『人生、いろどり』吉行和子、富司純子、中尾ミエ、藤竜也 単独インタビュー
いつも楽しい気分でいれば、きっと人生何とかなる
取材・文:平野敦子 写真:吉岡希鼓斗
実話を基に徳島県の上勝町で葉っぱビジネスを成功させた人々の姿をつづった映画『人生、いろどり』で、幼なじみを演じた吉行和子と富司純子と中尾ミエ、そして劇中で吉行の夫を演じた藤竜也というそうそうたるメンバーが勢ぞろいし、生涯現役として輝き続けるためのコツや、現場での思い出話に花を咲かせた。
撮影現場の絶大な森林浴効果
Q:共演の平岡祐太さんが撮影について「とても愛のある現場だった」と振り返っていたのですが、皆さんはいかがでしたか?
藤竜也(以下、藤):僕は富司さんや中尾さんと一緒に、夜の河原で横になって星を眺めていたのが印象的でしたね。流れ星が何個も流れていて本当にきれいでね。あのときは「愛のある現場」だと思いました。
富司純子(以下、富司):今、藤さんがおっしゃったように、そのような素晴らしい時間を皆さんと共に過ごせたことや、地元の方々が毎日ランチを手作りしてくださって、休憩時間には差し入れもいただいたことをよく覚えています。上勝町の方々が一つになって応援してくださったので、温かさというものをとても感じた現場でしたね。
吉行和子(以下、吉行):わたしが現場に行ってまず感じたのは、緑がとても生き生きとしているということでした。そこで初めて「森林浴というのはこういうことなんだな」と実感しましたね。なんだかどんどん元気になっていって、撮影もスムーズにいきましたから、楽しいことばかりでした。
中尾ミエ(以下、中尾):上勝町にはホテルが一つしかなかったので、みんな一緒に生活していました。ホテルの食事も毎日だと飽きるだろうと気を使っていただいて、ビュッフェ形式に変えてくださって。毎日のお弁当もヘルシー用と、若い方用のボリューム弁当の両方用意してくださいましたし。
Q:吉行さん、富司さん、中尾さんは本当に幼なじみのように見えました。
吉行:特に「仲良くしよう!」というわけではないんですが、みんな自然に上勝町で生活しているような気持ちになってしまって、とても自然な気持ちで撮影が進んだと思います。
中尾:あれはセットじゃなくて野外の撮影だからというのも大きかったんでしょうね。
富司:そうね、みんな帰るところも一緒だしね。
地元の方々といち早く仲良くなった藤竜也
Q:藤さんは女性が多い現場でモテモテだったと思うのですが?
藤:そんなことないですよ! まぁ、仕事が終わったらよく飲みに行っていましたけどね(笑)。
中尾:わたしが飲みに行ったら、藤さんが一人で寂しげに飲んでいましたからね。お付き合いさせていただいたんですよ(笑)。
藤:全然寂しくないですよ! 中尾さんが勝手に寄ってきただけです(笑)。なかなかいい場所で焼酎飲んで楽しかったですよね。
吉行:藤さんは役づくりのために早くから現地に入られていて、町の方々と仲良くされていましたよね。「たくさん知り合いがいるな」と感心しましたから。
Q:どんなお話をされていたんですか?
藤:それは内緒です(笑)!
この葉っぱは1枚何十円?
Q:この映画に出演してから、料理のツマの見方が変わりましたか?
藤:ツマが付いてくるような料理が出てくる店に行かないんですよ(笑)。ただ、上勝町の方は、たいしたもんだなとは思いました。実際に葉っぱビジネスのシステムを目の当たりにして、すごいと感じましたしね。
富司:今まではただ「きれいだな……」と盛りつけを眺めていたんですが、上勝町ではこのハスの葉が1枚何十円とおっしゃっていたので、「これは1枚いくらなんだろう?」という目で見るようになりましたね。
Q:葉っぱビジネスを体験して改めて考えたことはありますか?
吉行:葉っぱをビジネスにするなんて、とても考えられないことが実際に起きたわけですから、あり得ないことでも実際やってみたら実現することもあるんだと思いました。何かにチャレンジするということは大切だし、ステキだなと改めて感じました。
中尾:夢は都会に行かなければかなわないと思っていた部分もあったんですが、最終的な幸せって、実は足元にあったんだなということに気付かされました。最初は上勝町のみんなも葉っぱがビジネスにつながるとは思っていなかったわけですからね。
人間には介護よりも生きがいが必要!
Q:皆さんのこれまでの人生での一番のチャレンジは何ですか?
藤:俳優は一歩一歩がチャレンジだよね。この仕事をしていて楽だと感じたことはあまりないんでね。その役一つ一つがチャレンジなんじゃないかな?
富司:またご縁があって女優に復帰したことです。そして今は孫ができて自分がおばあちゃんになったことなど、またこれから人生が変わっていくということ全てがチャレンジなんじゃないかと思います。
吉行:半世紀以上も女優という仕事を続けてこられたのは、何か新しいことに挑戦してみようと思う気持ちがあったからこそなんじゃないかと思います。
中尾:わたしたちの仕事というのはその都度チャレンジをして、それがまた次の仕事につながっていくわけですから、一般の方よりはチャレンジする機会は多いですよね。
Q:上勝町のシルバー世代の方々は生涯現役で頑張っていらっしゃいますが、皆さんが生涯現役でいるために努力していることは何かありますか?
藤:俳優はとにかく体が丈夫なほうが勝ちだと思いますから、トレーニングは欠かさず、体を鍛える努力はしていますね。
富司:食生活には気を付けるようにして、あとは適当な運動をすることですかね。健康が第一ですから。
吉行:まずは健康でさえいれば何か楽しいこともあるだろうと思いますから、あまりクヨクヨしないでいつも楽しい気分でいれば、きっと人生何とかなると思います。
中尾:わたしはこの映画に出てから、人間には介護よりも生きがいを見つけることのほうが大事なんだと思いました。生きがいさえあれば、寝たきりの人でももう一度起き上がれるんですよ! 何か夢中になれることさえあれば介護も要らないし、もちろんお金も要らないし。実際上勝町は老人ホームを廃止した町ですからね。最後まで働いて「さようなら!」って素晴らしいことですよね。
撮影中、上勝町の緑豊かな風景に元気をもらったと語る吉行和子。先日娘の寺島しのぶが第1子を出産したばかりの富司純子。どんな場面でもユーモアを交え、周りを沸かせた中尾ミエ。そしてそんな3人の美女に囲まれながら、セクシーでチャーミングな魅力を見せた藤竜也。撮影のエピソードを思い出しながらにこやかに語ってくれた四人が一丸となって取り組んだ本作には、他の作品では味わえない彼らの人生の美しさが詰まっている。
(C) 2012『人生、いろどり』製作委員会
『人生、いろどり』はシネスイッチ銀座ほか全国公開中