『婚前特急』吉高由里子 単独インタビュー
現場の空気がわたしを引っぱってくれた
取材・文:シネマトゥデイ 写真:吉岡希鼓斗
話題作『GANTZ』をはじめ、ドラマやCMと多方面で大活躍中の女優・吉高由里子。そんな彼女が映画『蛇にピアス』以来、約3年ぶりの主演作となる映画『婚前特急』で、初めてのラブコメディーに挑戦した。吉高が演じるのは、5人の彼氏の中から理想の結婚相手を探そうとするちょっと変わったOL・チエ。ジェットコースターのようなチエの恋愛をユーモラスに演じた吉高が、自身の恋愛観、そして本作の魅力を大いに語った。
5人の俳優たちとのキスシーン!
Q:こんなにいろんな人とキスする作品も珍しいですよね!
そうですね(笑)。5つの唇を総ナメするような、まさにコンプリート! みたいな感じでした。
Q:どなたとのキスが一番印象的でしたか?
個人的には、加瀬(亮)さんとのキスが一番恥ずかしかったですね。
Q:それは本作以外でも共演経験があるからですか?
加瀬さんは、プライベートでもいっぱい相談に乗ってくれるお兄ちゃんみたいな存在なんです。しかも、わたしの実の兄に顔が似ているんです(笑)。だから近づいてよく見ると、「唇の形とか似ているしなあ」とつくづく思ってしまい……。キスする直前なんて「うわあ~~、う~~」と思いながらしたという感じでした。よく知っている方だからこそ、なんだか恥ずかしかったですね。
Q:キスをするときの、理想のシチュエーションはありますか?
わたし、外でキスをしたことがないんです。なので、未経験のまま人生が終わってしまうのもイヤなので、いつかしてみたいですね。
Q:吉高さんは照れ屋さんなのですね!?
そうですね。恥ずかしいという気持ちもありますが、物心ついたころにはもうこのお仕事をやっていたからですかね。あとは、人前で「チュッチュ」するのは苦手なんです。とても恥ずかしいので。
Q:手をつなぐことも苦手ですか?
友達などにバッタリ会ってしまったら「最悪!」と思ってしまいます。そしてすぐにバッと手を離すみたいな(笑)。デビューする前に思春期ならではの甘い経験は済ませておけばよかったなと、ちょっと後悔しています。今、外でキスしたりなんかしたら、きっとすっぱ抜かれちゃいますもんね。
予想できないチエの恋!
Q:脚本を読んだとき、吉高さんは最終的に誰を選ぶと思いましたか?
脚本を読んだときは、あまりにもストーリー展開が速すぎて、チエの気持ちに追いつくことで精いっぱいでした。なので、誰とくっつくのかなって予想する前に、最後まで読んじゃいました。本当に面白い展開でしたね。
Q:どんどん思ってもいない方向へ進んでいく様には、チエ本人も翻弄(ほんろう)されている感じでしたね。
そう! どんどんプライドが高くなっちゃって、行動が空回りしていく感じなんですよね。自分でもチエを演じながら「もう全部が良くない方向に転がっているなあ、この人」と思っていました。
Q:本当にジェットコースターのような恋でしたが、彼女の心の変化やバランスは、どのように工夫して演じていたのですか?
現場の空気がわたしを引っぱってくれた感じですね。相手役のキャストの皆さんもそうですし、監督もスタッフも、みんな気合が入っている現場だったんです。
吉高流、カップルのケンカ極意!
Q:この映画にはたくさんのケンカシーンが登場しますが、吉高さんも「ケンカするほど仲がいい」というタイプですか?
けんかってなんか面倒くさいので、わたしはなるべく避けたいなあと思う人ですね。でも、お互いに「ごめんなさい」と謝れる勇気を持っていれば、いくらけんかしてもいいと思います。
Q:吉高さんは素直に謝れるほうですか?
謝れますね。わたしが「ごめんなさい」と言えば収まるんだなと思えば、そのほうが楽じゃないですか。うちの家族は父も兄も絶対謝れない人だったので、男の人は皆そうなのかなと思います。
Q:その点、女性は大人になれますね。
そうですね。でもちょっと本音を言うと、先にこっちが謝って、向こうが「別にもういいよ、ごめんね」という態度を見せたら、「やった! 言わせてやった!」と思ってしまう(笑)。わたしが素直に謝ったら相手も素直になるというのはいいことですよね!
時にすごい動きを見せる、コメディエンヌ吉高!
Q:初のラブコメでしたが、特に意識したところはありますか?
あえて笑わせようとはしていないところですかね。たぶん、作り手側が笑わせようとしているのが垣間見えたら、観客は冷めちゃうと思うんです。必死になればなるほど笑えると思ったので、わたしは常に必死でした。だからこそ、チエのあのひたむきさが笑えるのだろうし、いとおしく感じるのだろうなって思います。
Q:彼氏の家に忍び込むシーンでは、奇妙な動きを見せていましたね!
もうロボットみたいですよね!
Q:不思議な動きをしていて、大笑いしてしまいました! 隠れた見どころの一つだと思います。
体がカチコチで、人間っぽい動きじゃないなって自分でもわかってました(笑)。でも、彼氏の家に忍び込んだ途端に本人が帰ってきたら、絶対焦るじゃないですか。だから、とにかくちょっと動きを大きくして、焦ろうと思ったんです。それで実際にやってみたら体がカチコチで、そのままバーンっと倒れてみました。そしたら、ああいうロボットみたいな動きになりました。
Q:すごい勢いで倒れていましたね!
もう、どうにでもなれ! と思って、思い切りやりました。
Q:吉高さんのコメディエンヌぶりはうれしい驚きでした。女性も男性も楽しめる映画になりましたね。
チエのパワーが本当にすごいので、恋愛の活力に変わると思います。ラブコメって、恋愛のネガティブな部分もポジティブに変えられるし、とにかくすごい爽快(そうかい)感を味わえると思います。
Q:観客の皆さんには、この映画をどう楽しんでほしいですか?
この作品は、誰を誘って観に行っても、気まずくならない映画だと思います。5人の彼氏のうち、誰が選ばれるのか、ぜひ予想しながら観てほしいですね。
取材が始まると、吉高は口の中で転がしていたあめ玉を「もったいないよぉ~」と言いながら、小さい子どものように口から出した。その姿は、まるで自由気ままな子猫のような愛らしい印象だ。誰にもこびたところは見せていないのに、彼女がそこに存在しているだけで「かわいい!」と思ってしまう、不思議な魅力を持っている。そんな彼女だからこそ、自分勝手なチエを演じていても、ちっとも嫌な女にはならず、むしろかわいいヒロインとなったのだろう。ぜひ劇場で、吉高由里子の不思議な魅力を感じてもらいたい。
(C) 2011「婚前特急」フィルム・パートナーズ
映画『婚前特急』は4月1日より全国公開