『名探偵コナン 業火の向日葵(ごうかのひまわり)』ポルノグラフィティ インタビュー
16年のキャリアの中でも最高傑作を目指した
取材・文:高山亜紀 写真:奥山智明
映画『名探偵コナン 業火の向日葵(ごうかのひまわり)』の主題歌「オー!リバル」を書き下ろしたポルノグラフィティ。「リバル」とはフランス語やスペイン語でライバルを意味し、劇中のコナンと怪盗キッドの関係を思わせる。また、彼ららしいラテン調の曲がエンディングで流れると、作品の世界観と共に曲のイメージも大きく広がりを見せ、初コラボとは思えないほどマッチング。幸せな出会いとなったコナンへの思いを二人が語る。
16年のキャリアの中でも最高傑作を目指した主題歌
Q:オファーがあった時の気持ちはいかがでしたか。
岡野昭仁(以下、岡野):日本だけでなく、アジアや世界でも人気のあるシリーズなので、この作品に携われるということは、すごくありがたいお話だと思ったのと同時に、ハードルがどんどん上がってきている状況なので、僕たちも16年のキャリアの中でも、最高傑作といわれるものをしっかりと作り上げたいと思いました。
新藤晴一(以下、新藤):コナンが長く愛されている作品だというのはよく知っていたのですが、周りの人たちにもコナン世代がたくさんいて、「主題歌!? すごいじゃん!」って盛り上がってくれているのを目の当たりにすると、あらためて偉大な作品なんだなと感じましたね。
岡野:親戚の子が今度、小学校6年生になるんですが、僕らがコナンの主題歌に決まったって知った時のリアクションがすごくて……。これまで僕が何をしようが全く反応がなかったのに、初めて大絶賛されました。いろんな世代に影響力があるんだと実感して、これは大変なものに携わるんだなと思いました。
Q:これまでなかったことが不思議なくらい、ぴったりなコラボだと思いました。
岡野:映画製作サイドから、僕らのラテン調な感じをリクエストしていただいたのですが、最初はストレートにそれをやることに「自分たち的にはどうなんだろう?」と少し抵抗がありました。だけど、ゴッホの名画「ひまわり」が題材だとか、それが描かれたフランスのアルルの丘がエンディングの映像で登場するとか、いろんなことを知っていくうちに、自分たちの得意分野であるラテン調は外せないどころか、バッチリ合うと思ったので、恐れずに真正面から楽曲を作ろうと思い直したんです。自分たちとしては昔、通った道をたどるみたいで、キャリア的には少し怖いところもあったので、このお話がなければまずチャレンジできなかったですね。
Q:曲を作るにあたって、どの程度まで資料を利用したのでしょうか。
新藤:台本をいただいたのですが、あまり読み込むと世界観に引っ張られ過ぎてしまうので、薄目で読んだという感じですかね。この辺は難しいところです。シンクロするのはいいけど、べったりになっても、僕らの作品ではなくなってしまう。いい距離感を保つために、いただいた資料からフィーリングだけを受け取るようにしました。
コナンとキッドのように「リバルな関係」の二人
Q:リバルという言葉、知りませんでした。
新藤:僕も知りませんでした(笑)。今回はライバル関係の詞を書こうとしたんですが、ライバルという言葉だとちょっと、熱過ぎて……。汗臭過ぎるというのかな。なので、そういうスペイン語やフランス語の象徴的な言葉はないかなと探して、「リバル」という言葉を見つけました。
Q:岡野さんはどんな思いで、歌っていますか。
岡野:初めに「ソウル&ソウル=魂のぶつかり合い」とありますが、やはり、熱いものがないとぶつかれないと思うので、初っぱなのサビから抑えることなく、情熱を全て出し切りました。映画のタイトル「業火の向日葵」にふさわしいように仕上げたいと思っていましたので、血管が切れるほど、熱く歌わせてもらいました。
Q:二人にとって、リバル=ライバルってどういう関係性のことなんでしょう?
