『映画 謎解きはディナーのあとで』北川景子&椎名桔平 単独インタビュー
いつも横で誰かがクスクス笑っている心地よさ
取材・文:高山亜紀 撮影:本房哲治
連続ドラマ、スペシャルドラマと高視聴率をマークしてきた「謎解きはディナーのあとで」が映画化された。毒舌の執事、影山と彼にいつもやり込められてしまう、超お嬢様刑事の麗子、さらに麗子のぶっ飛んだ上司、風祭警部といった、お茶の間でおなじみの濃いキャラの面々が、今度はスクリーンでも大活躍&大暴走。洋上の密室と化した豪華客船上でお得意の名&迷推理をさく裂させる。シリーズを通して麗子と風祭を演じてきた北川景子と椎名桔平が、役柄を彷彿(ほうふつ)させる抜群のコンビネーションで劇場版に込めた思いを語った。
シリーズで最もにぎやかな現場にワクワク
Q:映画化を聞いたときの感想は?
椎名桔平(以下、椎名):スケールアップして、また『謎解き~』ができるんだとワクワクした気持ちになりましたね。
北川景子(以下、北川):わたしもうれしかったです。連続ドラマのときから、本当にたくさんの方々が「続編を観たい」と言ってくださって、フジテレビのサイトにメールをくださったりして。スペシャルドラマを含めると、この映画でもう4作目になるんです。「また続編ができるの?」という驚きと、それだけの反響があった喜び。さらにその思いに応えられるものを作らなきゃという身の引き締まる思いもありました。
Q:映画ならではの豪華キャストの方々を迎えて、現場の雰囲気は変わりましたか。
北川:にぎやかでしたね。いつもはわたしと櫻井さん、あるいはわたしと桔平さんが中心でしたから。「こんなにたくさんの方が同じシーンにいるのって、初めてじゃない?」って櫻井さんもおっしゃっていたぐらい。皆さんそれぞれ共演歴がどこか別の場所であったりして、楽しそうでした。あとは年齢が上の方が多かったので、現場でのたたずまいというか居方もこっそり学ばせていただいていました。
北川が船に缶詰め状態の間、椎名は……
Q:映画版は客船の空撮から始まって、初の海外ロケと豪華尽くしでしたが、その楽しさは?
椎名:今回、映画になったことで、キャストもたくさん入ったんですよ。なので基本、主役の二人以外は分担制というのも変だけど、二人が忙しければこっちはそうでもないというか(苦笑)。翔君はレギュラー番組のために、日本に帰ったり、景子ちゃんも出番が多くて大変そうでしたけど、僕なんかは非常にいいポジションでしたね。
北川:桔平さんは、よく観光されていましたよね。
椎名:僕がそんなに頑張らなくても、主役の二人が頑張ってくれるだろうというもくろみで(笑)。あとドラマからやっていて、スタッフもよく知っている方ばかりなので、居心地もよくて。下船を重ねても、そんなに文句を言われないだろうと踏んでいました(笑)。
北川:桔平さんは、下船できるポイントがちょうどよく合ったんだと思います。わたしも空き時間はあったんですけど、シンガポールからマカオに移動している大海原の真上の6時間だったので何もできず……。船内のスパに行ったり、イタリアンを食べたりするぐらいしかできなかったんです。でも、何となく麗子お嬢様チックな時間を過ごせたので、それはすごくよかったです。大変だったのはスタッフの方だと思います。
椎名:スタッフは大変だよね。でもうちのスタッフはどんなにスケジュールがタイトでも、撮り切ってしまうからすごいよ。よく倒れないなって思う。
北川:船が貸し切り状態だったこともあって、何時までに撮り終えなきゃという縛りがないので、朝から夜までず~っと撮れるんです。しかも映画だから、いつも以上にこだわって、妥協しないで撮っていたので、本当に大変だったと思います。
椎名:船内に泊まっているから、いつでも呼び出しがかかる状態だったよね。
北川:波で船が揺れると、役者もカメラも揺れて一時中断してしまいますし、甲板のシーンでは風が強いので髪が乱れてしまって撮り直しになったり。わたしたちは合間、合間に息抜きできたのでよかったですけど、一見華やかに見えるロケの裏側ではスタッフがとても苦労していました。その思いが報われるように、映画がヒットしてほしいです。
椎名桔平、「フツーの風祭」に苦戦!?
