『薔薇色のブー子』指原莉乃 単独インタビュー
ちょっと素人なんだけど、ちょっと頑張っている指原を見てほしい
取材・文:大小田真 写真:高野広美
HKT48の指原莉乃が、ノリに乗っている福田雄一監督の新作『薔薇色のブー子』に主演。さえない女子大生・ブー子(指原)が、ツイッターを通して知り合った男性と会うために奮闘するも、さまざまなトラブルに巻き込まれていく……という福田テイスト満載のコメディーだ。連続ドラマ「ミューズの鏡」ほかで同監督の作品に何度となく出演してきながらも、「初めて福田監督の作品をちゃんと観た」と話す指原が、撮影を振り返った。
わたしは本物の女優さんじゃない!
Q:完成した『薔薇色のブー子』をご覧になって、撮影時の印象と変わっている部分はありましたか?
全てのシーンにいえることなんですけど、あれだけ長く1シーン、1カットを撮ったのに、ビックリするぐらい削られているなぁ……というのが率直な感想です。でも、映画ってそういうものなんですよね。じっくり撮って、本当に濃い部分だけを使うという。ですから、「あのシーンがカットされちゃっている!」というような場面は全然ないんですよ。むしろ、ほとんど使われていて、それぞれがムダなくつながっているという感じです。映画ってすごいな、とあらためて感じました。
Q:福田雄一監督の演出は、「細かい指示がほとんどない」と言われていますが、むしろ指示を出してもらったほうが演じやすいのではないですか?
確かに、動きやセリフの言い回しをしっかり指示してもらったほうがやりやすいという人もいるみたいですね。ただ、わたしは本物の女優さんじゃないので、指示を出されても間違いなくできません! 頑張ってやってみても、下手な上にわたしらしくなくなっちゃうと思うので、福田監督の演出はむしろわたし向き。やりやすいですね~。そもそも、お芝居に関してはほかの現場をほとんど知らないので、福田監督のやり方に慣れてしまっている部分もあります。多分、相性がいいですよ。わたしと福田監督(笑)。
ほとんどNGがなかった撮影現場
Q:その相性の良さもあってか、本番ではNGがほとんどなかったとお聞きしています。実際はどうだったのでしょう?
それは事実です。NGがなかったというか、福田作品の場合、他ではNGになるものでもOKになっちゃっている気はしますけど(笑)。ただ、わたしとマギーさん、志賀廣太郎さんが共演するシーンがあるんですけど、そこだけは何度かNGを出してしまいました。この三人が登場する、何度か同じパターンが繰り返されるシーンがあるんです。本来は、回を重ねるたびにウンザリした表情をしなければいけないのに、逆に、何度もやるうちにどんどんおかしくなっちゃって。我慢できずに何度か吹き出してしまったんです。
見どころはちょっと素人な部分?
Q:今作は、HKT48やAKB48を支持する人だけではなく、監督や共演者のファンも観ると思います。どんなところに注目してほしいですか?
やっぱり、本物の女優さんじゃないのでお芝居は上手じゃありません。特にコメディーって難しいと思うんですよね。劇中で、ブー子が“ドッキリ”に引っ掛かって落とし穴に落ちるシーンがあるんですけど、当然、演じるわたしはどこに穴があるのか、どれぐらいの深さかを知っているわけですよね。そこで、落とし穴の存在をまったく知らない人のように、いかにぶざまに落ちることができるか? ってことをしなきゃいけません。それはものすごく難しいんですけど、監督や台本の面白さを信用して、「やれることをやるだけ!」という気持ちで撮影に臨みました。そんな、ちょっと素人なんだけど、ちょっと頑張っている指原を見てほしいですね……微妙な表現ですみません。
Q:逆に、指原さんのファンにはどんなところを楽しんでもらいたいですか?
昔に比べると、わたしはだいぶいじめられない……というか弱気じゃなくなっているので、ファンの方から「弱くて、ダメで、いじめられる指原が見たい!」って言われる機会が多いんですよ。この作品では、そんな感じの指原をバッチリお見せできるはずです。……と言いますか、ブー子の姿が描かれる場面ってそういうのしかないので。でも、それでいいんです。この映画は、「一生心に残る名作」というタイプじゃないですから。観ている間だけ笑っていただいて、見終わったらすっかり忘れられてしまう。それぐらいの感覚で楽しんでもらえたらとてもうれしいですね。
進化し続ける指原の夢
Q:昨年の選抜総選挙で1位に輝き、主演映画も公開と順風満帆に見えますが、今後はどんな活動をしていくご予定でしょうか?
映画主演ということで、「女優業に専念する?」みたいな質問をされることが多いんですけど、無理ですから(笑)。ただ、お話をいただけたら、精いっぱい頑張るつもりです。コメディーでも、ホラーでも、わたしでいいのなら、いつでもお声掛けいただきたいですね。福田監督以外の現場でどんなことができるのか自分でもわかりませんが、やってみたい気持ちはあります。お芝居に対する苦手意識はいまだにありますけど、嫌いなわけじゃないんですよ。得意なことじゃない分、発見も多いので勉強になります。
Q:福田監督以外で一緒に仕事をしてみたい相手はいますか?
映画やドラマの現場での福田監督とのコンビも楽しいんですけど、「笑っていいとも!」でタモリさんとご一緒させていただけたり、内田裕也さんと歌わせていただけたり、誰かと共演させていただけると、学ぶことも多くて楽しいですね。いつもいつも「良い経験を積ませてもらっているなぁ」って実感します。先日、マーティ・フリードマンさんのギターに合わせて歌う機会があったんですよ。もう、本当に楽しくて気持ち良かった! 今後は、いろんなミュージシャンの方とコラボしてみたいですね。自分が楽しめる仕事が一番じゃないかなぁって、ずっと前から考えているんです。やっぱり、指原の本業は“歌って踊ること”なのかなって思います。
HKT48劇場支配人、AKB48のセンター、映画主演などなど、多くの経験を積んできたためか、取材するたびに頼もしさを増している指原。今回のインタビューでも、こちらの質問に対して実にムダのないストレートな答えをバンバン返してくれた。ただ、本人も言うように「ダメな指原をもう一度見たい!」という声はよく聞かれるところ。『薔薇色のブー子』は、そんな要望に応えるような作品に仕上がっている。ユースケ・サンタマリア、ムロツヨシ、田口トモロヲ、片桐はいり、佐藤二朗……芸達者な共演者が彼女の魅力をより輝かせている点にも注目だ。
(C) 2014「薔薇色のブー子」製作委員会
映画『薔薇色のブー子』は5月30日より全国公開