映画『ドラゴン・タトゥーの女』デヴィッド・フィンチャー監督&ルーニー・マーラ 単独インタビュー
リスベットという役柄を心から楽しんでほしかった
編集部:森田真帆 写真:吉岡希鼓斗
ベストセラー小説「ミレニアム」3部作の第1弾を、映画『ソーシャル・ネットワーク』のデヴィッド・フィンチャー監督が実写化した最新作『ドラゴン・タトゥーの女』。『007』シリーズのダニエル・クレイグが演じるジャーナリストのミカエルが、美少女失踪の謎と連続猟奇殺人の関係を追う姿をスリリングに描く。ミカエルと共に事件を追う孤高の天才ハッカー・リスベットを演じ、初主演にして見事アカデミー賞ノミネートを果たしたルーニー・マーラと、フィンチャー監督が撮影の裏側を語った。
スタッフみんなが祝福したアカデミー賞ノミネート!
Q:アカデミー賞ノミネートおめでとうございます! ノミネートを果たした気持ちを聞かせてください。
ルーニー・マーラ(以下、ルーニー):ありがとう! 朝早くに母親からの電話で知ったんだけど、とてもうれしかったわ。
デヴィッド・フィンチャー(以下、デヴィッド):僕もノミネーションが発表された朝6時くらいから電話が止まらなかった。スタッフみんなが彼女のノミネート入りに興奮していたんだよ。これから、忙しくなるだろうね!
ルーニー:仕事面では忙しくなってほしいけれど、私生活では忙しくならないことを祈っているわ。派手なパーティーは、苦手だから……。
デヴィッド:そういうところは本当にリスベットのようだよね(笑)。彼女は、本当に静かな人間なんだよ。
鬼才フィンチャーが、ルーニーを抜てきした経緯とは?
Q:素晴らしい演技を見せたルーニーを起用した経緯を聞かせていただけますか?
デヴィッド:彼女は、前作の映画『ソーシャル・ネットワーク』で、主役のマーク・ザッカーバーグのガールフレンド・エリカを演じたんだ。そのとき、彼女の演技力に、僕をはじめ多くのスタッフが感動していた。実は、彼女の起用はもっと早くに決まっていたんだけど、あまり早くプレスに発表をして彼女にプレッシャーを感じてほしくなかったんだ。彼女には、リスベットという役柄を、余計なことを考えたり、心配したりすることなく、心から楽しんでほしかったからね。
ルーニー:オーディションを受けたときは、監督に「わたしこそが、リスベットにふさわしい」という思いで演技を見せたの。この作品は、女優ならみんなそうだと思うけれど、すごく思い入れが強い作品だったから、主役に抜てきされたときは本当にうれしかったわ。
Q:ルーニー自身、リスベットの要素を持っていると思いますか?
デヴィッド:間違いなく持っていると思うよ。例えば、ものすごく凶暴なところとか……っていうのは冗談だけど(笑)、リスベットに共通していることは多いんだ。とてもおとなしくて、思慮深いところがあるし、人に対してもとても用心深いところがある。彼女自身、気付いていないけれど、実は彼女が考えている以上に、リスベットっぽいところがあると思うよ。まだ、誰もぶん殴ってないよね?
ルーニー:それはまだね。でもまだ若いから、これからあるのかも! でも、デヴィッドが言うとおり、リスベットに共感するところはたくさんあったわ。わたしは、ほかの女の子のようにつるむのがあまり好きじゃないし、知らない人とも話せない。もしかしたら、凶暴性もあるかもしれないわね!
ボディーピアスの穴を7個も開ける役づくり!
Q:役のためにピアスの穴も開けたそうですが、それは監督からのリクエストだったんですか?
ルーニー:そうよ。監督からのリクエストだったし、監督が開けてくれたの。
デヴィッド:そうそう。ピアッサーの銃みたいなやつ持って、「ちょっと痛いよ~」って言って、バチンッとね。って、こらこら!(笑)
ルーニー:全部で合計7か所に開けたんだけど、そのうち6か所は監督にしてもらったのよ。
デヴィッド:もうやめなさい(笑)!
