『名探偵コナン 11人目のストライカー』桐谷美玲 単独インタビュー
家族ぐるみで「名探偵コナン」フリーク
取材・文:森直人 写真:氏家岳寛
「真実はいつもひとつ!」の決めゼリフでおなじみ、小学生の姿をした名探偵が活躍する青山剛昌原作の大人気アニメシリーズ、「名探偵コナン」。その劇場版第16作目となる最新作『名探偵コナン 11人目のストライカー』に、映画『逆転裁判』やテレビドラマ『13歳のハローワーク』(テレビ朝日系)など、多数の作品でヒロインを務める女優の桐谷美玲がゲスト声優として参加した。アニメ声優はこれが初挑戦となった彼女は、熱狂的なコナンファン。まさにファンならではの深い理解に満ちた視点で、作品に対する思いや、アフレコ現場の裏話などを語った。
「名探偵コナン」は小学生のころから共に成長してきた作品
Q:桐谷さんは子どものころから「名探偵コナン」の大ファンだとか。
はい、原作コミックスも74巻全部持っています。小学3年生のとき、クラスメートの間で「名探偵コナン」がすっごくはやり出したんですよ。それがきっかけで、弟といっしょにおこづかいで買い集め始めました。男の子・女の子関係なく人気がある作品ですよね。本当に小さいころから共に成長してきた感じがあるので、わたしくらいの年代が一番の「コナン世代」なのかもしれません。
Q:どんなところが好きですか?
ミステリーとしての謎解きも面白いですし、キャラクターがそれぞれ魅力的。コナン君も、誰かに頼みごとをするとき、すっごい甘えた声を出しますよね(笑)。そこもまたかわいいんですよ。
Q:キャラでは誰が好きですか?
灰原哀ちゃんが好きです。ツンデレの女の子だから(笑)。普段はクールなので、たまに見せるデレの顔がかわいくてしょうがない。あと、彼氏にしたいのは(コナンのライバルの)怪盗キッドです(笑)。ちょっとキザだけど、いきなりプレゼントをポン! と出したり、サプライズとかして喜ばせてくれそう。
Q:まさに女の子目線の作品の楽しみ方ですね(笑)。劇場版も親しまれていますか?
第1作目の『時計じかけの摩天楼』(1997)から全部観ています。両親も「名探偵コナン」のファンなので、家族みんなで映画館にもよく行きましたね。特に好きな作品は第4作目の『瞳の中の暗殺者』(2000)かな。記憶喪失になった毛利蘭ちゃんに、コナン君が「おめーのことが好きだからだよ……この地球上の誰よりも!」と告白する、あのシーンがヤバいです(笑)。映画だと、原作ではなかなか読めない二人の恋愛が描かれたりするのも楽しみなんですよね。
声の演技だけで表現することの難しさを実感
Q:それだけ作品のファンなら、今回の出演オファーを受けたときは当然盛り上がりましたよね?
はい。もう、すっごくうれしくて! 取りあえず家族に報告しなくちゃと思って、お母さんに「『名探偵コナン』の声優、やることになった!」って言ったら、「えーっ、ずるい! うらやましい!」って(笑)。あと、コナンファンの友達の女の子にメールしたら、「マジで!?」って返信があって(笑)。「名探偵コナン」はオトナでも楽しめますから、みんな今も現役のファンなんですよ。
Q:今回の桐谷さんの役はゲスト出演の域を超えていますよね。事件の容疑者の一人にもなるスポーツ新聞カメラマン、香田薫という大役です。
それだけに緊張しました。香田さんはハキハキと物を言う元気な女性ですよね。わたしなりにイメージを作ってアフレコの現場に入ったんですけど、「もっと元気に!」という指示はずいぶん受けました。自分では頑張ってテンション上げているつもりでも、普段のしゃべり方が割とフラットな感じなので、抑揚を多めにつけたりとか、オーバーにやったりとか。
Q:でもとてもお上手で、自然にドラマの中に溶け込んでいましたよ。アニメの声優は今回が初めてですよね。
はい。ちょっとした人と人との距離感とかも、声だけで表現しなくちゃいけない難しさをすごく感じました。普段、どれだけ表情やしぐさに頼っているのか、ということを実感しました。
今回の劇場版はサッカーとアクションが詰まった最高の一本
Q:『11人目のストライカー』本編をご覧になった感想はいかがですか?
