『塔の上のラプンツェル』中川翔子 単独インタビュー
ラプンツェルのように女子力を上げる努力をしたい
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
「髪長姫」として知られるグリム童話をベースに、伝統と新しさを融合させたディズニー長編アニメーション第50作記念映画『塔の上のラプンツェル』がついに日本公開! 本作は、約21メートルもある髪の毛に魔法を宿し、高い塔の上で育てられたヒロインのラプンツェルが、大泥棒フリンとの出会いによって外の世界に飛び出していくロマンチック・ファンタジー。その日本語吹き替え版でラプンツェルの声を担当した中川翔子が、心身共にヒロインに成り切って挑んだアフレコ体験など、作品への思いを明かした。
ラプンツェルは素晴らしい女の子!
Q:日本語吹き替え版のラプンツェルの声が、普段の中川さんとはまったく違うので驚きました。本当に素晴らしかったです!
本当ですか!? よかったー。そう言ってもらえるとすごくありがたいです。そうなれたらいいなと思ってやらせていただきました。最初にお話をいただいたときは、世界のディズニーの50作記念作品なので、スゴ過ぎて震えて、転げまわって喜んで、夢が覚めちゃったらどうしようって思うくらいうれしかったです。でも同じくらい責任を感じて、どうしたらいいのか悩んだんです。だから、金髪にしてみたり、カメレオン(ラプンツェルの親友・パスカル)を爬虫(はちゅう)類ショップに見に行ったり、ラベンダー色の洋服を着てみたり、意味のなさそうなところからやってみました。
Q:なるほど。まずは身も心もラプンツェルになろうとしたんですね。
誰かにあこがれて、少しでも近付きたい! と願うことから心が動いて、そこから始まることってあると思うんです。ラプンツェルは美しくてカッコよくておてんばで、抱きしめたくなるくらいけなげで、カメレオンが唯一の親友っていうのもスゴイし。本当にいろんな魅力のある新しいタイプのヒロインなんです。普通、お母様に「外に出るな」と言われて自分の人生を遮断されたら暗くなったりするはずなのに、彼女は外の光を見に行くという大きな夢を決して失わない。でも、お母様のことが好きだから、言われたことを守ろうとするマジメなところもあって、本当に素晴らしい女の子だなと思います。
Q:長編アニメの主役のアフレコは初めてとのことですが、現場はいかがでしたか?
初めは、どんな声色でいくのか打ち合わせをしてから本番に入るのかと思っていたんですけど、実際は「やりながら探っていきましょう」という感じだったので、プロの世界なんだなあとすごく感じました。ラプンツェルは18歳とはいっても、女の子というよりはレディーなので、低めの声を意識していました。興奮したときも、普段の自分だったら「トゥットゥルー!」ってなっちゃうけど、ラプンツェルはもっと大人な感じなんですよね。あとは、ラプンツェルに引っ張られたというか、息遣いや笑い方も、彼女だからこうなるんだな、という感じになっていったような気がします。本当にいつまでもアフレコをやっていたくなるくらいラプンツェルが大好きなので、最後の日は「終わりたくないー!」って心から思いました。
嫌いだった父も見た光
Q:閉じこもっていた塔から外に出て、どんどん変化していくラプンツェルがすてきでした。
外に出るのってすごく勇気が必要だけど、とても大切なことなんですよね。わたしにとっては、初めてのコンサートがまさにそうだったんです。ずっと一人だと思っていて、人が怖くて、泣いて泣いて……。でも、舞台に立ったときにたくさんの人が待っていてくれて、みんなから光をもらって。わたしは父(故・中川勝彦さん)が嫌いだったのですが、父も同じ光を見ていたのかなと思ったときに、すごいビッグバンを感じたんです。「自分なんかダメかもしれない……」と思っていても、外に出る決断をする時期ってあるんだなと実感しました。
Q:外に出れば、ラプンツェルのように恋のチャンスがあるかもしれませんしね!
