『アナと雪の女王』松たか子&神田沙也加 単独インタビュー
日本版のオリジナルキャストであるということに自信を持ちたい
取材・文:編集部 福田麗 写真:藤里一郎
全世界興収がディズニー・アニメーション史上ナンバーワンヒットを記録し、第86回アカデミー賞でも見事、歌曲賞と長編アニメーション映画賞を受賞した『アナと雪の女王』。アンデルセンの「雪の女王」をモチーフに、それぞれの運命に立ち向かう姉妹の姿を描いたドラマチックミュージカルだ。日本版で、全てを凍らせてしまう魔法を持つが故に苦悩する姉エルサの声優を務めた松たか子と、元気いっぱいの妹アナの声優を務めた神田沙也加が本作の見どころを語った。
祝!アカデミー賞歌曲賞&長編アニメーション映画賞受賞!
Q:本作はアカデミー賞を歌曲賞と長編アニメーション映画賞で受賞しましたね。関わった作品が受賞というのはあまりないと思いますが、どうでしょう?
松たか子(以下、松):とてもうれしいです。日本でも、多くの方に愛される作品になってほしいと思います。
神田沙也加(以下、神田):直接的にはやはり現地の製作陣の方の作品ということで、わたしは間接的に関わっただけですが、本当にうれしいです。受賞した時は思わずディズニーの方に電話しちゃいました!
Q:神田さんは監督の来日時にはイベントで共演もしていますよね。メッセージを送ったりはしたんですか?
神田:送るすべがないので……(笑)。あ、でもアカデミー賞授賞式にいらしていた監督の写真がツイッターで流れてきたので、それをリツイートして、「本当におめでとうございます」というのは送りました(笑)。
Q:お二人共、ディズニー・アニメーションの声優を務めるのは今回が初めてですね。ずばり、ディズニー映画にお気に入りや思い出はありますか?
松:わたしが好きなのは『ノートルダムの鐘』です。これまでも映画になっていますが、ディズニー作品になるというのが当時意外に思いましたし、ヒロインがエキゾチックで、いわゆるヒロインとはちょっと違って、強くて勇敢なキャラクターだったということもインパクトがありました。いわゆるハッピーエンドなだけでなく、ちょっと切ないストーリーというところも印象的でした。
Q:なるほど。神田さんはいかがでしょう?
神田沙也加(以下、神田):わたし、ディズニーの作品は小さいころからずっと観てきているんです。これはうちの教育方針だったかもしれないんですけど、日本語吹き替え版と字幕版の両方を観せてくれていたんです。もちろんDVDではなくて、ビデオです。ビデオの時って、字幕と吹き替えで別だったじゃないですか。なのに、わざわざ(笑)。
Q:それはすごい! 英才教育ですね。
神田:ミュージカルは急に歌いだすので、それが駄目っていう人もいるじゃないですか。でも、わたしの場合は生まれて初めてミュージカルを生で観た時も自分の中で違和感がなくて、むしろそういうドラマチックさが好きだったんです。それをたどってみると、小さいころから観てきたディズニーがあるのかなと思いましたね。
お姉さんだと思ったら……妹だった!
Q:お二人は劇中で姉妹という設定ですが、共演の感想を教えてください。
松:神田さんのキュートなアナにはとても助けられて……そのおかげでエルサに向き合うことができて、とても幸せでしたね。
神田:松さんのエルサは、大事に育てられてきて、いずれは女王陛下になるっていうのが、声だけでも伝わってきて、すごく説得力がありました。松さんがエルサをやると聞いた時に、こんなエルサになるんだろうなと想像していた通りでした。ただ、松さんはすごく“お姉さん”という感じなのに、実際には妹さんなのだと聞いて、びっくりしました。
Q:エルサとアナの姉妹はお互いを思っているのに、なかなかうまくいかないというもどかしい関係ですよね。そういったところは、演じる際に意識されましたか?
