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『青天の霹靂』大泉洋&劇団ひとり 単独インタビュー

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『青天の霹靂』大泉洋&劇団ひとり 単独インタビュー

本当に何もかもが素晴らしかった!

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美

芸人・文筆家とマルチな才能を発揮する劇団ひとりが、自作小説を初監督で映画化した『青天の霹靂』。大泉洋演じる40年前の浅草にタイムスリップしてしまった孤独で売れないマジシャンの晴夫が、若き日の両親と出会って自身の出生の秘密を知る様子を、笑いと涙のエッセンスをちりばめながら緻密に描く感動作だ。スタントなしでマジックに臨んだ大泉と、晴夫の父・正太郎役で出演も果たした劇団ひとりが、撮影を振り返りながら抱腹絶倒のトークを繰り広げた。

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泣ける名ゼリフを書いたのは大泉洋だった!?

大泉洋&劇団ひとり

Q:原作小説と映画では、登場人物のキャラ設定やセリフが激変しましたね。

劇団ひとり(以下、ひとり):映画が良くなるなら何でもやろうと思って、原作はほぼ無視して脚本化しました。文字でしか表現できない小説をそのまま脚本にすると、あまりにも説明的で劇的になり過ぎちゃうんですよ。病院で晴夫と若いころの母親・悦子(柴咲コウ)が会話するシーンも、リハーサルで違和感があったのでセリフを書き直させてもらったら、撮影当日の朝になっちゃって……(苦笑)。皆さんには迷惑を掛けちゃいました。

大泉洋(以下、大泉):いやー、ピリピリしていましたよ。完璧にセリフを覚えて気持ちを乗せなきゃいけないシーンなのに、待てど暮らせど台本が来ない。最悪でも夜11時までには下さいって言ったんですけど、監督サイドからの返答が「とうてい無理です」と(笑)。結局、朝に完成版をもらって、急いで覚えて昼から撮影したんですけど、変更されたセリフが本当に素晴らしくて、前の台本よりも泣けるんですよ。

Q:晴夫が悦子から、「わたしは子供にとってどんな母親ですか?」と聞かれたときの一言。もう、号泣でした。

大泉:あれ、僕が書いたんです。監督が間に合わなかったんで(真顔)。

ひとり:えっ!? そうでしたっけ(笑)?

大泉:なんとかそういうことにしてくれませんか(笑)?

「86テイクに挑んだ男」に監督号泣!

大泉洋&劇団ひとり

Q:大泉さんがガチで挑んだマジックも見どころですが、撮影はご苦労されたんでしょうね。

ひとり:僕は大変じゃなかったんですけど(笑)、大泉さんのプレッシャーたるや大変だったと思います。見る人の解釈次第の演技と違って、マジックは正解・不正解がスタッフにすぐわかっちゃうんですよね。

大泉:まあ、傷つくことも多かったですよね。ある程度マスターした時点で監督たちに見せなきゃいけなかったんですけど、やった瞬間に「ウォォォ!」ってなるはずのマジックでありながら、誰一人驚かない(苦笑)。ひどいときは、「何が不思議なのかわかりません」とか言われて……。

ひとり:それを説明するのって、漫才のボケを説明するより恥ずかしい(笑)。

Q:一連のテーブルマジックを長回しで撮るシーンは、大泉さんの指が動かなくなるまでテイクを重ねたとか?

ひとり:僕は24テイク目が十分良かったから、そこでOKを出したんですよ。でも、大泉さんが練習してこられたことだから、大泉さんが満足するまでやってくださいと言ったんです。そしたら、86テイクまでいっちゃったという(笑)。

大泉:結局、監督のOKカットを超えることができなかったんですよね。最後はカードのシャッフルをする握力すらなくなっちゃいました。

ひとり:カードがしっちゃかめっちゃかに飛んで、どう考えてもNGなんだけど、これがラストテイクだと大泉さんが言ったので、最後まで芝居をしてもらったんです。それがカッコよかった! 超泣けるんですよ。

大泉:映画とはまったく違う、「86テイクに挑んだ男」というストーリーでね。ボロボロなのに最後までやり切って、監督が「OK!」って叫んで終わるんです。

ひとり:その「OK!」が泣けました(笑)。当然OKなわけがないのに、あたかも完璧なものを見たようにふるまう僕。そこが泣きのポイントですね。

大泉:お互い自分自分ですよ(苦笑)。

大泉はグルメを満喫、監督は弁当で準備に没頭

大泉洋&劇団ひとり

Q:昭和の浅草をリアルに再現した長野県・上田市での撮影はいかがでしたか?

