバーやスタッフ、応援してくれるお客さんのことなど、これまで僕とかかわってくれた人たちのことが浮かんできて、自然に「友達の唄」というタイトルになったんです。歌詞の表現もストレート過ぎるかな、と思う部分もあるんですけど、本当に素直に思った言葉を並べていった感じなんです。のび太という存在を窓口にして、ドラえもんの4次元ポケットのように、いろんな気持ちが心からあふれて生まれた曲なんです。
メンバーは藤原の一番のファン
Q:では、藤原さんが生み出した「友達の唄」を最初に聴いたとき、直井さん、升さん、増川さんはどう感じましたか?
直井:真っ先にメンバーの顔が浮かびました。僕らは幼なじみなので、小さいころに基地で遊んでいたときのことなどが浮かんできて、涙が止まらなかったです(笑)。いつもは恥ずかしいから我慢するんですけど、あのときだけは我慢できなくて、「涙が出る」って藤原くんに言いました。
升:自然にドラえもんを読んだときの気持ちがよみがえってきましたし、「鉄人兵団」で流れることが本当にうれしくて、こういったタイミングで子どもたちに聴いてもらえることも幸せだなと思いました。
増川:本当に感動しました。もちろん、いつも藤原くんの曲には感動はするんですけど、今回は素直に言葉が並んでいる分、ストレートに泣けてしまうというか。きっと、誰が聴いても自分の友達や大切な人のことを思い出せる曲だと思います。
Q:今は卒業のシーズンですが、卒業式で歌ったらグッときちゃう曲ですよね!
直井:そう言ってもらえるとうれしいですね。僕、自分の卒業式で歌いたかったです。たぶん、歌っていたら泣いちゃったと思います。この記事をご覧になっている皆さんも、ぜひ卒業式で歌ってください!
藤原:この映画を観てくださるときも、できれば最後まで席を立たないで、僕らの曲も聴いてもらえたらうれしいです。
幼稚園のころから共に歩み続け、音楽活動を続ける中で、皆が大好きだったドラえもんの主題歌を手掛けるという幸運を手にしたBUMP OF CHICKENのメンバーたち。固いきずなで結ばれた彼らが歌う「友達の唄」ほど、友情の大切さを教えてくれる本作の主題歌にふさわしい曲はないのではないだろうか。世代を超えて愛されるファンタジックな物語と、その世界観を鮮やかに彩るエモーショナルな歌を、ぜひともスクリーンで体感してほしい。
(C) 藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2011
『映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~』は3月5日より全国公開