『寄生獣』染谷将太&阿部サダヲ 単独インタビュー
台本を確認中のかわいいミギーがいた
取材・文:永野寿彦 写真:本房哲治
1990年代に一世を風靡(ふうび)した岩明均のコミック『寄生獣』を2部作の構成により実写映画化。人間と、人間に寄生して支配する謎の生物パラサイトとの戦いを通し、「人間とは何か」という根源的テーマにまで迫る物語の中で鍵となるのが、高校生・新一と彼の右手に寄生したパラサイトのミギー。その“二心同体”ともいうべき関係を体現した染谷将太と阿部サダヲが、撮影現場の苦労、本作への思いを語った。
染谷&阿部を魅了した原作の世界観
Q:原作コミックは読まれていましたか?
阿部サダヲ(以下、阿部):ビックリしましたね。初めて読んだのは10年ぐらい前のことなんですけれど、僕はあまり漫画を読まないんですよ。誰だったかは覚えていませんが、役者仲間に薦められて。漫画ってこんなすごいことになっているんだな、と。
染谷将太(以下、染谷):本当にそうですよね。原作は以前から知っていたんですが、全巻読んだのは新一役のオファーをいただいてからです。今から20年前の作品なのに全く色あせていない。クリーチャーが出てくる作品は結構ありますけれど、テーマも含めてかなり異質だと思いました。パラサイトが非常に個性的ですし、敵なのにコミュニケーションを取れてしまうところや、そこから見えてくる人間同士の関係性も面白くて、魅力的な物語だと思いました。
Q:実写で映画化されるという話を聞いた時はどう思われました?
染谷:一体どうなるんだろうって楽しみで仕方なかったですよ。
阿部:ね。どうやって映画化するんだろうと思っていたんですけど、監督が山崎(貴)さんだと伺って、なるほどなあ、と。それでどんな役を演じるんだろうと楽しみにしていたらミギー役だと言われて(笑)。
染谷:(笑)。僕も、最初はミギーは声だけだろうと思っていたので、阿部さんが演じることになるなんて想像もつかなかったです。
ほぼぶっつけ本番の演技にタジタジの阿部
Q:確かに。ミギーは新一の右手に寄生するパラサイトですから、実際に演じることのイメージが湧きづらいですよね。
染谷:でも、モーションキャプチャーを使って阿部さんの動きをCG化すると聞いて、すごくしっくりきたんですよ。阿部さんなら、原作の魅力的なミギーをそのまま実写に落とし込んでくださるだろうな、と。だからとてもうれしかった。と同時に、すごく神経も使いました。阿部さんがつくり上げてくださったミギーを、最終的に動かすのは自分なので。ある意味、「一人二役なんだ」と感じながら、自分の右手のことを意識しながら演じました。
Q:劇中ではまさに名コンビといった競演ぶりでしたが、実際にはどういう方法で撮影されたんですか?
阿部:僕のモーションキャプチャーの撮影が先でした。まず最初に舞台の稽古みたいにして、染谷くんと一緒に芝居を作っていく。それが終わったら今度はパソコンに動作のデータを取り込むための機材を着けて一人芝居をするんです。なので、想像力がすごく大切でしたね。(新一との)距離感をつかむのも難しいですし。
染谷:見ていてもこれは大変だろうなって……(笑)。僕が5か月以上かけて撮影したものを3日間ぐらいで一気に演じられたわけですから(笑)。
阿部:撮影している時も「大変ですね」って何度も声を掛けてくださったんですけど、もうホントに大変だったんですよ(笑)。自分としては「これは仮の撮影なんだから大丈夫! 後でもう一度本番として撮影し直すんだよね」と思っていたんですけど、どうやらそれが本番で……。
染谷:ですよね(笑)。でも、阿部さんのミギーはとても魅力的でした。モーションキャプチャーの現場ではリアルタイムでミギーの映像を確認できるんですけど、すごくかわいいミギーがいたんです。台本を確認しているミギーとかも見られて(笑)。
阿部、「やりづらいッス」と苦戦中の染谷を目撃
Q:染谷さん演じる主人公の新一は、そんなミギーが右手に寄生してしまう役。現場では自分の右手の先にミギーを想定して演じていたんですよね?
染谷:その現場を見ていたことは、のちの撮影にも生かされたと思います。右斜め前に阿部さんが立っていることを想像しながら演じることができたので。ただ、ミギーに引っ張られたりもするので、ミギーの動きが自分の体にどう影響するのかを考えながらパントマイム的なことなど、いろいろ試行錯誤しながらやっていきました。そういう意味では、こっちはこっちでやっぱり大変でしたね(笑)。
阿部:大変ですよね。撮影現場には1日しか行けなかったんですけど、染谷くんの第一声が「やりづらいッス」だった(笑)。そうですよね。声だけを頼りに演じるのはやりづらいだろうなって。いくらミギーのフィギュアが置いてあっても、(僕が演じるミギーの)声はそれとはまた別のところから聞こえてくるわけですから。
染谷:ただ、阿部さんが演じたミギーの動きをいつでも見られるような状態ではあったので、迷うことがあったら都度確認しながらやっていきました。
新一&ミギーの名コンビが完成した感動
Q:完成した作品をご覧になってどう思われましたか?
阿部:原作を生かしながら、映画ならではの面白さになっていると思います。パラサイト役の方々の演技も、まるで前衛の演劇を見ているみたいで「なんなのこの人たち!?」って。僕はそういうところも笑えたりして(笑)。
染谷:僕も自分が出ている作品にもかかわらず、素直に観客目線で楽しめました。アッという間に終わってしまって、早く完結編が観たいと思ったぐらいに。
阿部:すごいですからね、映像。自分が演じたミギーもよく動いていましたし。山崎監督と一緒につくっていった、例えば「ちょっとガニ股で動いた方が面白い」と言われた動きが、ちゃんと映画の中でミギーの個性になっている。モーションキャプチャーって、すごい再現能力ですよね。
染谷:個人的には、スクリーンの中で、ちゃんと自分の右手に阿部さん演じるミギーの存在を感じられたことにすごく感動しました。
撮影の際は実際には共演することのなかった染谷将太と阿部サダヲ。しかし、インタビューに現れた二人は、まるで劇中の新一とミギーと同様に、時にツッコミを入れ、時にフォローするという絶妙なコンビネーションのトークを展開。特に、撮影現場には1日しか顔を出せなかったという阿部が来年4月公開の完結編の撮影現場について染谷に質問しているさまは、まるでミギーそのもの。そんな二人だからこそ体現できた“二心同体”の熱演に魅せられる一作となっている。
【染谷将太】
ヘアメイク:AMANO
スタイリスト:小橋淳子
【阿部サダヲ】
ヘアメイク:NORITAKA NODA
スタイリスト:チヨ
『寄生獣』は11月29日より全国東宝系にて公開/『寄生獣 完結編』は2015年4月25日より公開