松:アナと一緒にいる時、エルサが若々しく、というか、ほっとしているような、かわいらしい姉妹の姿に見えたらいいなとは思っていました。
神田:Wヒロインなので、アナとエルサは対照的というか、アナが明るくて、エルサが内省的で、というふうに対比されがちかと思うんですけど、意外に二人とも、知らない世界に踏み出していきたいっていう気持ち、そしてそれについての恐れは持っていると思うんですよね。アナの方が外に出て行きたい気持ちをうまく表現できているだけで、本当は似た者同士なのかもと思いますね。
主題歌「Let It Go ~ありのままで~」への思い
Q:松さんはミュージカルに出演されていますが、今回吹き替えをやってみて、ミュージカルとミュージカル映画の違いなどは感じられましたか?
松:違いはよくわかりませんが、とにかくその役が伝えたいことに集中するのみでした。その点では、あまり変わりなく臨んだつもりです。ただ、オリジナルの映像に合わせる、ということは第一でした。息遣いなどでも心の揺れが伝わるので難しかったですが、とにかく丁寧にやることを心掛けました。
Q:英語版声優のイディナ・メンゼルはブロードウェイのトップスターですよね。意識はされましたか?
松:最初にお話をいただいて、彼女がオリジナルのエルサをやっていると聞いて、ちょっと嫌な予感がして(笑)。ニューヨークに行った時に彼女の「ウィキッド」を若干時差ボケの中で観たんですけど、一幕のラストの曲(「Defying Gravity」)を聴いてそのパワーに圧倒されたという思い出があるので、まさか彼女と同じ役を日本でやるとは思ってもみなかったし、とってもいい経験になりました。ありがたいです。
Q:中でもイディナが歌う主題歌の「Let It Go ~ありのままで~」は、世界中で大ヒットをしている曲ですよね。
松:とてつもなく大きなナンバーでびっくりしました。最初、自分には歌えると思いませんでした。でも、とてもキャッチーで、もちろん映像のダイナミックさにもぴったり合っていて、歌わせていただけて光栄でした。
Q:神田さんは残念ながら劇中で「Let It Go」を歌う機会はありませんが、聴く側としてこの曲はいかがですか?
神田:今、「歌いたい」って言っています(笑)。わたしが個人的に楽しむということでいいので、歌いたいなと。
Q:ファンが、自分で歌っているところをYouTubeに上げたりもしていますよね。神田さんもやってみるというのはどうでしょう?
神田:いいですね! 許可が取れたら、ぜひ(笑)。
Q:神田さんが今回歌われている楽曲「生まれてはじめて」もとても素晴らしいですよね。
神田:この曲を歌うときには、この作品に関わった人の気持ちを受け継がなくてはと思っています。日本版のオリジナルキャストであるということに自信を持ちたいなと思いますね。
2回観てもらいたい映画に
Q:最後に、本作の見どころを語ってもらえますか?
松:シンプルなストーリーが、映像と音楽の力で豊かに仕上がっていると思います。音楽もメロディーがすごく明るくてカラッとしていて、非常にスピード感があって、オリジナル版と日本版と2回観ていただきたいです。音楽でも色彩でもいろいろな面で楽しめるようになっていると思うので、やっぱり迫力ある映画館でわたしも体感したいと思っていますし、皆さんにも、まずは映画館で観ていただきたいなと思います。
神田:どうしてもヒロインに目が行きますけど、男性もクリストフとハンスっていう対照的な二人がWヒーローみたいになっているし、オラフっていう雪だるまが動くことでファンタジー要素もある。そういう今までにあったクラシックなおとぎ話と、女性が道を切り開いていくという現代的なところの共存が見どころですね。
これまでにミュージカル映画の日本版は多々あったものの、松と神田のように、人気・実力を兼ね備えた俳優がここまで真正面から取り組んだ例は珍しい。実際、日本版を観た人からは「本当の意味で、これがミュージカル映画初のオリジナル日本語吹き替え」「ミュージカル映画でオリジナルを超えるほどの完成度となった初めての日本版」といった絶賛評も寄せられている。見事な表現力で姉妹を演じた松・神田の日本語吹き替え版と、字幕版。一つの作品で2度楽しむ人が、この春は続出するに違いない。
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映画『アナと雪の女王』は3月14日より全国公開