『ガッチャマン』松坂桃李、綾野剛、剛力彩芽、濱田龍臣、鈴木亮平 単独インタビュー
不完全なヒーローであることをめぐる、人間ドラマが見どころ
取材・文:轟夕起夫 撮影:金井堯子
1970年代を代表し、時代を超え、今も愛され続けているタツノコプロ制作のテレビアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」が実写映画化。監督はこれまで『ごくせん THE MOVIE』や『カイジ』シリーズをヒットさせてきた佐藤東弥。戦うことの意味を問い、力を持つ者の過酷な運命を映し出しながら、善と悪のはざまで揺れ動くヒーロー像に迫った重厚なエンターテインメント。松坂桃李、綾野剛、剛力彩芽、濱田龍臣、鈴木亮平のメインキャスト5人が本作の魅力や撮影の裏話を語り合った。
目指すは今の時代のガッチャマン像
Q:それぞれがキャラ立ちしている役ですが、どのように向き合われましたか?
松坂桃李(以下、松坂):僕が演じた健はガッチャマンを束ねるリーダーなんですが、健以外のメンバーの方が的を射たことを言っているんです。その言葉が胸にグサグサと刺さりながら、いろいろと気付かされていく。仲間がいることによって僕も健として成長していけたので、共演者のみんなとの関係を大事にしましたね。
綾野剛(以下、綾野):ヨーロッパ支部から東京に戻ってきた(綾野が演じる)ジョーは、健とは幼なじみで、共に愛した女性を失ったトラウマを引きずっていて、複雑な内面を持つ男なんです。そこをしっかりと押さえつつ、「今の時代のガッチャマン像を作りたい」という監督の熱意にも応えるべく、大きな挑戦をしていた感じでした。
剛力彩芽(以下、剛力):わたしはジュンという役で、紅一点としてどういう立ち位置でいようか意識しましたね。健に恋心を抱いていて普通の女の子の部分もある。けれども敵と戦わなくてはならず、悩み、苦しむ。シチュエーションに応じて感情の出し方を考えて、監督とも相談しながら役と向き合っていきました。
濱田龍臣(以下、濱田):僕はジュンの弟の甚平で、基本的に場を和ませる明るいキャラクターですが、無邪気かと思えば大人びたところもあって、役づくりはとても難しかったです。あっ、(鈴木)亮平さんとの凸凹コンビが楽しかったですね!
鈴木亮平(以下、鈴木):映画版の(鈴木が演じる)竜は、オリジナルとは全く違うキャラだったので、とっかかりとして台本に書いてあった母親の存在をキーにし、裏設定で彼女が竜の心の傷をどう癒やしてくれたのかを考えて、現場に挑んでいました。その結果、新たな竜を3次元で成立させることができたなと自負しているんですけど。
“剛力スマイル”に助けられた男子4人
Q:近未来の戦闘服“Gスーツ”に身を包んでのワイヤーアクションはいかがでしたか?
剛力:わたしは前々からチャレンジしたかったことだったので、楽しかったです。鈴木さんには撮影の合間に、パンチの指導をしていただいて感謝しています!
鈴木:そういえば彩芽ちゃん、ずーっと隣で練習をしていたね。
剛力:パンチ一つでも強そうに見せるには、努力と工夫が必要なんだなって学びました。ガンアクションもちょっと脚を曲げるだけで見栄えが全然違うんですよね。
松坂:そうなんだよねえ。Gスーツを着たことによる能力の変化をカラダでも表現しなければならなくて、その難しさはあったなあ。僕はワイヤーアクション自体は経験があったんだけど、今までやったことのない高さにつられてのアクションはさすがに難易度が高くて、でもその分、新鮮で刺激的だった。
剛力:わたし自身は『ガッチャマン』をやらせていただいて、もっとアクションをやりたいなと思いました。
綾野:彩芽ちゃんはボディーバランスが半端じゃなかった。重心をいろんなところに変えられるし、あのかかと落としは素晴らしかったです。しかもポジティブオーラ全開で、何事も楽しんでいる姿を見ると、「そうか、俺たちも楽しまなきゃな」って気にさせられました。素晴らしい“剛力スマイル”でした。
鈴木:確かに“剛力スマイル”には助けられたなあ。
松坂桃李、リーダーシップを発揮
Q:“剛力スマイル”の力は絶大だったようですね。他にチームを結束させるような出来事はありましたか?
鈴木:5人全員が集まる日があったんですが、1人だけ事情があって参加できなかったんですね……って、それは俺のことなんですけど(笑)。ノロウイルスにかかっちゃって、現場に行けなかったんです。そうしたら桃李が「亮平さんがいないなら、このシーンを撮る意味はない。後日に調整していただけませんか」と掛け合ってくれて。
松坂:あのとき剛くん、僕に声を掛けてくれたよね。「おまえはどうしたいんだ?」って。
綾野:俺は桃李が常にリーダーとして、健としていられるような環境を作りたかった。
鈴木:後から経緯を聞いて、リーダー松坂桃李への信頼感がいっそう増しました!
濱田:それで、チームの結束がさらに強くなりましたよね。
剛力:仕切り直して再度集まったのは、夜のパーティーシーンでしたっけ。
松坂:そう。全員がフォーマルな格好で。でも、Gスーツを着ていなくても僕の目には五人がエージェントに見えたんですよ。任務を遂行するガッチャマンとしての緊張感がみんなにみなぎり、その体温の熱さがたまらなくうれしくて、「これで僕も最後までガッチャマンの健としていられるな」と確信できたシーンになりました。
まっとうな群像劇かつジェットコースタームービー
Q: 本作で他のヒーロー物とは違うと思うところはありますか?
鈴木:アメコミのヒーローって基本、一人で戦うんですよ。日本のヒーロー物は伝統的にチームで戦うんですよね。誰か一人だけがヒーローってわけじゃない。今回の『ガッチャマン』もそういう作品です。
松坂:しかも、五人は何が正義で何が悪なのかで激しく迷うんです。「この拳の力は本当に正しいのか?」って。不完全なヒーローであることをめぐる、人間ドラマが見どころになっている点はユニークだと思います。
剛力:そうですね。ヒーローって無敵なイメージがあったんですけど、全然そうではない。五人の戦う理由はそれぞれで、悩みながら、きずなの強さや友情でつながっていて、すごく人間味があるなって感じますね。
濱田:おきてに縛られ無理を通そうとする健に対して、ジュンが「あなた狂っている!」と責め、結局は「わたしも狂っている」とつぶやくシーンは、人間の弱さがすごく出ていて、心に残りました。
綾野:あのセリフは強度があった。戦って、敵を殺して、また戦って、でも、たまにそれを楽しいって感じるときもあるって。できればGスーツを着たくない五人が、仕方なく身に着けた瞬間から、悲しみを帯びた感覚で「これは正義なのか?」と自問自答しながら戦っていく。そこはとても特殊だし、同時にまっとうな群像劇でもあり、それでいて直球のジェットコースタームービーであるところがいいですよね。
五人がズラリと並ぶと壮観の一言! しかし、インタビューになると実に和気あいあい。五人は撮影を通して築いたチームワークの良さを見せつけた。生身のアクションと最新VFXを融合させた作品故に、ようやく目にすることができた完成版に興奮していたもよう。組織のもとでエージェントとして“人間兵器”にならざるを得ないダークヒーロー物の側面も持つ本作だが、五人の感じた肉体表現ならではの興奮をぜひスクリーンで共有してもらいたい。
(C) タツノコプロ / 2013 映画「ガッチャマン」製作委員会
映画『ガッチャマン』は8月24日より全国公開