すごく面白かったです! 特に今回はサッカーが題材じゃないですか。わたし、サッカーも大好きなので、本当に最高(笑)。もともとコナン君はサッカー少年ですから、今回の劇場版は「ついに来たか!」って感じです。実際のJリーグのチームと、「名探偵コナン」の中の架空のチームが戦っていたりするのも面白いですし、いろんな実在の選手が、ゲスト声優をされている方々以外にもキャラクターとして出ていたところにもニヤニヤしちゃいました。それに、サッカーとミステリーの謎がとてもうまく絡んでいて。
Q:今までの劇場版に比べても、今回の展開はダイナミックでハードですよね。
そうですね、コナン君が何度も危機に陥って。とてもスケールの大きなミステリーになっていると思います。アクションも大興奮だし。映画ではコナン君が、結構カラダ張りますよね(笑)。今回もすごかったです。スケボーに乗ってびゅんびゅん行って、あのあたりもまさに映画ならでは。原作やテレビアニメは日常のお話ですから。
Q:劇場版『名探偵コナン』の醍醐味(だいごみ)は、どこか日常を超えた冒険にあると?
だと思います。やっぱり一つの事件を2時間くらいかけて解決するから、トリックも複雑ですし。とにかくスケールが壮大なので、わたし自身も毎回映画館で観たくなるんですよ。ですから『11人目のストライカー』も、ぜひ劇場で観ていただきたいですね。大きなスクリーンと音響で、よりドキドキワクワク感が増すと思います。
枠にとらわれず、たくさんのことに挑戦してみたい
Q:桐谷さんは最近女優として多種多様な役をこなされていますし、この4月から『NEWS ZERO』(日本テレビ系)のキャスターの仕事も始まっていますよね。いろんなことにチャレンジされている印象があるのですが、やはり好奇心は幅広い方向に向いていますか?
そうですね。今、お芝居もすごく面白くなってきて、毎回撮影は楽しんでいるんですけど、同時にほかにもいろんなことを経験して、どんどん自分の糧にして、積み重ねていく時期だと思っていますので。あまり枠にとらわれず、たくさんのことに挑戦したいと思っています。
Q:女優という仕事の醍醐味は何でしょう?
自分自身と全然違う役ができることですね。映画にもなった「荒川アンダー ザ ブリッジ」の金星人ニノ役なんて、その最たる例ですし(笑)。テレビドラマ『13歳のハローワーク』の塾講師・真野翔子役では、自分の知らないバブル時代を疑似体験することができました。今回の『11人目のストライカー』の声優も含め、良いお仕事をさせていただいているな、と感謝しながら楽しんでやっています。
Q:声優の仕事にもまたチャレンジしてほしいです。
はい、機会をいただけたらぜひ。また「名探偵コナン」なら、もう喜んで!(笑)
大好きな「名探偵コナン」のことを話す桐谷の表情や口ぶりからは、作品に対する愛情がストレートに伝わってくる。本当に楽しんで映画に参加したことが、今回のインタビューでは感じられた。また同時に、仕事に対するプロフェッショナルな姿勢をハッキリ見せるのが頼もしい。幅広いことに興味を持ち、自分に厳しい姿勢で、かつ柔軟に実践する。そんな彼女の凛(りん)とした魅力が、『名探偵コナン 11人目のストライカー』の香田薫役には宿っていることに注目……いや、“注耳”してもらいたい。
(C) 2012 青山剛昌 / 名探偵コナン製作委員会
映画『名探偵コナン 11人目のストライカー』は4月14日全国公開