『クローバー』武井咲 単独インタビュー
観る人たちにハッピーを分けてあげられる作品
取材・文:小島弥央 写真:杉映貴子
『今日、恋をはじめます』でタッグを組んだ、武井咲と古澤健監督による最新作『クローバー』は、ホテル業界を舞台に、新人OLとドS上司のオフィスラブを描いた胸キュンラブストーリー。高校生を演じた前作から一転、本作ではホテルに勤める新人OLの沙耶にふんし成長した姿を見せる武井咲が、役づくりのヒミツから、ドS上司の柘植を演じる大倉忠義とのラブシーンに挑んだ心境まで赤裸々に語った。
魅力的な沙耶が生まれたヒミツ
Q:武井さん演じる沙耶がとにかく魅力的でした。古澤健監督の演出や脚本の力もあるとは思いますが、武井さんが演じられたからこそ、あれだけかわいらしい沙耶が生まれたのだと思います。何かヒミツがあるのですか?
監督の愛情を注がれるとああなるんです(笑)。わたしは「監督が喜んでくれたらいい」という気持ちでやっているだけで、特別何かをしているわけではないんです。わたしが自然と首をかしげたら、そこに監督がクエスチョンマークを出してくれたり、効果音を付けたりしてくれる。あんなかわいいキャラクターになったのは、監督のおかげだと思っています(笑)。
Q:演じる時に「首をかしげたらクエスチョンマークが付くよ」といった説明はないんですね。ということは、出来上がったものを観た時にはかなり驚かれましたか?
ビックリしましたね! でも『今日、恋をはじめます』の時もそういう演出がされていたので、わたしとしても監督の好みやイメージをつかみやすいというのはありました。そういう意味では、今回はわたしの芝居のテンションと、監督がイメージする沙耶のテンションが同じだったんだと思います。お互いの息が合っていてすごくうれしかったです。
Q:とても魅力的な沙耶ですが、演じる上で武井さんがこだわった部分はありますか?
わたしは沙耶ちゃんをどこにでもいる普通の女の子として演じたかったんです。でも、「普通」を演じるのが一番難しくて……。親近感がないと共感してもらえないし、できるだけ沙耶の気分を(観客に)味わってほしいなと思ったので、観ている人に近いキャラクターでありたかったんです。そのために、どこまでコメディーに持っていっていいのか、どこまでリアルに演じていいのかというところは悩んで、監督にかなり相談しました。
沙耶を演じながら武井咲が感じていたこととは?
Q:実際に演じていて、沙耶の魅力、かわいらしさはどんなところにあると思いましたか?
一生懸命なところですね。柘植さんに対する思いをすごく持っているんだけど、冷たくされて不安になってふわふわしちゃったり、ハルキに助けられて「あれ、ハルキ優しいな」と思ったり、すごく素直に全てのことを受け入れるところがかわいいなと思いました。本当にストレートに恋愛のパワーを感じて行動しているんだなと、すごくうらやましくも思いましたね(笑)。
Q:沙耶と距離を置いて客観視しているように感じるのですが、沙耶とご自分は違うと思われますか?
いつもそうなんですけど、基本的に役と自分を比べたり、重ねることってほとんどないんです。そこに自分は全然いないというか。自分とは別人だし、そういうつもりでお芝居しているからこそ、思い切り泣けたり、怒ったり、笑ったり、できることがあると思うんですよね。
Q:撮影中に、沙耶を演じる一方で武井さんご本人は「柘植さんなんて嫌いだ!」と思ったことがあったそうですが、だからそう思われたのですね(笑)。
そうです(笑)。オフィスで柘植さんとすれ違った時も、こっちは柘植さんを見ているのにスルーして歩いていっちゃって、「もう別れてやる!」と思いました(笑)。冷たいにもほどがあるし、本当に寂しい気持ちになって、「沙耶ちゃん、よく耐えられるなあ」と。
Q:逆に、演じながらハッとさせられたり、「これ、ずるいな!」と思わされたことはありましたか?
やっぱり誕生日プレゼントのシーンかな。「柘植さん、やるな!」と思いましたね(笑)。会社では立場があるから不安にさせられることが多いけど、そういう優しいところが沙耶ちゃんは好きなんだろうなと思ったし、あの一瞬で柘植さんの気持ちやすごくピュアで素直な部分が見えて、ズルいな~と思いましたね(笑)。
大胆シーンにも挑戦!一方、監督と大倉は緊張……
Q:本作では大人になった武井さんが見られるシーンがあり、「そこまでしちゃうの!?」という驚きがありました。あのシーンに臨む時はどんなお気持ちでしたか? また、撮影の様子はいかがでしたか?
あのシーンには監督がすごくこだわっていて、「うそのないようにしたい」と言っていました。わたしと監督の中で『今日、恋をはじめます』の時より成長した女の子にしたいという思いもあったので、わたしもアイデアを出しました。原作漫画を読んだ時も思ったんですけど、ああいうのって付き合っている二人の中ではすごく自然な流れだし、恋愛していたら普通のことで、そういう意味ではすごく必要なシーンだと思ったんです。だから、何もイヤなことはありませんでした。監督なら大丈夫だと思っていたので、「何でもします!」という感じでしたね(笑)。
Q:ドーンと構えていらしたんですね(笑)。かえって、監督や大倉さんの方が緊張していたのでしょうか?
そうですね(笑)。まず監督と大倉くんとわたしの3人で打ち合わせをして、細かい説明を聞いたりしてから撮影をしたんですけど、とにかく監督がわたしにばかり気を使っていたんですよね。だから、「わたしは全然大丈夫なので大倉さんをフォローしてあげてください」という感じでした(笑)。
Q:出来上がったものを観て、どう思われましたか?
それがマネージャーや事務所の社長、プロデューサーさんとみんなで観たので、恥ずかしくなっちゃって(笑)。まともに観られなかったです。もう一回観ないと……(笑)。
見終わった後はハッピーな気持ちでいっぱいに!
Q:観てくださる方にこの作品がどんなふうに届いたらうれしいですか?
この作品を見終わった時にすごくハッピーな気持ちでいっぱいになったんです。それは撮影をしたものが形になった達成感とかではなく、本当に素直に映画を楽しめたからなんですよね。なので、観る人たちにハッピーを分けてあげられる作品になったんじゃないかなと思います。
Q:少女漫画特有の胸キュン設定の一方で、リアルな恋愛物語としても楽しめる作品になっていますよね。
前半はかなりコメディーの要素が強くてポップに進んでいくんですが、後半はすごくドラマチックにストーリーが展開します。四角関係がどんどんずれて柘植さんと沙耶がすれ違っていく、現実味のあるラブストーリーになっているので、中高生はもちろん20代の方にも恋愛物として、しっかり楽しんでもらえると思います。胸キュンシーンを詰め込むだけじゃなく、柘植と沙耶とハルキと栞の四角関係が、それぞれの視点でいろいろな角度から見られるようになっているのも面白いと思うし、見終わった後には夢があるなあと感じたので、ぜひ楽しんでいただきたいですね。
20歳になった武井咲の魅力がこれでもかと詰まった本作。大胆シーンにも挑戦しているが、本人は「必要なシーンだと思ったし、『何でもします!』という感じでした」とあっけらかん。そんな男前な武井とは対照的に、古澤監督と大倉がアタフタしている光景が脳裏にありありと浮かんでしまった。女優として新たな1ページを刻んだ彼女のちょっぴり大人になった姿、今しか見られない表情の数々が存分に楽しめる作品だ。
(C) 2014「クローバー」製作委員会 (C) 稚野鳥子/集英社
映画『クローバー』は11月1日より全国公開