『ターミネーター:新起動/ジェニシス』アーノルド・シュワルツェネッガー 単独インタビュー
復活!67歳の現役ターミネーター
取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一 写真: 金井尭子
カルフォルニア州知事の大役を終え、俳優復帰を遂げてから4年。アーノルド・シュワルツェネッガーが大ヒットシリーズ『ターミネーター』に帰ってきた。12年ぶりに演じるターミネーターは、1作目ではその存在を闇に葬るために執拗(しつよう)に追いつめた、未来の指導者ジョン・コナーの母親サラ・コナーを守り、育てる「守護神」として活躍。マシンでありながら外見が年齢を重ね、若い頃の自分自身とのバトルも展開するなど、これまでにない新たな一面を見せる当たり役への思いと、俳優活動について、シュワルツェネッガーが語った。
今度のT-800はサラ・コナーの父親的存在!
Q:この映画で、あなたはどんな新しいターミネーターにふんしているのでしょう?
今作の僕は、新しいターミネーターというわけじゃない。新しい点は、僕がターミネーターでありプロテクター(守護神)でもあるということだ。ちょうど『ターミネーター2』と『ターミネーター3』で果たした役割に近い。もし、誰かがサラ・コナーを脅かそうとしたら、それをターミネート(消去)すると共に、彼女を守りもする。子供のころから彼女を育ててきた、父親的な存在としてね。演じるということにおいて、素晴らしい役だったよ。
Q:12年ぶりにシリーズ復帰を決意した理由を教えてください。
僕は、これまで演じてきたキャラクターの中でも大好きなものが三つある。一つは『ツインズ』の役で、もう一つは『コナン・ザ・グレート』、そして『ターミネーター』だ。それぞれの役が僕のキャリアにおいて、とても重要な足掛かりになった。そういった人気キャラクターの場合、映画スタジオはしばしば演じる俳優をスイッチしたりする。これまでに何人のジェームズ・ボンドがいた? バットマンもスパイダーマンもみんなそうだ。ターミネーターだって同じようになることはあり得たんだ。でもこの映画の製作陣はそうしなかった。またこの役を依頼されたことを、とても光栄に感じたよ。
Q:しかし、前作の『ターミネーター4』には出演されませんでした。
そうだね。僕は前作はやらなかった。なぜなら、当時はカルフォルニア州知事だったから。両方はできないよ。もし僕が、「今から5か月間サクラメント(カリフォルニアの州都)を離れる。『ターミネーター4』をやることになるから」と言ったら、僕を選んだ人々はとても気分を害し、だまされたと感じただろう。だから当時の製作陣には、「ワンショットですら、僕はやらない」と伝えていたんだよ。
もう一人の自分を生み出す苦労
Q:本作が過去の作品と比べて最も進化したのはどの部分ですか?
視覚効果だね。1984年や1991年には僕らがやれなかったことをやっている。例えば、1984年のターミネーターとしての僕を完全に作り上げるとかね。1作目の『ターミネーター』から僕のイメージを取り出して合成すればよさそうに思えるかもしれないけど、そういうわけにはいかない。権利の問題があるし、映像の質感も変わってしまうんだ。でもこの映画のスタッフは、作品全体の雰囲気を、まるで1984年に撮影したように再現した。フレームごとに調整をしなくてはいけないから、そういった視覚効果の処理というのはとても難しいものなんだ。
Q:若いころのあなたと現在のあなたの直接対決は素晴らしい出来映えでした。
あのシーンを実現させるため、僕の方でもかなりたくさんの仕事をしないといけなかった。クローズアップ撮影した僕の表情をもとに映像を作るのだけど、150もの表情が入った本を持った人がやって来て、それを全部まねしないといけなかったんだ! こういったこと(表情をいくつか作ってみせながら)を100ぐらいのカメラを前に何日間もやった。正直、退屈な仕事だったけど、明確なビジョンを持てば、結局は夢中になって乗り切れるものだよ。だから僕はいつも人々に言うんだ。大事なのは、最終的な仕上がりを意識することだってね。
肉体の衰えはなし!
Q:共演した若手キャストはいかがでしたか?
彼らはみんな、実に素晴らしい役者たちだった。サラ・コナーを演じたエミリア・クラークは、自分を鍛え抜いてこの役に挑んだ。カイル・リース役のジェイ・コートニーも、体の至る所に筋肉が盛り上がっていて、血管が浮き上がっていたよ。ジョン・コナーを演じたジェイソン・クラークは、劇中で見事な演説を披露している。観客を笑わせないように「世界を救うんだ」みたいなセリフを言うのはとても難しいんだ。でも彼はそれを見事にこなした。ジョン・コナーの持つリーダーとしての資質が伝わってくるよ。ワーオって感じだった。
Q:あなたご自身もまだお若いとはいえ、肉体的な面についてご苦労はありませんでしたか?
幸運だったのは、僕がずっとトレーニングをしていたことだ。スキーに行くと、今でも若いときと同じように(斜面を)登ったり降りたりを繰り返して、4~5時間は滑っている。スタントも同じようにこなせる。撮影中、午後4時を過ぎて、「ねえみんな、僕は67歳だ。オッケー、この辺で止めることにしよう」と言う必要は感じないよ。幸運にも僕には持久力があるから全力でやれるんだ。20歳のときに比べてケガはしやすいから気を付けなくてはいけないけど、普段から体を鍛えていれば、とてもうまくいくんだ。
映画への情熱は変わらない!
Q:あなたの息子さん(パトリック)も役者ですね?
僕の息子が役者なのは素晴らしいと思う。だが正直に言うと、彼が何をしているかは、全く気にしていない。なぜなら、僕は子供たちにずっと言ってきたからだ。「自分がやっていることに情熱を感じている限り、役者やシェフ、政治家、弁護士だろうが、そこには何の違いもない」ってね。大事なのは情熱を感じられること。そうすれば物事がうまくいくんだ。僕はそういったことをいつも自分の子供たちに教えてきたよ。
Q:あなた自身の演技への情熱は長年の間に変わりましたか?
いいや。でも役者を休業して、政治家としてのキャリアを歩んだことはとてもよかった。素晴らしい休みになったしね。その期間、映画を作らずかなりのお金を失ったといわれても、一瞬たりとも後悔することはないよ。
Q:それでも、州知事の仕事を懐かしく思ったりしませんか?
時々そういうことはあるよ。政治の世界において、自分がとても情熱を感じていることについて決断が下されるとき、自分がそこにいられたらよかったのにと思うんだ。でも幸運なことに僕は、仕事のない元政治家というわけじゃない。普通は現役を退くと、いくつか講演なんかをしてそれでおしまいといったことになる。でも僕はそういう状態にはいない。今は映画に戻っていて、僕は映画をやるのが大好きだ。だから、とても幸運だと思っているよ。
『ターミネーター:新起動/ジェニシス』には、T-800による新たな名言「古いが、スクラップではない」という意味のセリフがある。しかし、67歳にして余裕の笑みを浮かべながら新作について語るシュワルツェネッガーの姿は、古いどころか現役そのもの。ファン待望の新作で、若いころ同様にスクリーンで暴れ回る彼の姿を捉えた本作は、やはりターミネーターを演じられるのはシュワルツェネッガーしかいない、と思わせる一本に仕上がっている。
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映画『ターミネーター:新起動/ジェニシス』は全国公開中