『アオハライド』本田翼&東出昌大 単独インタビュー
役と一体化して過ごした時間
取材・文:須永貴子 写真:高野広美
累計800万部超という、驚異的な発行部数を誇る少女コミック「アオハライド」。原作者の咲坂伊緒が“青春(アオハル)”と“ride(乗る)”を組み合わせて作ったタイトルを持つ青春ラブストーリーを映画化したのは、青春映画の名手・三木孝浩監督。主人公の双葉をフレッシュに演じた本田翼と、双葉が恋する洸役で出演作が相次ぐ東出昌大が、作品に対する思い、高校時代、そしてお互いについて、息の合った掛け合いで語り合う。
高校生役はこれが最後?
Q:オファーを受けたときの心境は?
東出昌大(以下、東出):僕は三木監督とご一緒したいなと思っていたので、お話をいただいて、原作を読む前に「ぜひやりたいです」と言いました。
本田翼(以下、本田):そうだったんだ!
東出:うん。三木監督の作品は若い世代を描くものが多いので、この年齢でできるのかな、という不安があって。でも受けたらやるしかないし、三木監督なら何とかしてくれるだろうなとも思いました(笑)。
本田:わたしは原作が大好きだったので、単純にうれしかったです。自分も含めファンが多い作品だし、双葉ちゃんになることや、主演のプレッシャーはもちろんあったんですけど、制服を着たら双葉として元気でいられました。自分と役が近くなったから、東出さんにも洸として接していたし。
東出:そうだね。以前、『クローズEXPLODE』の現場で豊田(利晃)監督が「憑依(ひょうい)型であるほど、俺はいい俳優だと思う」とおっしゃっていたんですけど、確かに撮影中の昼間と、夜の素の顔が違った。今回一緒になった役者は、割とそのタイプが多かったと思います。千葉雄大だけは役と素がかなり近いので、憑依(ひょうい)というのとはちょっと違うけど(笑)。
本田:東出さんも今ほどしゃべらなかったし、笑っていてもどこか洸の暗さが残っている感じだった。
東出:そういうときに翼ちゃんが「なーに暗い顔してんのー!」って話し掛けてくるところがまた双葉っぽかったね。
Q:高校生役はこれが最後、と思いましたか?
本田:現場に入るときは「これで最後!」という気持ちはありました。でも、その日の撮影を終えて制服を脱ぐたびにどんどん名残惜しくなってきて。今は、生涯高校生役をやれる人間でありたいって思っています。
東出:わからないですよね。作品によっては、30歳を超えても演じる機会をいただけるかもしれないですし。ただ、実年齢が高校生から遠ざかる分、リアルなキャラクターからは遠ざかるのかな、とは思います。
アオハル不足だった高校時代
Q:本作には恋愛だけではなく、友情も描かれています。冒頭、仲良しグループの中で波風を立てないように自分を押し殺していた双葉に共感する女の子は多いような気がします。
本田:サラッと描かれているけど、みんなきっとあそこでグッとくると思うんですよね。
東出:双葉が無理をしていることを洸が見抜いたように、男って、意外と女子のああいう感じを見ているし、わかっているんですよね。ファッションでグループになる感じ、僕はあんまり好きじゃないです。
本田:わたしも苦手。双葉みたいに、グループからはじかれるのが怖くて言いたいことをはっきり言えなくて悩んでいる子ってたくさんいると思う。そういう子が、勇気を出した双葉を見て、少しでも自分の気持ちを正直に伝えてくれたらなって思います。
Q:本田さんは、自分の意見を言えるほうでした?
本田:言えました。マイペースだったので、「わたしは違うと思う」って。波風立ちましたけど。
東出:立ったんだ(笑)。
本田:でも、時間がたてば収まるだろうなってなんとなくわかっていたので。
東出:強い(笑)。男はグループ内でそういう関係にはならないからなあ。ただ、学校全体でのスクールカーストみたいなのはあった。
本田:“スクールカースト”っていう言葉があることが切ないよね。学校がつらかったら、外に逃げればいいと思う。習い事でも何でも、好きなことでつながっている人が学外に一人でもいると全然違うから。
東出:だね。
本田:東出くんは剣道やっていたんでしょ?
東出:うん。でも、大嫌いだった。
本田:「勝ちたい」という気持ちで続けてきたの?
東出:いや、おやじが剣道の先生だから、他のことをやらせてもらえなくて、流されるままにやっただけ。バイトしてみたり、『アオハライド』みたいな青春を送りたかった(笑)。
本田:わたしもバイトばっかりしていたからわかるよー。サッカー部のマネージャーとかやりたかった。
東出:マネージャーの資質ないだろ(笑)。
本田:ある! 洗濯は好きなの! タオルとか洗って持っていきたかったもん!
東出:でも、「これ洗っといて」って言われたらむかついてそう。
本田:うん。洗わずにファブリーズ掛けて終わらせる(笑)。
本田翼は“選ばれた人”
Q:初めての共演で、刺激を受けた部分はありますか?
本田:こんなに真面目な同世代の人を見たのは初めてです。
東出:そこまで!?
本田:「一」聞かれたら「十」返すでしょ。自分の意見をしっかりと持っているんだなって。わたしは監督に「どうしたい?」って聞かれても、何も考えていないから「何でもいい」って言っちゃう。だからすごいなと思った。
東出:本人は「考えていない」って言うけど、それに伴った努力もしているし、せりふもだいぶ前から入れて、現場に入ったときにたたずまいが完成されているところは座長だなと思いました。あと、映画の中の双葉を目で追っちゃうように、現場でも存在感があるし、“選ばれた人”だと思う。
本田:ちょっと盛ってくれた?
東出:ううん(笑)。いやー、でも、いろいろあったなあ。最初はあんなに人見知りだった子と、こんなに遠慮なしに話せるようになるなんて。
本田:普段の仕事ならニッコリ笑って元気に「おはようございまーす」って言えるんだけど、今回は初めての地方での長期ロケだし、最初から素を出そうと思ったの。だからすごくラクだったし、すぐに東出さんとも打ち解けることができたんだと思う。
東出:最初はあまりに人見知りがひどくて「俺、嫌われている!?」って思った。でも、このままじゃ話にならないと思って、女優さんだけどご飯に誘って。途中からは翼ちゃんから「ご飯行くよ!」みたいな(笑)。その変わりようもすごい。
本田:お互いにねじ曲がっているよね。でも、真面目なところもある。変だよね。
東出:めちゃくちゃ仲良しってわけじゃないんだけど、すぐに「あ、同類だな」とは思った。仕事もプライベートも僕らはすごくマイペース。だから僕らのペースは絶対に交わらない。お互いのペースを尊重するからラクなんだろうね。
本田:言いたいことをズケズケ言える。東出さんが、わたしの食べ方とかを注意してきたときに、「もう! うるさいなー(笑)」って言えたし。
東出:本当に気を使わないよね(笑)。
本田:あなたにはね。他の人には気を使っています(笑)。
4歳違いの兄妹のような気の置けない関係は、二人が双葉と洸というキャラクターを真剣に演じ、向き合ったことで、築かれたものだろう。「本音でぶつかり合うことがアオハルだと思う」と東出が言うように、二人の間にはうそもなければ駆け引きもない。三木監督のもと、二人がライドしたアオハルに飛び込まない手はない。
映画『アオハライド』は12月13日より全国公開