岡野:やっぱり、切磋琢磨(せっさたくま)みたいなこと。お互いがその存在があるから引き上げられていく。当たり前のことのようですけど、なくてはならない、自分の人生において目標になるいい対象。そういう存在がある人生はいい人生でしょうね。
新藤:スポーツ選手にはわかりやすいライバルがいますよね。それによってお互い成長することができる。現実の世界で同世代にいることは素晴らしいことだけど、場合によっては時空を超えてもライバルになれる。自分たちに置き換えていうと、過去の名作といわれる音楽を聞いた時がそう。「ザ・ビートルズは、このアルバムは20代で作ったんだ」と知った時に、打ちのめされることもある。追いつけとまでは思わないけれど、すごく悔しいと思うこともある。面と向かったものだけでなく、いろんな形があると思う。相手がいるということは掛け替えのないことだとは思いますね。
Q:お二人はまさにライバル関係ですよね。
新藤:まあ、ライバルというよりかは「頑張っているから、頑張ろう」という感じかな。
岡野:彼がいい曲を書けば、僕はもっといい曲を書きたいと思うし、あらためて言うのは恥ずかしいですけど、そうなんじゃないかなと思います。
犬と粒立ちでなら、声優デビューもアリ!?
Q:今回は榮倉奈々さんがゲスト声優を務めていましたが、声優として作品に参加してみたいという気持ちはありますか?
岡野:声優ですか。僕は本当に大根(役者)だと思うので、大惨事になるからやめておこうかな(笑)。アニメで育ってきた世代でもありますから、楽しそうだなとは思うんですが、知れば知るほど、奥深い世界だとも思う。後悔したくないから、ちょっと怖いです。
Q:こういう役なら出てみたいというのはありますか。
岡野:どうだろうなぁ。犬の鳴き声とか? 生き物が違うから、「下手で当たり前じゃん」っていうのだといいかな。鯨役とか(笑)。
新藤:粒立ち! ご存じですか? この前声優さんと、お仕事させてもらう機会があったんですよ。ガヤ、あるでしょ? あのガヤガヤの中からちょっと際立って聞こえてくる「お代わり!」「もう一杯!」とかそういう言葉を声優業界では粒立ちと呼ぶんですって。この専門用語をいつか使ってみたいなと思っていたんですが、やっと使えました。そんな機会、いつあるんだろうと思っていたら、いまありました。よかった(笑)。
僕らの曲でコナンとキッドの活躍を何度も思い出して
Q:実際、エンディングで曲が流れた時はどう思いましたか。
岡野:最後、コナンとキッドだけでなく、チャーリー警部とキッドのライバル関係も生まれてのエンディングだったので、本当にいいところで使ってもらえたと思いましたね。しかも、画(え)が美しい。あの最後に使っていただいた画(え)があったおかげで、曲があそこまで広がっていると思うので、本当にありがたいの一言です。
新藤:曲は全編のほかに映画のエンディングのサイズに作ったものをお渡ししていたんです。ところが、映画で使われる予定のなかった、本編の最初の20秒くらいでギターのフレーズをしっかり使ってくれていたので、ガッツポーズしました。キッドのいいシーンで俺のギターが流れてきて……個人的にうれしかったです!!
疲れた顔一つ見せず、一人一人にしっかりあいさつする細やかな気配りの岡野。一方、スマホでコナンと記念撮影するなど、天真らんまんな新藤は、いるだけでその場がパッと明るくなる。まさにライバル関係の対照的な二人がいてこそポルノグラフィティであり、彼らが互いを尊敬し合っているからこそ、コナンの世界をより深いものにしてくれる主題歌「オー!リバル」が生まれたのだろう。
(C) 2015 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
映画『名探偵コナン 業火の向日葵(ごうかのひまわり)』は4月18日より全国公開