『県庁おもてなし課』堀北真希 単独インタビュー
多くの人に高知の魅力を伝えたい
取材・文:斉藤由紀子 写真:吉岡希鼓斗
「図書館戦争」などで知られる人気作家・有川浩のベストセラー小説を、錦戸亮(関ジャニ∞)主演で映画化した『県庁おもてなし課』。三宅喜重監督をはじめ、映画『阪急電車 片道15分の奇跡』のスタッフが再集結した本作は、高知県庁に実在する「おもてなし課」をモデルに、若手職員・掛水史貴(錦戸)が、故郷の観光PRに奔走する姿をハートフルに描く恋愛青春ストーリーだ。アルバイトとして掛水をサポートするヒロインの明神多紀を演じた堀北真希が、ロケ地となった高知の魅力や撮影時の思い出を語った。
はちきん(元気で勝気な土佐の女性)のヒロインを熱演!
Q:とても優秀でしっかり者のヒロイン・多紀。堀北さんはどんな女性だと解釈しましたか?
とにかく一生懸命でフレッシュなイメージの女性です。本当はちゃんと就職したかったのにできなかったから、県庁のバイトの仕事を必死に頑張って、そこで見つけた小さなチャンスを大事にしているんです。とても真面目な人だと思いました。
Q:役づくりのために事前に準備したことはありますか?
土佐弁を話せるように練習しました。覚えるのはそんなに大変ではなかったんですけど、ナチュラルにしゃべるのは難しいですね。土佐弁には「何しゆうがですか」とか、「が」が入ることが多いんです。あまりにも「が」がたくさん入ると、自分で何を言っているのかわからなくなってしまって困りました(笑)。
Q:自転車を猛スピードでこいでいく多紀の登場シーンが印象的でした。
わたしも自転車にはよく乗りますけど、あんなに速くこぐことはないので、撮影にはかなり時間がかかりました。錦戸さんよりも速くこいで差をつけるシーンなのに、それがなかなかうまくいかなくて……。錦戸さんとの距離を作るのが大変でした。
市場でスダチを大量購入! その理由とは?
Q:高知でロケを行い、観光名所も多数登場する本作。堀北さんは高知のどんなところに魅力を感じましたか?
映画にも出てくる通り、自然がすごく多いところが良かったです。現場の移動のときに山道を走ったりして、豊かな大自然を実感しました。仁淀川でカヌーをこぐシーンを撮ったとき、川の色がとてもきれいなブルーで感動しました。
Q:錦戸さんがパラグライダーに挑戦するシーンを観ると、こんな大自然の中で空を飛んでみたいと誰もが感じると思います。
本当に気持ち良さそうですよね。わたしはジェットコースターや高い所が苦手だから、最初は自分がパラグライダーをするなんて絶対に無理だと思っていたんですけど、錦戸さんが挑戦しているところを間近で見て、「やってみたい!」と思いました。
Q:アイスクリンや皿鉢(さわち)料理など、土佐グルメを味わう場面もありますが、実際に堪能できましたか?
はい、しました。アイスクリンはアイスクリームとは違って、シャーベットのように爽やかな感じの味でした。皿鉢料理は、映画の中でわたしがつまみ食いをしていた煮物がおいしかったです。
Q:本編にも登場する高知名物“日曜市(毎週日曜日に開催される街路市)”には、オフでも行かれたそうですね?
高知は塩味の芋けんぴ(サツマイモを揚げたお菓子)が有名なので、お土産に買って帰りました。あと、野菜や果物がすごく新鮮で、作っている方が売られているので安心して買えるんです。スダチを大量に買ってしまいました(笑)。
Q:スダチがお好きなんですか?
本当はほかにも買いたいものがいっぱいあったんですけど、スダチが唯一持って帰れそうな大きさだったんです(笑)。自宅でスダチを絞ってお肉やお魚に掛けたり、四万十川ののりも買って帰ったので、それで作ったお味噌汁に果汁を入れて食べました。すごくおいしかったです!