ルーニー:ごめんなさい(笑)。監督にはしてもらってません! でも、ちっとも怖くなかったわ。ただの穴だし、開けるときの痛みも、ちょっとつねられたくらいだから。実際、いくつかはフェイクのピアスを使ったんだけど、正直、本物よりもそっちのほうが痛かったの。あとから全部入れちゃえばよかった、って思ったくらいよ
Q:リスベットになった自分を鏡で見たときどんな気分でした?
デヴィッド:動揺していたよね!
ルーニー:動揺してない!
デヴィッド:していたよ!
ルーニー:してない! たぶん、そう思われたのは、変身作業を、全然知らない人たちでギュウギュウ詰めのホテルの一室でやったからなの。知らない人たちに囲まれて、落ち着かなかったし、髪の毛を切っていく姿も撮られていたし……。でもまゆ毛をブリーチしたときは、さすがにショックだった。
衝撃的なレイプシーンの舞台裏!
Q:レイプシーンはとてもショッキングでしたが、作品にとって重要なシーンとなりました。
デヴィッド:君の言うとおり、あのシーンは、リスベットのパーソナリティーを表すとても重要な意味を持っている。原作の衝撃には程遠い、と思っているくらいだよ。でも、彼女がレイプの復讐(ふくしゅう)を遂げるシーンのほうが重要だと思ったから、そっちのシーンをもっと長くしたんだ。
Q:演じたルーニーはいかがでしたか?
ルーニー:あのシーンは、全部で3回撮影したんだけど、最初はきつかったわ。でも2回目になると、なんだか平気で、3回目は正直すごく楽しかった。
デヴィッド:実はリスベットに復讐(ふくしゅう)されるビュルマン役のヨリック(・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)は腰が悪くてね。縛られた体勢をずっと取り続けるのがきつかったから、顔が映らないショットでは吹き替えの男性を使ったんだ。その彼、何をされるかまったく聞かされていなかったから、「おれ、ここに横になるだけだよね?」って。
ルーニー:わたしはそれまでに、ヨリック相手に同じシーンを何度も撮っていたからすっかり鈍感になっちゃっていたの。それで、バッグの中から男性器の形をしたゴムのアレを取り出したら、その人、焦りまくっちゃって(笑)。
デヴィッド:あれは、何よりも迫真の演技だったな。「NO!!!!」って叫びまくって、猛烈に抵抗してくれた。彼のおかげで、ずいぶんリアルなシーンが撮れたよ(笑)。
主演女優賞にノミネート! ルーニー、オスカー前の心境を語る
Q:アカデミー賞授賞式まであと1か月ですが、今どんな気持ちですか?
ルーニー:ノミネートされたことは、とってもうれしいわ! でも、だからといって、わたし自身は何も変わらないと思う。
デヴィッド:そうだね。新人女優で突然オスカーノミネートなんて浮かれてしまう人もいるかもしれないけれど、オスカーの後、急にすごく派手になるということは、ルーニーに限ってはないだろうから、そのへんは心配していないよ。でもスタッフ全員、彼女のノミネートをとても喜んでいる。ルーニーが、リスベットとしていかに完ぺきか、というのは、ぜひスクリーンで皆さんに確認してもらいたいよ。
Q:ファンは続編製作にも大きな期待を抱いています。続編について少し聞かせていただけますか?
ルーニー:続編については、わたしもまだなにも聞かされていないの。できれば、デヴィッドにまた監督をしてもらいたいと思っているけど……どうなのかしら?
デヴィッド:僕のスケジュールは空いているよ(笑)!
「彼女の性格は、まさにリスベット」という監督の言葉通り、ルーニーはとてもシャイ。そんな彼女を、フィンチャー監督が常に冗談を言ってリラックスさせている姿が印象的だった。「彼女は、地に足の着いた女性。これからの活躍が本当に楽しみだよ!」と監督も太鼓判を押した期待の新星・ルーニーの成長に注目したい!
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映画『ドラゴン・タトゥーの女』は2月10日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国公開