『海街diary』綾瀬はるか&長澤まさみ&夏帆&広瀬すず 単独インタビュー
4人の女優が本気で憧れた4姉妹の物語
取材・文:那須千里 写真:吉岡希鼓斗
現在も連載が続く吉田秋生の同名漫画を、『そして父になる』の是枝裕和監督が映画化した『海街diary』で、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの豪華共演が実現した。四季が移ろいゆく鎌倉で、両親がいなくなった古い一軒家に暮らす姉妹の日々を描いた本作は、原作モノではあるが是枝監督の真骨頂ともいうべき家族の物語だ。長女の幸、次女の佳乃、三女の千佳と、腹違いの妹であるすずの4姉妹を演じた4人が、作品に込めた思いを語り合った。
綾瀬の天然発言にドギマギ
Q:お互いの第一印象を覚えていますか?
夏帆:最初にみんなで会ったのはお花見だよね?
綾瀬はるか(以下、綾瀬):あ~そうだ!
夏帆:ちょうど東宝スタジオの桜がきれいに咲いていたから、顔合わせと称して、みんなでお花見がてらご飯を食べて、お団子を食べて、ちょっとだけ台本も読んで……。
長澤まさみ(以下、長澤):夏帆ちゃんがずっとしかめっ面してたのを覚えている(笑)。
綾瀬:大きなメガネを掛けていて、のそのそって入ってきたから、最初は誰かわからなかった(笑)。
夏帆:劇中で掛けているメガネも私物なんですよ。丸くて牛乳瓶みたいなレンズで、オタクみたいな。しかもあのときは緊張していたので(笑)。
Q:実年齢でも末っ子の広瀬さんは、先輩であるお姉さんたちと会ってみていかがでしたか?
広瀬すず(以下、広瀬):本当にそうなんだ! って思いました。そのお花見で長澤さんが一時期中国にいた話をしていたときに、綾瀬さんが「じゃあ、フランス語しゃべれるの!?」と全然違う国の言葉を言っていて……。
長澤:ちゃんと話を聞いているのかなって思ったんだよね?
綾瀬:これはね、今すずが作った話だと思います(笑)。
長澤:その聞き方があまりにも自然体すぎて、笑っていいのかどうか、みんなちょっとドギマギしちゃったんだよね。
夏帆:狙ったボケなのか、素のボケだったのか、どっちなんだろうって。
綾瀬:本当に間違っているときと、面白いから言っているときと、両方あるから!
長澤:両方の意味を持たせられると、戸惑うんだよ(笑)。
それぞれが分析する4姉妹の魅力とは
Q:劇中の4姉妹の中でも、綾瀬さんと長澤さんは特に姉妹ゲンカなどで絡むことの多い長女と次女役でしたが、お芝居を一緒にしてみた感想は?
長澤:はるかちゃんは寛容だし、見た目からも接した感じからも女性らしい柔らかさがあって、でもつかみどころがなくて。不思議な魅力なんですけど、だからこそ初めから「お姉ちゃん」としていつも頼る気持ちでいられたし、それも受け止めてもらえているんだなと感じていました。
綾瀬:わたしは、姉妹ゲンカでよっちゃん(長澤)が言い返してくるのがすごくかわいくて。ああ言えばこう言うけど、自分の方が姉だから強いっていう余裕もあって(笑)。こういう妹がいたらかわいいだろうなって思いました。
Q:自分の演じた役のどんなところが好きですか?
綾瀬:幸はやっぱり長女だから、本当はすごく母性や優しさを持っているんだけど、それをうまく表わせない不器用なところがとてもいとおしいなと思いましたね。
夏帆:千佳ちゃんは本当にいい子で、例えば異母妹のすずに対して『わたしはお父さんをあまり知らないけど、すずはよく知っていて……』というようなちょっと際どいことも、嫌味なくさらっと言える純粋さみたいなものがある。そういう部分はすごくすてきだなと思いました。
長澤:佳乃の好きなところは、嫌なことがあってもお酒を飲んだら次の日には忘れているところかな。すごくうらやましいです。諦めをつけるのが早いというか、潔い。そのあたりはわたし自身とは対照的かも。だから一人の人間として見ていて勇気をもらいましたね。
広瀬:すずちゃんがお姉ちゃんたちに受け入れてもらってからの、変に肩に力が入っていないときのいろいろな感情だったりというのは、すごくいいなと思いました。幸姉と梅ジュースを飲んで、梅にブスブスと文字を刻むシーンでは、これが本当のすずちゃんなんだなっていうのがつかめた瞬間があったんです。
演者の個性や関係に沿って変わる是枝組の台本
Q:季節を追って撮影していく間に、4人の関係が変わってきたなと実感したことはありますか?