ひとり:皆さんが本当に協力的で、ありがたかったです。上田映劇を借りて、そこを浅草のホールにしたんですけど、周りの店も門構えを変えさせてもらったんですよ。メガネ屋さんを飲み屋さんにしたりとか、営業中なのに看板も変えさせてもらって、相当迷惑だし営業妨害も甚だしいと思うんですけど、何の文句も言われなかったです。

大泉:だって、上田映劇の壁に穴(支配人用ののぞき穴)を開けちゃったんですよ! よく開けさせてくれたなって驚いちゃいましたよ。

Q:上田のグルメも楽しめましたか?

大泉:あの町はすごいんですよ。半径100メートル以内にどれだけうまい店があるんだっていうくらい。あんかけ焼きそば、美味だれ焼き鳥、柴咲コウさんと食べた信州そばとか、何を食べてもおいしかった!

ひとり:へえー……全然知らないです(笑)。僕はほとんど弁当でした。

大泉:いや、監督は大変だったんでしょうね。撮影が終わってホテルに戻っても、次の日のこと考えるんでしょ?

ひとり:そうですね。周りに迷惑を掛けたくないという気持ちがあったので、毎日部屋でカット割りを作り直したり、次の日の準備をしていました。

大泉:だから、こちらも誘いづらいところがあって……。

ひとり:いや、別に誘ってくれてもいいんですけど……。

二人:(爆笑)!

もしも過去に戻ったら……超めんどくせ~!

大泉洋&劇団ひとり

Q:もしも過去に戻れるとしたら、やり直したいことってありますか?

ひとり:僕、それを本当によく考えるんですよ。例えば、中学生ぐらいに戻って勉強を頑張ろうかなって思ったりするんですけど、ちょっと考えているうちに全部やり直しかーと思うと超めんどくさくなっちゃって、もう、絶対戻りたくない(笑)。

大泉:僕はね、中学生ぐらいに戻ってゴルフをやりたい。おっさんになってからやったので、いまいち上達しないんです。子供のころからやっていたらなあと思いますね。

ひとり:でも、中学生だとすでに遅いでしょうね。タイガー・ウッズは1歳ごろからやっていますから。めんどくさいですよー、1歳からだと。まず、言葉を覚えなくちゃいけないわけだから(笑)。

大泉:それって、頭の中では「ゴルフやんなくちゃ!」って思っているんだけど、「でも、しゃべれねえしなあ……」みたいな感じ? 確かにめんどくせ~(笑)。

Q:いよいよ映画が公開となりますが、今の率直なお気持ちは?

ひとり:やれることは全部やったんで、あとは判決を待つのみって感じですね。今は本当に大満足で、試写会でも評判が良くて。だから、このまま終わってくれないかな。

大泉:ハハハハ! もう、公開されなくてもいいんじゃないかと。

ひとり:そう、こんなに気持ちのいいまま終われるんだったら未公開でもいいと。これから現実を見なきゃいけないし。

大泉:たまに、非常に面白くて評判も良かったんだけど、興行的にはそれほどでも……って作品もありますからね。

ひとり:それって、テレビ番組で死ぬほど味わってきたわけじゃないですか。あんなに面白かったのが、最悪の視聴率っていう(苦笑)……でもね、今回の役者・大泉洋は、本当に何もかもが素晴らしかった。底力を見てほしいです。

大泉:うれしいですねえ。監督はね、テレビカメラの前じゃ何にも言ってくれないんです。僕を起用した理由を聞かれても、「インド人の話なので違和感がないから」とか、笑いしか取りにいかない(笑)。「(ひとりのモノマネ)いやー、何か恥ずかしいんですよねー、テレビだと」って。しょうがないから、僕がどれだけこの映画が素晴らしいか言うしかないんです。だから、ここはちゃんと書いてくださいね!


大泉洋&劇団ひとり

劇中で謎のインド人と中国人のコンビという設定でステージに立ち、爆笑コントも披露している大泉とひとり。話にオチをつけながらテンポよく進んでいく二人のやりとりは、まるで漫才のような面白さ。だからこそ、撮影時の感動エピソードにグッときてしまう。まさに、笑って泣けて強烈に胸を揺さぶる、本作のようなインタビューだった。高度なマジックの技に果敢に挑戦した大泉の飽くなき役者魂と、食事の時間も惜しんで映画に情熱を注いだひとりの初監督とは思えない才能に、心からの拍手を送りたい。

映画『青天の霹靂』は5月24日より全国公開

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