『マダガスカル3』玉木宏 単独インタビュー
『マダガスカル』シリーズは、もう一つのライフワーク!?
取材・文:村山章 撮影:金井堯子
ドリームワークスによる人気アニメシリーズの待望の第3弾『マダガスカル3』がついに日本公開。すでに全米で大ヒットスタートとなった今作では、ニューヨークの動物園に帰ろうとさすらいの旅を続けているライオンのアレックスらおなじみの顔ぶれが、おんぼろサーカス団に入団してヨーロッパを巡業することに! 1作目から日本語吹き替え版で主演を務めている玉木宏が、3年ぶりのアフレコ体験やシリーズへの愛着について語った。
毎日規則正しい8時間労働!
Q:1作目ではアレックスの役づくりのために金髪にしたそうですが、今回はどんな準備しましたか?
ああ、金髪にしていましたねえ(笑)。今思えばずいぶんムリヤリな役づくりでしたね。今回は3作目なので、前の作品を見直しながらどんなテンションで演技していたのかを思い出す作業はしましたが、特に変わったことはしていないです。あ、でも今も若干金髪は入っているんですよ。一応ほかの仕事への影響もあるので、あくまでもやれる範囲でアレックスに近づけてみたという感じですけど。
Q:アレックスは、実写ではあり得ないようなハイテンションなキャラですが、演じる上でのコツはありますか。
このシリーズでは、基本的にオリジナルの声優であるベン・スティラーさんのニュアンスを受け継ぐようにしているんです。実際、まずベン・スティラーさんの声の演技があって、それに合わせてアニメーションも作られていますし。彼のアドリブも含めた英語のニュアンスを日本語に置き換えるのは、いつも苦労します。ただでさえ早口なのに、日本語にするとどうしても言葉数が増えてしまって画(え)に口が追いつかない。あと、アレックスはほかのキャラと違って声の出し方が安定しないんです。お調子者な部分とシリアスな部分がすぐに切り替わるし、軽~くしゃべり出したと思ったら急に低音を利かせて落とすとか、いろんな声色を使い分けるのがすごく難しい。そこがアフレコの楽しいところでもあるんですが、頭も体もすごく使いますね。
Q:アクションシーンもずいぶん増えましたね。
そうなんです。台本を見ても「アー!」とか「ター!」とかやたらと叫ぶ部分が多かった(笑)。途中で声を枯らしてしまわないように、叫び声は必ず1日の最後にまとめて録るんです。そして喉を休めて翌日に備える。アフレコは全部で3日間だったんですが、毎日が朝10時から6時に終わる規則正しい8時間労働でした。
最新作のテーマは「力を合わせて不可能を可能にすること」
Q:3作目になって、一番変化した部分はどこでしょう?
もちろん3Dになったことでパワーアップしているんですが、1作目から2作目、3作目とドラマに深みが増してきていますよね。アレックスたちもいろんなものを見てきたからこそ、自分たちが元いたところがすごくちっぽけだったんだと気付く場面があって、その気持ちは田舎から出てきた僕もよくわかります。アレックスたちがちゃんと成長したということも垣間見えるし、面白い作品になったんじゃないかと思っています。
Q:アレックスも随分リーダーらしくなりましたよね。
そうなんですよ! 以前は焦りとか勢いだけでやってきたのが、今回は落ち着きが出てきているから、周りのみんなも付いてくるんでしょうね。アレックスがたまたま出会った落ちぶれたサーカス団を立て直そうとするんですけど、「一見不可能に思えることでも、みんなを奮い立たせてチャレンジする」ということが最大のテーマだと思います。声を入れながら、「ああ、アレックスも頼もしくなったな」と実感しながら演じていました。
自宅には、アレックスの等身大のぬいぐるみが!
Q:『マダガスカル』シリーズはドリームワークスの作品ですが、もともとドリームワークスのアニメがお好きだったとか?
ドリームワークス独特の色(特徴)ってあると思うんです。ピクサーはすごくキレイな作風ですけど、『シュレック』や『カンフー・パンダ』など、ドリームワークスのアニメは10年後、20年後に改めて見直したときに「ああ、実はこういうことを言っていたのか!」と、また違った解釈で観ることができる。大人の視点やコダワリがしっかりと見えるし、非常に細かいところまで工夫が行き届いているスタジオだと思います。
Q:今回、ついにアレックスたちの旅に一つの決着がつきますが、旅を終えたような感慨はありますか。
実は僕は決してこれで終わりじゃないと思っているので、思い出に浸ったりはしていないです。第1作でアフレコのお話をいただいたときも、ドリームワークスの作品だし、きっと『シュレック』みたいにシリーズ化になっていくだろうと思っていました。たぶん3年に1回くらいのペースで新作がくるだろうなと思っていたら、まさしくその通りになった(笑)。ただ1作目のときはまだ26歳で、この次が3年後だとしたらもう35歳になっているんですよね。そう思うと、すごく長い年月をアレックスと一緒に歩んでいるんだなという感慨はあります。前作のときに、アレックスの等身大のぬいぐるみをいただいたんですよ。家に置くには大きすぎてちょっと困るんですけど、家に帰ればいつもアレックスがいるっていうのもなんだかうれしいんですよ。
旅をするならドイツ! アレックスの旅もまだまだ続く!?
Q:アレックスたちはシリーズ3作を通じて、価値観が完全にひっくり返るような体験をしたわけですが、玉木さんにも人生観を変えた経験はありますか?
やっぱり仕事でしょうね。この仕事をやらせてもらえるようになって、一作品を終えるたびに自分の引き出しの中身が増えていく実感があるんです。自分の興味や好き嫌いだけに従っていると、たぶんすごく狭いところに収まってしまう。でも仕事を通していろんなものに触れることで、知識も心も豊かになるし、より大きな人間になれる気がします。ホントに幸せな職業だと思っています。
Q:もし玉木さんがアレックスたちみたいな旅をするとしたら、どこか行ってみたいところはありますか。
実は以前、1か月程休みをもらって、一人旅でヨーロッパを5か国回ったんです。でも結局1か国あたり5日間ぐらいしかいられないから、相当短く感じたんですね。僕は写真が趣味なので、特にドイツをもっと撮ってみたかった。あとロンドンにも行くつもりだったのが時間が足らず行けなかったので、今度はドイツからロンドンに行って、それからまた別のどこかに行けたらいいですね。僕もアレックスも、旅はまだまだ続きますから(笑)。
クールで落ち着いた話し方からは、お調子者でハイテンションなアレックスの声と同じ人物だとはとても思えない。しかし話の端々で目を輝かせて、『マダガスカル』シリーズやアレックスへの愛情をしっかり伝えてくれた。近年は俳優としても海外に進出するなど着実に幅を広げている玉木。第1作から7年を経て頼れるリーダーへと成長をとげたアレックスと共に、このシリーズでの声優仕事が“ライフワーク”となりつつある玉木宏自身の成長も感じてほしい。
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映画『マダガスカル3』は8月1日より全国公開