そこなんですよ! ラプンツェルってかなり恋愛に積極的なんですよね。しかも彼女は、フリンへの思いに気付いてからどんどんキレイになっていく。恋って素晴らしいな、自分もがんばろう! と思いました。わたし、占い師の方に「モテ期ですよ!」って言われた時期があったんですけど、出会いが全然なかったんです。考えてみたら、ずっと家の中にいたなと(笑)。やっぱり、閉じこもっているだけじゃいかんですね。それにわたしって誰にも会わない日はスッピンで過ごしちゃうことが多いので、ちゃんとラプンツェルのように家から出なくてもダイエットを頑張ったり、ブラッシングをしたりして、女子力を上げる努力をしたいです。
Q:ちなみに中川さんは、フリンのような遊び人風の男性をどう思いますか?
フリンって、一見イケメン系で浮気しそうじゃないですか。だから、最初は「やだ! 無理!」って勝手に思っていたんですけど、実はすごくいいヤツなんですよね。自分を犠牲にしてまでも相手を思う彼は、本当に心が強い人だと思うので、ちょっとほれちゃいました。それに、ディズニーヒロインの相手なのに、王子様じゃなくて盗賊というのもスゴイ! アゴひげがあったりなど見た目も現代風で、「ディズニー新年代に突入!」って感じがして、そこもいいなって思いました。
髪の毛を使ったアクションにビックリ!
Q:ラプンツェルの長い髪を使ったアクションも見どころですよね。
髪の毛って女子力のパラメーターで、気分が変わる魔法のアイテムだったりするんですけど、それを、縛り付けるわ、引っ張り上げるわ、ぶら下がってグルグル回るわで、本当にビックリですよね。まさにジャッキー・チェンばりのアクションで、「ヒロインでしょ、あなた!」みたいな。あの長い髪をどうやって洗うのかすごく気になります(笑)。
Q:人々の病や傷を癒やし、若返らせる魔法の髪。もしもそんな魔法を持っていたら、どんなことに使いたいと思いますか?
ラプンツェルがお母様にしていたように、わたしも自分の母に若返りの魔法を使うだろうなって思います。母とは親友でもあり姉妹みたいな感じで、洋服も共有しちゃう仲なんです。要するに、わたしってマザコンなんですよ。あと、ラプンツェルのように魔法を使うときに髪が光るのって便利ですよね。わたしの家ってすぐ電気が切れるから、電気代わりになりそうです。
中川翔子の大いなる夢
Q:ラプンツェルには「外に出て不思議な光を見たい」という夢がありましたが、中川さんは今、かなえたい夢がありますか?
この間ロケで、5,000メートルの深海に行く夢がかなって、普通なら会えない生物に会えたのがうれしかったので、こうなったらやっぱり宇宙に行きたいですね。それから、わたしはアニメが大好きで、自分で絵を描くのも好きなので、いつか自分で考えた作品がアニメ化されて、声優もできたらうれしいです。たとえかないそうにない夢でも、「生きていれば何が起きるかわからない! 可能性はゼロじゃないよ!」ってラプンツェルが教えてくれたような気がするんです。
Q:ラプンツェルとの出会いで、夢が大きく広がったんですね。
そうですね。今回声優をやったことで、わたしは生きた証を残せるお仕事をしているなって改めて感じました。自分が死んでも、地球がある限りこの作品は残る。いつかまだ生まれていない子どもが観るかもしれないし、観てくれた子は、何かに勇気を持てるようになったりすると思うんです。
作品の素晴らしさと、そこに声優として参加できた喜びを、熱のこもったトークで伝えた中川。「3Dとしての完成度も素晴らしいし、古き良きディズニースピリッツが燃えていて最高!」という彼女の言葉通り、圧倒的な映像美とリアルな描写、そして、ディズニーならではの感動的なストーリーに、誰もが酔いしれてしまうはず。さらなる進化を遂げた華麗なるディズニーアニメーションの世界を、中川のパーフェクトな声の演技と共に堪能しよう。
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映画『塔の上のラプンツェル』は3月12日より全国公開