長澤:台本が日々変わっていったもんね。
一同:うん。
長澤:現場でのこの4人の様子を見て、監督から新しいアイデアがどんどん生まれてくるから、毎日シーンは増えるし、なくなるシーンもあった。
夏帆:セリフも変わるし。
広瀬:すずちゃんのマニキュアのシーンもそうだよね?
長澤:うん。あと、あれだよね、柱で身長を測るところ。
綾瀬:……あれ、どうだったっけ?(笑)。
夏帆:どれが元の台本にあったのか忘れちゃうぐらい。
長澤:監督は多分、わたしたち自身から遠すぎるものは求めないというか。もともとわたしたちが持っている良い部分を伸ばそうという思いが演出の中にあるから、そういう意味で作品がどんどん良い方向へ形を変えて、逆に作品の方がわたしたちに寄り添ってくれたのかなと思いますね。
女性に対する監督の思いが詰まった映画
Q:4姉妹を演じてみて、女同士だからこその良さ、もしくは難しさを感じたところはありますか?
夏帆:わたしは男兄弟しかいないので、他の姉妹がどういう距離感なのかわからないんですけど、この4姉妹は良くも悪くもすごく距離が近い感じがして、そこがうらやましかったです。あんなふうに何でも相談してっていうの、兄弟姉妹の間である?
長澤:ないない。夏帆ちゃん、はるかちゃん、わたしの3人は男兄弟だから姉妹の世界はちょっと未知な感じ。すずだけなんだよね、実生活で姉妹がいるのは。
広瀬:わたしはお兄ちゃんとお姉ちゃん両方います。服を取り合うシーンは、いつもだったらよっちゃんがわたしで、幸姉がお姉ちゃんみたいな感じ。『勝手に触らないでよ!』とかいう会話をよくしているので、思わず笑っちゃいました。
綾瀬・長澤・夏帆:アハハハ!
綾瀬:本当にこの姉妹の中に入りたいって思った。
夏帆:そう、映画を観ていてすごく思った!
Q:カンヌ国際映画祭にも出品されたことで、海外のお客さんの反応も気になりますね。
広瀬:実は撮影中に、みんなで行けたらいいねという話をしていたんですけど、まさか本当に実現するなんて!
綾瀬:日本の四季もきれいなので、日本のそういう美しいところも観てもらえたらうれしいですね。
夏帆:実際に海外の方が観たときの反応を、自分もその場にいて感じられる機会はなかなかないですよね。だからカンヌ映画祭では、みんながどんな顔をして観ているのか、自分の目で確かめられるのがすごく楽しみだったんです。
長澤:この映画は女性の物語だから、日本女性ならではの良さはもちろん、女性ならどこの国の人でもわかる何かというものが必ず感じられる映画だと思うんです。何より是枝監督自身の女性に対しての思いが詰まっているので、それは観てくれた人みんなにきっと伝わると思っています。
今の若い世代を代表する4人の女優が並ぶとそれだけで辺りがパッと明るくなるようなまぶしさに包まれる。だがその間に流れる雰囲気は和やかで、自然とガールズトークが弾む。劇中の4姉妹とも無理なく重なる姿からうかがえるのは、単純に血縁という事実に甘えず、お互いに相手のことを思いやったり気遣ったりという努力があってこそ成り立つ、美しい女性同士の関係だ。それは是枝監督がずっと描いてきた家族の形でもある。艶やかな女優たちを、鎌倉の緑豊かな風景と共に、いつまでも眺めていたくなるような一本だ。
(C) 2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ
映画『海街diary』は6月13日より全国公開