高知の人々の協力で完成した作品
Q:錦戸さんとの初共演はいかがでしたか?
とても明るくて、現場を和ませてくれる方でした。錦戸さんっていつも自然体なんです。お昼休憩になると、いきなりフラッと町のお店に食べに行くことも多かったみたいですね。人目もあるのに大丈夫なのかな? と思ったりしましたけど(笑)。
Q:伝説の元県庁職員・清遠和政を演じた船越英一郎さんもおおらかな方なのでは?
船越さんも撮影のないときによく町を散策されていました。地元の方と話をされたり、皆さんと一緒に食事をされたりしていたそうです。そこで聞いてきたお店や観光の情報をたくさん持っていらっしゃって、わたしたちにもよく教えてくださいました。
Q:堀北さんご自身も、高知の人々と触れ合うことが多かったのではないですか?
そうですね。高知は女性が強くてしっかりしているといわれているんですけど、わたしに話し掛けてくださったのも女性が多かったような気がします。行きたい場所やお店のことを聞くと丁寧に教えてくださって、撮影にも協力していただきました。
Q:地元の方の協力で完成した映画なんですね。
日曜市のシーンも撮影したのは月曜日だったんですけど、わざわざ開催してくださって、お客さんとして地元の皆さんが集まってくださったんです。県庁のシーンも本当に高知県庁の建物の中で撮影させてもらえたのですが、それもすごいことですよね。この映画を通じて、多くの人に高知の魅力が伝わるといいなと思います。
焼きもちでケンカする二人がかわいらしい
Q:引かれ合っているのに素直な思いを伝えられない掛水と多紀。演じていてキュンとなってしまうシーンも多かったのでは?
お互いが焼きもちを焼いたり、わざと意地悪なことを言ってケンカになるところがかわいらしいなと思いました。わたしはあんまり焼きもちを焼くタイプではないので、正直なところよくわからないんですけどね(笑)。
Q:多紀のように、好きな人が別の女性と仲良く話していると気になりません?
うーん……相手が何をしていてもあまり気にならないんですよね(苦笑)。わざと意地悪なことを言ったりすることも、わたしだったらしないかな。映画のように焼きもちで言い合いになってしまうケンカって、自分がしたことがないからこそいいなと思ってしまいます。
Q:故郷を誇れることの喜びが伝わってくる本作ですが、東京出身の堀北さんはどう感じましたか?
東京って観光名所の集まりみたいな所だから、自分も最新スポットに行きたくなってしまったりして、故郷という感じではないんですよね。東京出身ではないお友達が、「東京に行く!」とか「東京で頑張る」など、東京について歌っている曲にすごく共感するって言うんですけど、そういう気持ちになれるのがうらやましい。わたしは逆に、自然が豊かな故郷に憧れる気持ちがあります。
Q:諦めないことの尊さを描いたこの作品を、どんな方にお薦めしたいですか?
個人的には、まだ仕事に慣れていない掛水や多紀が、戸惑いながらも頑張るところがステキな作品だと思うので、仕事を始めたばかりの若い方に観ていただきたいです。そして、何かにがむしゃらに向かっていくことの大切さを感じてもらえたらうれしいです。
びっくりするほど小さな顔、きゃしゃでスラリとしたプロポーション。黒目がちの大きな瞳で見つめられると、同性でもドギマギしてしまうほどキュートな堀北。ロケの思い出を楽しそうに語る様子から、現場の和やかな雰囲気が伝わってくる。高知の魅力が詰まった観光エンターテインメントであると同時に、恋のトキメキを味わえる胸キュンラブストーリーでもあり、仕事人を描くワーキングムービーとしても秀逸な本作で、堀北の愛らしい“はちきん”ぶりを存分に堪能してもらいたい。
映画『県庁おもてなし課』は5月11日より全国公開