Q:お二人ともテンションの高い役を演じられていますが、映画の撮影が始まってすぐに役に入り込むことはできましたか。
北川:桔平さんと一緒のシーンに関しては、わたしは基本「受け」の芝居が多いので、時間が空いたからやりづらいということはないです。櫻井さんと一緒のときも、(影山から)毒舌攻撃を受けて、それに対して怒るというパターンが多くて。桔平さんこそ、大変だったんじゃないですか?
椎名:僕は、景子ちゃんほどではなかったと思うよ。大変だったのは僕のキャラがメインのスペシャルドラマ「謎解きはディナーのあとでスペシャル ~風祭警部の事件簿~」。今までは翔君と景子ちゃんがメインで、そこに割って入るような感覚だったけど、今度は自分がずっと出続けなきゃいけない。そうすると、ハイテンションの風祭の作り方は何となくわかっているんだけど、「そうでもない風祭」はどうすればいいんだ? と戸惑ってしまって(笑)。
北川:なるほど、「フツーの風祭」なんですね(笑)。
椎名:でも今回のスペシャルドラマは景子ちゃんの出番が少なくて、寂しかったな。だって、連ドラ、スペシャルドラマ、映画とこれまでずっと必ず景子ちゃん演じる麗子がそばにいて、「バカばっかりやってちゃダメですよ!」って受け止めてくれていたから。
影山と風祭、どちらがタイプ?
Q:映画では麗子は風祭とではなく、影山と新展開がありましたね。
北川:そうなんです。お客さんに「え、どうなるの?」と期待させつつ、でも影山と麗子の間にあるのは、男女の関係というより、命を投げ打ってでもお嬢様を守る影山の無償の愛というか、家族にも似た絆なんだと思います。そんな愛情をもらって、わたしも彼を信頼している。そういう関係なのではないでしょうか。
Q:北川さんから見て、影山と風祭のどちらが魅力的ですか。
北川:わたしは関西人なので、面白いことが大好きなんですよ。だから、風祭さんが大好きです!
椎名:景子ちゃんはよく笑うよね。とにかく現場では風祭の笑い役に徹してくれて、いつも横で何かクスクス笑っているんですよ。「そこまで面白いわけないよなぁ」と自分では思ったりしたけど、随分、支えられましたね。「よし! これでいいんだ」と自信を持てました。
北川:いつも風祭さんを「何、言ってるんですか。警部」と戒める麗子ですが、わたし自身は面白いの大歓迎! 一方、影山は麗子を見守って、正しい方向に導いてくれる。彼の根底には大きな愛があって、毒舌もきっと遠回しな愛情表現だと思うんです。それもステキだとは思うけど、わたしはわかりづらいのはダメ(笑)。楽しい人がいいから、風祭さんがいいです!
マイペースな椎名桔平を北川景子がしっかりハンドリング。まるで風祭警部と麗子お嬢様のやり取りをライブで見ているような楽しい対談だった。しかも、麗子お嬢様から風祭へのまさかのラブコール。もしかして、今度、続編があるなら、二人の恋模様が描かれたりして!? スピンオフドラマも撮り終え、「風祭はもうやり切った」と断言していた椎名も、対談後はすっかり「時期が来たらまたやりたくなるかも」とお嬢様との再共演に心を動かされていた。今後があるかないかは映画の動員数次第。まだまだ続きが観たい方はぜひ劇場へ!
『映画 謎解きはディナーのあとで』は全国公開中