『劇場版 SPEC~天~』戸田恵梨香&加瀬亮 単独インタビュー
この作品に愛情があると確信
取材・文:高山亜紀 写真:吉岡希鼓斗
ぼさぼさ髪でノーメイク、左手にはギプスという当麻紗綾役、戸田恵梨香の吹っ切れた演技と、丸刈りに黒スーツでなぜか手に紙袋を持っている瀬文焚流役、加瀬亮の血管がブチ切れそうな演技! 連ドラ放送時からひときわ異彩を放っていた「SPEC」が劇場版として帰ってくる。この春、大いに盛り上がるに違いない『劇場版 SPEC~天~』と「SPEC」シリーズの魅力を主演の戸田恵梨香と加瀬亮が明かす。
当麻と瀬文は絶対的信頼を持ったバディー!
Q:約1年ぶりとなる「SPEC」の現場はいかがでしたか?
戸田恵梨香(以下、戸田):「もうすぐインするぞ」というときに連ドラのDVDを見直したんです。「当麻ってこうだったよな」って、頭でいろんな整理をして現場に入ったんですけど、それで逆に考えすぎちゃって。初日は当麻に戻り切れなかったのが悔しいですね。
加瀬亮(以下、加瀬):僕は丸刈りで黒スーツだったら瀬文だと思っているんで(笑)。自分自身、連ドラをやっているときからは変わっていましたし、時間がたっている設定なら、その時間の変化も少し役に乗せていきたいなと思って始めました。
Q:1年後の当麻と瀬文は関係が微妙に変わったようですが、どう思いましたか?
戸田:二人はやっぱり、絶対的な信頼を持って、お互いをバディーとして見ているとわたしは思っています。ただ、二人の関係はスペシャルドラマ「翔」ですごく距離が開いたんです。そこからもう一度、距離を取り戻して二人のきずながより強くなっていくのが「天」だと思います。
加瀬:二人の関係は強くなってきていますね。それでも二人は常に刑事として事件の方に向かっていると思います。もちろん時間を経て、いろんな事件を共に戦ってきて、情みたいなものが生まれてはいるんですけど、基本的には刑事同士という、そこは変わらないですね。
最大の難関は自分の想像力?
Q:劇場版ではシリーズ最大の敵と戦いますね。
戸田:例えば、連ドラ1話の上川(隆也)さんはものすごい身体能力を持っているとか、SPECがわかりやすかったんですよね。でも、今回の伊藤(淳史)さんも浅野(ゆう子)さんもSPECが見えない。どういうふうになっていくのか、自分たちの頭の中でイメージするしかなかったので、お芝居をするのは大変でしたね。
加瀬:一人だったらまだしも、全員でその目に見えない(CGの)動きに合わせなきゃいけないから大変でした。戸田さんがあの辺、見ているから「きっと、あの辺だろう」とかね(笑)。
戸田:自分たちが想像している大きさとか、それぞれ多少違ったと思うんですよ(笑)。だから、リアクションを含めて合わせる難しさがありましたね。
アクションあっても筋トレ禁止!
Q:本作にはアクションも多数ありますが、筋トレなど体の準備はしたのでしょうか?
戸田:当麻は左手が利かない状態ですし、どれだけ近い距離で銃を撃っても絶対に当たらないという運動神経の持ち主。そういう人に筋肉があるのはどうかと思うので、役づくりのためにむしろ自分から筋トレをやめました。なので、ちょっとしたアクションがあるとすぐに筋肉痛になっていましたね。
加瀬:僕も、特には何も用意していないですね。もともと、筋肉があるタイプなので(笑)。
Q:今回の撮影で一番、キツかったことは?
戸田:納豆うまい棒! あれを食べ続けるシーンは結構、大変でした。ずっと食べていると塩っ辛いし、何か自分から変なにおいがしてくるんです。何本ぐらい食べただろう。堤(幸彦)監督に「もう、そろそろ……」と言ったんですけど、すごく楽しそうに笑っているばかりで。
加瀬:僕は最後のたるかなあ(笑)。あれ、差し込み(アイデアの追加による台本の変更)だったんですよ。
Q:ええっ!?
加瀬:その場でというか、ある日突然「こういうことなので」と、差し込みが入ってきたんです。
戸田:瀬文がたるの中からはい出てきて、すごいことをやろうとするので、「それは無理だろう」と心の中でツッコんでいました(笑)。今回はツッコミどころ満載です。
見どころは瀬文と当麻の抱擁シーン!?
Q:個性豊かな面々ばかりですが、シリーズを通して好きなキャラクターはいますか?
戸田:これはちょっと加瀬さんとかぶるんじゃないかと思いますが、スペシャルドラマで出演されていた北村一輝さんのキャラクターが一番好きですね。最高なんです。劇場版にも出てほしかったぐらい。
加瀬:そうだね。そうしたらもうちょっと、シリアスパートがキープできたかもしれないね(笑)。あと僕は、海野(安田顕)と冷泉(田中哲司)が大好きなんですけど、「翔」に出てきたのでとてもうれしかったですね。
Q:もしかして、お二人は「SPEC」ファンですか?
戸田:続編ものって、愛情がないとなかなか難しいと思うんです。この作品は、「現場に入って楽しい」という思いや「ちゃんと熱を持ってやらないと」という気持ちを持ち続けていられるので、自分自身もこの作品に愛情があるなって確信していますね。
加瀬:SPECは芝居を含めて本当に自由な現場なので、みんな好き勝手やれるんです、戸田さんをはじめ(笑)。だからすごく面白いです。ほかの現場ではこうはいかないですね。好きですね、とても。
Q:最後に「SPEC」ファンに向けて、見どころを教えてください。
戸田:死者の顔が出てくるシーンがあるのですが、その顔がスタッフさんだったりするんですけど、中にはアインシュタインも入っているといううわさなので、そこを見ていただけるとコアなファンの方には喜んでいただけるのではないでしょうか。
加瀬:何かあったかなぁ。くだらないことしか、思い浮かばないなぁ(笑)。
戸田:瀬文が当麻を抱き寄せるところじゃないですか?
加瀬:あ、そこねえ、いいシーンだよなぁ……ってそんなのねーだろっ!
戸田:今、作ってみました(笑)。
天才ながら不思議な言動の持ち主・当麻と、まじめだけど筋肉バカの瀬文。そんな二人のツッコミ合いの関係は見ていて心地いいほどの息の合い方だが、実際の戸田と加瀬の関係もまさに息がぴったり。神戸出身の戸田がテンポと歯切れのいいツッコミを入れたかと思えば、落ち着いている加瀬がスパッと切り込んだりする。そんな本音の触れ合いも堤監督の現場を乗り越えた二人ならでは信頼関係があってこそなのだろう。二人からは当麻と瀬文のようなバディー感が漂っていた。
(C) 2012「SPEC~天~」製作委員会
『劇場版 SPEC~天~』は4月7日より全国東宝系にて公開